異世界陸軍活動記

ニボシサービス

文字の大きさ
55 / 260

大陸深部 ①

しおりを挟む

 底なし沼のように足が取られ、思うように動くことすら出来ない、自分の思い道りに動けない事と、どこから出てくるのか分からないこの状況がさらに恐怖を増す。
 緊張からか額には汗が噴き出しており、その汗が地面に落ち、音が出ないか不安になる

 この状況で音を出すことは死を意味する、誰も動けず時間だけが過ぎていく、足元には人間一人を丸呑みできるほどの魔物がうごめく。
 地中をうごめくその魔物は音を聞きつけ、地面の中から一気に上昇し土ごと獲物を食らう、魔物の口にはのこぎりのような鋭利な歯が付いており、軽く触れただけでも肉が切れるほど鋭利なしろもの

 ズルリ‥‥ズルリ

 地中の中を進む魔物の振動が4人の足の裏に伝わる




 ◇◆◇◆◇


「深部に来たことってある? 俺初めて来たんだけど」

「私も初めてですね、空からチラリと覗けることがあっても、自分の足で歩くのは初の試みですよ」

 俄然やる気のある竜翼機の乗組員オット。

「最初は陸戦部隊に入りたくて軍に入ったんですがね、必要な魔法の数が足りなくて仕方なく竜翼機に乗ってるんですよ」
 肩の傷がかなり良くなったみたいで、言葉の数が多くなってきた、そもそも骨、血管などに異常はなく破片が深く刺さっただけで済んだみたいで、回復はかなり早かった。

 マシェルモビアに待ち伏せ、尚且つ進路を塞がれ仕方なしに大陸西へと進んだ。
 大きく迂回し、大陸東部から深部を通り、大陸中央からハルツールに帰還する予定だが、大陸深部と呼ばれる場所には遠い昔、グラースオルグが通ったと言われる場所になる。

 グラースオルグと名の付いた都市で誕生し、以降、その誕生した場所の名をそのまま取り、グラースオルグと呼ばれたソレは、大陸西から大陸を東に分断するように横断した。
 グラースオルグが通過した場所からは、人が入ることが出来ないほどの危険な魔物が常に生れ落ち、そこで魔物同士、生存を掛けた争いをしている。

 あまりにも過酷で危険なその場所は大陸深部と言われ、人が立ち入ることを今まで拒否してきた。

「陸から深部に入ることは最近ではなくなりましたからね、調査だって今ではやってないはず」

 目の前に見える景色は、木が殆ど無く、地面は耕された畑のように柔らかい、所々穴が開いておりまるでモグラでに穴を掘られたようになっている、あまりにも柔らかい地面に足を取られ、思うように進むことが出来ないでいる。

「深部東側から深部中央辺りまでは、虫の様な魔物が多いらしいですよ、甲殻を持った魔物とか、あとは‥‥たしかワームですねここら一体の主らしいです」

 ワームって何だったっけな? ワムゥなら知ってるけどねあの石化の人の
 ‥‥‥ワームって何だったけな? 学校では習った気が‥名前は聞き覚えがあるけれど‥‥

 陸で働くことを希望していた竜翼機の乗組員オットは、仮とはいえその夢をかなえた状況におり、かなりの興奮状態にある。

 俺としては、いくら強い魔物と言っても魔物は魔物、違いは特にない、生来の楽天的な性格もあり普段と変わらない。

 しかし後の二人、ベルフとソルセリーの怯え具合は尋常ではなく、常に自分の武器を手に持ち、せわしなく視界を確認し辺りに注意を払っている

「オットは詳しいんだね」

「いまだに陸への憧れがあって、時間があると資料なんかを読みふけってますよ、それで頭の中で、この魔物と出会った場合どう対処するかを妄想するのが楽しくて」

 戦力で劣るオットには、俺が万が一のために持っていた銃を手渡していた『収納』が使える彼に俺が持っている弾を全部預けている、たまに渡した銃を構えたりして嬉しそうにしている、それと、先のマシェルモビアとの戦いで結局使わなかった、『重力』を付与した魔石も渡す。

 ふと、目の前に緑色の物体が横たわっているのが見えた、その物体の表面は太陽の光でキラキラと光っている

「あれなんだろうね?」

「あの色は多分カマルドウマですね、顎と後ろ足が異様に発達した魔物ですよ、その体の一部みたいです」

 近寄って見ると1メートル程の体のパーツだった

「これは後ろ足ですね」
 オットがそう言った物体は、確かに足の形をしているように見えるが、その足の太さは俺の胴回りと同じくらいの太さがあった。
「足を広げると全長3メートル位になるそうです」

 詳しいな、昆虫博士みたい

「ん? 光ってると思ったら濡れているな、体液かな?」

「それはスライムですね、獲物の表面に張り付いてゆっくりと溶かし消化するそうです」

「へー‥‥これがスライム」
 ただ濡れているようにしか見えないが、よーく見てみるとわずかに上下し動いている

「‥‥貴方たちよくそんなに落ち着いてられるわね」
 戦闘能力がほぼ無いソルセリーは、俺が渡したロケットランチャー、正確には小型魔石砲を抱え、誰が見ても怯えている様子でいる。

「大陸深部と言っても、普通より強い魔物が出てくるだけだろう? なら、それなりの考えを最初から持っていれば、ゴブリンなんかと大差ないよ」

「‥‥全く分からないわ」
 そう言ったあと、俯き顔をしかめた後

「‥‥‥‥‥‥よーく考えてみたけど、やっぱり全く分からないわ」
 もう一回言った

「言った俺もよく分からないけど、同じ魔物だろ? 何とかなると思うよ」

「貴方は‥‥‥‥ハァ‥‥」
 呆れたと言わんばかりのため息を吐き、左手で頭を押さえるような仕草をされた、正直コンセの村で変種の魔物と戦った俺としては、いくら深部の魔物が強いからと言って大して怖くはない

「おい! 出たぞ!」
 先頭を歩いているベルフが俺達に呼びかける

 びょ~ん びょ~んと大きくジャンプしながらコチラに迫る物がいる

 ん━━━ バッタだな!

「あれがカマルドウマです、外皮は硬い物で覆われていて、刀が簡単に通らない位強固です、魔法にも耐性がありますから気をつけて下さい!」
 
 先ほどスライムに溶かされていた物と、同じ足を持った魔物がコチラに向かってくる、あの太い足から繰り出される蹴りで、軽く4メートル位はジャンプしているだろうか?

「ハヤト、ソルセリーとオットは任せたぞ、ただ余裕があったら援護を頼む!」
 刀を構え攻撃の姿勢を取るベルフ

「分かった」
 ‥‥確かにバッタは硬い、特に頭から羽を守る為にある殻の様な物、足なんかも硬かった気がするが腹は結構柔らかかったはず、地球にあるバッタとは違うだろうけど、バッタはバッタ、腹さえ狙えれば‥‥

 氷の槍を作り出す、先は鋭くどんなものでも貫けるように細く細く‥‥
 先端が針と同じくらい細く、長さが3メートルの槍の形に整え

 行け‥‥

 それを打ち出した

 ヒュン

 ベルフの横を通り過ぎ目標に迫るが、カマルドウマは丁度ジャンプをするタイミングだったのでそれを難なく躱す‥‥はずだったが
 ベルフから教えてもらった方法で氷の槍の軌道を変える
 
 大気に霧散している魔力に働きかけ、槍の上を通過しようとしていたカマルドウマの真下でピタリと止める、クルリと90度回転させ、通過しようとしていたカマルドウマの腹めがけて打ち込んだ

 ブスッ!

 勢いよく刺さると、カマルドウマはそのまま体制が崩れ半回転する、そのまま氷の槍に働きかけ地面に突き刺す、仰向けになったカマルドウマはまるで昆虫標本のように仰向けに縫い付けられる、暴れるソレに更に2本の氷の槍を作り出し、腹から体内に入り込む角度で打ち出す

 放たれた氷の槍は腹に吸い込まれるように入り込み、そしてカマルドウマは動きを止めた。

「「「・・・・・・」」」

 前に立っていたベルフが真顔でこちらを振り返る

「‥‥え? 何?」

「いや‥‥随分とあっさりと思ってな‥‥」

「多分腹の部分が柔らかいはずだからさ、そこを狙ったんだよ、ベルフから教えてもらった軌道を変える方法かなり使えるね、教えてもらってなかったらもうちょっと面倒だったと思う」
 
 そう、アレがあったから簡単にやれた、無かったら場所を移動したり、ベルフに当てないように苦労したと思う

「いくら曲げても直角には曲がらないんだけどな‥‥」

 倒した魔物を観察するために近づく

「お、おい危ないぞ、まだ死んだとは‥‥」

「大丈夫、もう『探知』に反応が無いよ」

「そうか‥‥」

 倒したカマルドウマの両目からは氷の槍が突き出していた

「やりますねぇ、凄い命中率じゃないですか」

「おっ! でしょ!」
 オットに褒められ嬉しくなるが、実際はたまたま刺さっただけである、『土』魔法で作った棒に『硬化』を付与し、カマルドウマの腹を突っついてみると、柔らかいという訳ではないが他の部分と比べて柔らかかった、他の部分は土で作った棒で思いっきり叩いてもびくともしない、叩いた俺の手が痺れるほどの硬さだった。

「なっ、結構どうにかなるものでしょ?」
 
「そうね、何とかなるものね」
 さっきまで恐怖で怯えていたソルセリーも、今のを見て安心したようだ、「フッ」と少し笑ったような気がしたけど、気のせいだろうか?

「この魔物は腹が弱点だったから、これからは腹を狙えばいい、他の魔物だって結局は弱点とかあるんだ、そこを狙って行けば無事にハルツールまでたどり着けるよ」

「貴方一人でもなんとか出来そうね」

「俺も必要ないようだな ははっ‥‥」

「最初に言ったでしょ? ゴブリンと大差ないって魔物は結局魔物なんだよ、心構えさえ出来てれば大丈夫だよ」


 と、言っていた時期が俺にもありました

 ・・・・・・

 ・・・・・・

「心構えさえあれば大丈夫なんじゃなかったの!!」
 ヒステリックにソルセリーが叫ぶ

「ハヤトそっちに行ったぞ!」
 噛みつこうとした魔物をべフルが切り伏せる

「うわー! うわー!」
 オットはもう発狂状態だ
 
 

「おっ! ちょ! ちょっと、あぶなっ!」

 大量のアリ型の魔物に囲まれピンチに陥っていた
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

処理中です...