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進路
しおりを挟む「貴方『洗浄』魔法を使えたわね、かけてあげた方がいいと思うんだけど」
「そうだね、ちょっと可哀そうだし」
それに臭いし
白目を剥いて倒れている女兵士に『洗浄』を掛けてあげるため、彼女の体に触れ━━
ガッ!
ソルセリーに思いっきり腕を掴まれた
「貴方どこを触ろうとしたの?」
「肩ですけど‥‥」
「本当に肩でしょうね?」
「ええ‥‥」
「ならいいわ」
この人何でこんなに突っかかってくるの?
女兵士の肩に触れ『洗浄』を掛けてあげる、薄茶色だった彼女の色が元通りになり、股間はもちろんの事、体全体がキレイになった。
次は‥‥
「じゃあソルセリー、あとはよろしくお願いします」
「は?」
眉間にシワを寄せられ、ヤンキーみたいな声を出された
「彼女のことだよ、先に進みたいし、おぶって行って欲しいんだけど」
「何故私がおぶらなければならないの?、男であるあなたがするべきなんじゃないのかしら」
キッ! とこちらを睨みつける、やっぱりおっかないわこの人
「そうか、女同士の方がいいと思ったんだけど‥‥、分かった! 胸の感触を背中に味わいながら俺がおぶって行くよ、手が滑って彼女の陰部を触ってしまうかもしれないけど」
滑るように女兵士の元に近づくが
「ま! 待ちなさい! ベルフ、ベルフ貴方がやりなさい、彼は駄目だわ!」
「えぇ~俺かよ‥‥」
「ベルフしかいないんだからしょうがないでしょ!」
「はぁ~、胸当てが付いているんだから感触も何も‥‥」
とため息をつくベルフに
「いいわね、あまりべたべたと触らないように」
いちいち注文を付けてくるソルセリー、この女兵士はソルセリーを殺すために来たというのに‥‥
女兵士に二人が気を取られている隙を狙い、竜翼機の乗組員の元に近づき『洗浄』を掛けてあげる、彼の方もキレイになった。
「助かる‥‥」小声でお礼を言ってくるが、そこは武士の情け、俺も見なかったことにする。
小さく頷き、ベルフ達の後を追った
・・・・・
・・・・・
「いつの間にかキレイになってる」
「色々と汚れていたからね、彼が『洗浄』を掛けたのよ」
彼女は自分が漏らした事を知らない、世の中知らない方がいいこともある
暗くなったので今日はここまで、とのことで野営をすることになった、乗組員の名前はオットと言っていた、そのオットを休ませるため、そしてほとんど寝てもいない俺達も体を休めるためにも必要であった
「それで貴方は‥‥」
「ハヤトで結構」
「ふっ、そうか、ハヤトは追撃は無いと考えているんだな?」
オットに楽な姿勢をさせ休ませ、女兵士はソルセリーに監視させている、少し離れた場所で俺とベルフは今後のことについて話し合っていた、野営のための拠点は女兵士を見張る為と、夜襲を掛けられた時、個室まで作って休むと対処が遅れるので周りを土で作った壁で囲っただけにしてある。
とは言ってもこの壁は魔物避けだけの為の物だ、兵士が相手だと魔法で爆発してしまうためである、それでも数発は耐えられるようにするため、壁には『耐壁』を付与してある。
移動の時、女兵士との会話で、どうやら敵拠点にはかなりの数の兵が存在するらしい、ということが分かった
「今日は無いと思う、さっきから召喚獣を飛ばして『探知』をしているけど、一切の反応が無い、もちろん低空で飛んでいるとはいえ多少の穴はある、でもこれだけ反応が無いということは、敵は今現在近くにはいないはずだ」
「なるほど‥‥、しかし明日は分からないと?」
「明日以降はあるだろう、待ち伏せの可能性もあるけれど」
「ふむ、待ち伏せだろうな、ソルセリーが言った様子見のためにあの彼女達、分隊二つを出して来たのだったら、待ち伏せをしている敵の数ってのは相当な物だろうな、もしそうだとしたら‥‥ハヤト、君は勝算はあるか?」
「無い、威圧があった時なら何とかなっただろうけど」
二人とも無言になる、太陽が沈むのが分かる位、急激に光が失われ闇に飲まれていく、すでに薄暗くなっており、他の3人がいる場所を見ると、黒い影が動いているようにしか見えなくなるほど視界が悪くなっていた。
「最悪‥‥彼女を盾にして突破するしか」
胸の辺りが、一番大きい黒い影を視界に収め
「グースの威圧を確認するために捨て駒にするくらいだ、その盾がどれだけの効果があるかはわからないぞ、構わず攻撃される可能性の方が大きいしな、しかし、それも考えなければいけないか」
影の一つがオットのいる場所に近づき、そこで光を放った
「え? あ、ありがとう」
「私『癒し』が使えますから、痛みはどうですか?」
「今ので大分楽になった、感謝する」
女兵士はオットに向けて回復魔法を使ってくれた、オットの怪我は俺たちに取ってかなりの足枷になっていて、実は何度もオットを置いて行こうか? という考えが頭をよぎっていた。
優先順位が、ソルセリーを無事に本国へ帰還させることだったので、もしもの場合ベルフですら俺は切り捨てる考えでいた。
「‥‥盾は無しだな、意味はなさそうだ」
「そうだな、選択肢が一つ無くなってしまったな、さてこの後はどうする?」
今の俺はどんな顔をしていたのだろうか? 俺の顔をみたベルフは少し笑っていた、地図を広げ、周りに光が漏れないように『照明』で照らし今後の進路に頭を悩ませる
・・・・・
・・・・・
夕食時
保存食用のパナンに専用のシロップを掛け、周りで監視しているノーム達の視線がシロップの瓶に集中している中、腹を満たすだけの食事をする、辺りは既に真っ暗になっており、申し訳程度の『照明』を使い何とか相手の顔が見える位には明るくしている。
色々考えながらパナンを食べていると、不意に視線を感じそちらを見ると女兵士と視線が合った
「ヒッ!」
ズザザーと後方にさがり
「な、何ですか? 狙ってるんですか? 私はもう貴方の事なんか怖くないですから! 私はこれでもグースを討伐した200人の勇者の子孫なんですからね!」
知らないよそんなこと、目が合っただけでそこまで警戒すること無いだろうに
「君もか? 俺もそうなんだ家名はラーベだが、君の名は聞いてなかったな、何というか教えてくれないか?」
「私はシルベ、トルリ・シルベです」
「シルベか、200人の勇者の子孫でも一番多い家名だな」
佐藤、鈴木‥‥‥‥ふわっと頭の中に浮かんだ
由緒ある家名を持つ人は、自身の名前よりも家名で呼ばれることを望む人たちがいる、サコナ・ソルセリーがいい例で、そういった人たちは名前で呼ばれると拗ねる傾向がある、家の名誉とか伝統とか色々あるのだろう、ソルセリーをサコナと名前で呼んだら、多分目ん玉ひんむいて怒鳴ってくるだろう、
「名誉あるソルセリー家の‥‥」なんやらかんやらと、カナル隊のオリバーとブライも由緒ある家だったらしいけど、彼らは気にはしていなかったようだ。
ベルフとトルリ・シルベが勇者の子孫という共通点があることで、話がはずんでいる
「なら、ベルフじゃなくてラーベって呼んだ方が良かったのか?」
「いや、ベルフでいいぞ、勇者の子孫だが今ではあまり強調する人はいないからな」
「私もそうですよ、シルベってこだわる人はもういないと思います」
トルリ・シルベはベルフを見てにこやかに話しをするが、絶対に俺の方を見ようとはしない
「そうなんだ、名前を呼んで拗ねられたら困るなーと思ったんだけど、ならいいか」
「私がまるで拗ねるような言い方じゃないの」小声でソルセリーが言っているけど、目を向けないでおく。
「勇者の子孫ですからね別に貴方の事を怖くないし、私がちょっと本気を出しただけでグースなんかいちころですからね、だから変な気を起こさないで下さい」
シュッシュッ! とシャドウボクシングの様にこぶしを突き出してくるが、勇ましい割にはベルフの陰に隠れている
「へー、その勇者の子孫が泥まみれになって、それで、落とし穴に落ちたことも気付かれず置いて行かれた君が勇者の子孫だったのか~、なるほどな~」
「うっ‥‥」
痛いところを突かれたトルリは苦い顔をする、それを尻目に俺はトロン茶をすすっていた
この日の野営では結局、奇襲などの攻撃は無かった
・・・・・
・・・・・
時間は真夜中
こっそりと起きだしノームを一時的に戻す、野営場所の一番はずれに防音のための壁を作り、そこでデュラ子を呼び出す。
呼び出されたデュラ子は鎧姿、脇に抱えられた顔は緊張した表情をしている
「デュラ子‥‥」
名を呼ぶとピクリと反応する
「はぃ‥‥その、主‥‥先ほどは申し‥‥」
「すまなかった!」
おれはデュラ子に深々と頭を下げた
「は? え? あ 主?」
「せっかくのお前の晴れ舞台だったのに、気づかなかった俺を許してくれ」
オロオロ困惑するデュラ子、俺は憤っていた、自分を許せない
あの時召喚されたデュラ子は、買ってあげた服を着ていた、丈の短いスカートで、その裾が風でめくれ上がり白の布地がチラチラと見えていた、それは凄く刺激的で2度見したくらい、出来ればずっと見ていたかったほど‥‥
ただ、ひとつだけ残念なことに、デュラ子は金属のブーツを履いていた。
服や下着は買ってあげたけど、靴まで気が回らなかった、俺はデュラ子に恥をかかせてしまった。
姉の洋子は靴を大量に持っていた、兄さんの彼女も靴を多く持っていたと聞いている、なら女性に取って靴は大事なおしゃれアイテムのはず
俺が謝った理由をデュラ子に話すと、脇に抱えてある首から、滝のように大量の涙を流しつつ、むせ返る様に泣いていた
「主はそこまで私の事を‥‥ここまで大事にされている召喚獣は、私以外にはいないでしょう」
「俺の召喚獣はどれも大事だが、その中にはもちろんお前も入っているからな、それに世界4大美女があったら、お前はその内の一人、セクシー担当だからな大事にして当たり前だ」
「主よ!」
デュラ子が抱きついてきて、二人抱き合い
ガン!
と鎧同士がぶつかる、ひとしきり抱擁したあと、デュラ子の肩に手を当て体を離し、脇に抱えられたデュラ子の顔を見る。
「サーナタルエに戻ったら靴を買いに行こう、化粧品もあった方がいいかもな、ハン子の『収納』に収めているタンスも少し改造しようか?」
「はい!」
とてもキレイな笑い顔のデュラ子の頬には、涙が枯れることなく流れていた、その愛らしい顔に、こんな場所でなければ間違いなく一線を越えていただろう
危ない危ない、なんとか自重することが出来た。
・・・・・
・・・・・
朝、トルリはオットに魔法をかけてあげていた、そんな二人を尻目に
「ソルセリ―、拘束具のカギを貰えない?」
「? いいけど」
受け取ったカギを、『氷』魔法でルービックキューブほどの大きさの形を作り、カギをその中に閉じ込めた、それをトルリに渡す
「はい、これ」
「え? な、何です?」
「君をここで解放するからコレを渡しておく、叩き壊してカギを取り出してもいいけれど、その場合カギが歪むことがあるからね」
「え? え?」
野営した場所の壁を更に一段高く積み上げ、そこに新しく『硬化』を付与する、この辺りの魔物は弱いのでこのくらいで何とかなる、氷が解ける間にここにとどまっていれば、魔物に襲われることも無いだろう。
「今度会ったら、マシェルモビアの観光案内でもしてよ、じゃあ元気でね」
「え? あ、あの!」
壁の南側の一部を、一時的に小さく解除し、野営地にした場所を出て行った。
・・・・・
・・・・・
「良かったの? あの子を解放して」
「うん、あの子がいると敵兵に遭遇した時不利になる」
「捕虜を取りながらの戦闘は難しいという事ね、それで? ここからどう進むの? やっぱり指令書に通りの進路?」
首を左右に振る
「朝早くに召喚獣を使った『探知』をしたんだけど、そこにはもういたよ、すでに待ち伏せされている」
「‥‥‥‥」
「本当に偶然だったよ、魔物の反応が急に減って行くからね、何かと思って現場に行ってみたら、ゴブリンが何かに切られている最中だったんだよ、姿は見えなかった、『潜伏・隠蔽』を使っていいるんだろうね、こっちは解除魔法の圏外だったから彼らの『潜伏・隠蔽』は解除していない、だからこっちが『探知』をしていたことは、ばれてはいないだろう」
「なら、このまま行っても」
「やられるだけだね」
皆の足取りが重くなる
「だったら迂回して━━」
「それはもう抑えられているだろう、こっちにはソルセリーという大きい餌があるんだからな、逃がすはずはない」
保存食を食べながらベルフがソルセリーの話を遮る
「だ、だったらどうするの? 私たちは救助される側、今の指揮権は貴方にあるけれど」
「大陸深部に向かう」
「深部ですって!」
いきなり掴みかかられ体を揺らされる
「あそこはグラースオルグが通った場所なのよ! 今でも桁外れの強さの魔物が生み出されている所なのよ! そこを通るなんて、死にに行くようなものよ!」
「既に周りを囲まれている様なものだし、どちらに向かっても同じことだろう? だったら可能性のある方に掛けるよ」
「くっ!」
ソルセリーも実際は分かっているんだろう、どちらに進んでも危険だと、だから押し黙った。
それと、これはベルフにしか言っていないが、北側、つまり後方に敵兵の気配があった。これは朝の召喚獣を使った『探知』で分かった事、召喚獣のポッポから見えた光景には、潰れた草が映った。しかもそこそこの範囲で‥‥‥‥
『潜伏・隠蔽』で姿は消す事が出来ても、踏みつぶされた草までは隠す事が出来ない、自分達が通ってきた場所だから分かる、あそこは足の脛辺りまで草が生い茂っていた。
逃げる形跡をなるべく抑える為、あまり草を倒さないよう回避してきたのに‥‥‥‥
つまり後ろには既にマシェルモビアの兵がいるという事、トルリ・シルベを残しこっそりと出て行ったのも、まだ自分達がそこにいると思わせる為。
要するに、俺達は既に周りを囲まれ、そして‥‥‥‥時間が無い
「‥‥それで? 進路はどう取るの?」
「北と東、そして南は既に囲まれていると思う、西側は大陸深部につながるから、マシェルモビアもまさかそのルートを通るとは思わないだろう。
だから進路は西に、大陸東部から大陸中央に向かうよう大きく迂回する、その時通る場所は大陸深部、指令書に書いてある部隊とは合流しない、追手を振り切り、自力でハルツール中央まで帰還する」
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