クロノスの子供達

絃屋さん  

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風のない朝

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 いつもと変わらぬ朝、ゴーフルはブラックコーヒーを飲みながら新聞に目を通していた。
 朝食のパンはすっかり冷めてしまっていたが、それもいつもの事だった。
「お兄ちゃん、早くしないと遅刻するよ」
「ああ、そうだな」
 妹のマリッサは、あわただしく朝の準備をしていた。
 ゴーフルは23歳、マリッサは16歳と歳が離れている。
 そのせいか、マリッサの事を世話のかかる子供と思っているふしがある。
 「お前こそ、急がないと間に合わないじゃないか? 」
 「私は十分急いでますけど」
「ほら、リボンが曲がってるぞ。髪も跳ねてる」
「うるさいなぁ、お兄ちゃんは一言多いからキライ」
 マリッサは、不機嫌そうに玄関に向かっていく。
「さて、俺も支度するか」
 パンをコーヒーで流し込み、管理局の制服に着替える。
 バッグに書類と新聞を詰めて、玄関から外に出た。
職場までは、車で10分とかからない。
そのまま、職員用のセキリティーゲートをくぐり抜け地下の駐車スペースに停車する。
「おはよう。アルフレッド!」
「ああ、今日もスーツが決まってるなゴーフル!」
 同僚のアルフレッドも、ほぼ同じ時間に出社してきた。
 短髪で整えられた髪に、、薄いフレームの眼鏡をいつもかけている。
 アルフレッドは、今年で31歳になるはずだが童顔の為にまだ20代前半に見られる事が多い。
 同じ時期に入社したので、二人は先輩後輩の関係というよりは同期の仲間という関係にある。
 年上面をしない、アルフレッドの事をゴーフルは気に入っていた。
「そう言えば、レイリンとのデートは上手くいったのかゴーフル?」
「いや、結局3時間ほど彼女の恋愛相談に乗るはめになったよ、」
「御愁傷様」
 2人が、世間話をしながら向かう先は時空間制御室と呼ばれる部屋だった。
 彼らの仕事は、限定的な時間の操作で植物や家畜の育成を早めたり、歴史建造物の復元の為に時間を戻したりする事だった。
 この操作の範囲は、ラボのごく一部の区画にのみ有効となっており、悪用される事がないよう厳重に管理されている。
 制御室内で、2人の職員が何やら話をしている。
「最近、フラットパネルの調子が悪いみたい」
 調整官の女性が言う。
「そろそろ、ガタがきてるのかも 」
側にいた調整官が答える。
 アルフレッドとゴーフルが、制御室に入ってくる。
「おはよう、シラー」
「あ、おはようゴーフル、アル」
「サトウも、今日は早いな」
「もう遅刻はないですよ、さすがに懲りました」
「さて、今日の作業内容だが……」
 本日の業務について、打ち合わせが開始された。
 
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