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教会で待ってる
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その日の朝は、いつもとは少し違った。
入院してからずっと着ていた青いガウンから、外を歩いていても不審がられないように用意された服装に着替える。
一人では着替えるのに手間取るので、ヘスティアが手伝ってくれる。
「カモフラージュの為に、このウィッグを被ってね」
「はい」
よそ行きのお嬢さんが着るような、クラシカルなジャケットと、ゴーフルの身体にピッタリ合わせたスカート、ブーツ、小物まで用意されていた。
「スカートは違和感ないわね」
「そ、そうですか」
自分自身でも、あまり抵抗がなくなっていたが、改めて口にすると恥ずかしい。
「おむつだとフリルが広がっちゃうから、今だけトレーニングパンツを履いてね。少しくらいのおチビリなら吸収できると思うから」
「うん、はい」
「早く卒業したいんでしょ、アーシャちゃんは」
「頑張ります」
あまり自信がないのか小声になる。
「急ぎましょう、ナース服の私が外を歩くわけにはいかないから、ここでお別れね」
誰が味方で誰が敵なのか分からない状態でヘスティアの言葉を信じるなら、病院のロビーで仲間が待っているという。
「協力者のダーウィン一家が迎えに来るまで、できるだけ目立たないようにね 」
「え、えーと」
「大丈夫、あなたのそのポーチが目印になっているから」
以前背負っていた、発信機付きのリュックによく似た、クマのポーチだ。
「お母さんは?と聞かれるから教会に行きましたと答えるの」
「教会に行きました」
「合言葉は、教会よ」
「わかりました」
「作戦決行なら、そのままダーウィン一家と一緒に病院を出ればいいわ。もし、不測の事態がおきたなら合言葉は言わず、わかりませんとか首をふる」
「そ、その時はどうするんですか」
「大丈夫よ、そんなことにはならなないから。いくらマノンの管理下に置かれているとはいえ、ここは普通の病院なの。手荒な真似はできないし、使える手下も少ないわ」
ヘスティアの言葉は自信に溢れていた。
「ヘスティアさん、ありがとうございました」
「また会いましょう、お嬢さん」
エレベーターで挨拶を交わし、ロビーまで自力で歩く。
ずっとベッドにいたので、足腰が弱っている。
不自然に見えないか不安になるが、ゆっくりと定位置の待合室のベンチに向かう。
思ったよりも人が沢山いて、これなら紛れ込めばすぐには発見できないだろう。
交代の看護師も1時間は病室に来ない。
ダーウィン一家がどんな人で、どんな格好をしているのかは分からない。
行き交う人達は、老若男女さまざまでゴーフルくらいの年齢の患者や見舞客も多い。
「あら、あなた一人?お母さんは?」
そう、声をかけてきたのは10歳くらいの子供を連れた若い母親だった。
「は、はい」
少しぼんやりしていので、返事に戸惑う。
「どうしたの?大丈夫?」
「だ、大丈夫です。お母さんは教会に行っています」
「そうなの? じゃあ私達と一緒ね」
「はぁ」
「アイリス、パパを呼んできて」
「はーい」
少女はパタパタと歩いていく。
「心配しないで、私達も教会に行くつもりだったの、お母さんの所に行きましょうね」
母親の話し方は演技とは思えない。
「はい」
それから立ち上がり手を繋いだ。
心臓の音が高まる。
緊張から尿意も高まってくる。
入院してからずっと着ていた青いガウンから、外を歩いていても不審がられないように用意された服装に着替える。
一人では着替えるのに手間取るので、ヘスティアが手伝ってくれる。
「カモフラージュの為に、このウィッグを被ってね」
「はい」
よそ行きのお嬢さんが着るような、クラシカルなジャケットと、ゴーフルの身体にピッタリ合わせたスカート、ブーツ、小物まで用意されていた。
「スカートは違和感ないわね」
「そ、そうですか」
自分自身でも、あまり抵抗がなくなっていたが、改めて口にすると恥ずかしい。
「おむつだとフリルが広がっちゃうから、今だけトレーニングパンツを履いてね。少しくらいのおチビリなら吸収できると思うから」
「うん、はい」
「早く卒業したいんでしょ、アーシャちゃんは」
「頑張ります」
あまり自信がないのか小声になる。
「急ぎましょう、ナース服の私が外を歩くわけにはいかないから、ここでお別れね」
誰が味方で誰が敵なのか分からない状態でヘスティアの言葉を信じるなら、病院のロビーで仲間が待っているという。
「協力者のダーウィン一家が迎えに来るまで、できるだけ目立たないようにね 」
「え、えーと」
「大丈夫、あなたのそのポーチが目印になっているから」
以前背負っていた、発信機付きのリュックによく似た、クマのポーチだ。
「お母さんは?と聞かれるから教会に行きましたと答えるの」
「教会に行きました」
「合言葉は、教会よ」
「わかりました」
「作戦決行なら、そのままダーウィン一家と一緒に病院を出ればいいわ。もし、不測の事態がおきたなら合言葉は言わず、わかりませんとか首をふる」
「そ、その時はどうするんですか」
「大丈夫よ、そんなことにはならなないから。いくらマノンの管理下に置かれているとはいえ、ここは普通の病院なの。手荒な真似はできないし、使える手下も少ないわ」
ヘスティアの言葉は自信に溢れていた。
「ヘスティアさん、ありがとうございました」
「また会いましょう、お嬢さん」
エレベーターで挨拶を交わし、ロビーまで自力で歩く。
ずっとベッドにいたので、足腰が弱っている。
不自然に見えないか不安になるが、ゆっくりと定位置の待合室のベンチに向かう。
思ったよりも人が沢山いて、これなら紛れ込めばすぐには発見できないだろう。
交代の看護師も1時間は病室に来ない。
ダーウィン一家がどんな人で、どんな格好をしているのかは分からない。
行き交う人達は、老若男女さまざまでゴーフルくらいの年齢の患者や見舞客も多い。
「あら、あなた一人?お母さんは?」
そう、声をかけてきたのは10歳くらいの子供を連れた若い母親だった。
「は、はい」
少しぼんやりしていので、返事に戸惑う。
「どうしたの?大丈夫?」
「だ、大丈夫です。お母さんは教会に行っています」
「そうなの? じゃあ私達と一緒ね」
「はぁ」
「アイリス、パパを呼んできて」
「はーい」
少女はパタパタと歩いていく。
「心配しないで、私達も教会に行くつもりだったの、お母さんの所に行きましょうね」
母親の話し方は演技とは思えない。
「はい」
それから立ち上がり手を繋いだ。
心臓の音が高まる。
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