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リテア・ネジェン ⑦
しおりを挟む小国がせめぎ合い、世界中で領土の争いをしていた頃、竜騎士と呼ばれた人たちがいた。
生まれたばかりの飛竜と共に時間を過ごし、心を通わせることが出来た者だけが得ることの出来る称号。
彼ら竜騎士の功績は現代でも語り継がれ、数多の物語の中で今も生き続けている。
そして現代の竜騎士と言われた男に「忠誠を誓う」とまで言われた。
これほど幸福な事など他にはそうそう無いだろう、だから私はその証が欲しくなった。言葉だけではなく、本物の証、誰もが欲しがるであろう竜騎士の忠誠
別に彼が本物の竜騎士でなくてもいい、私の側にいてくれるという確かな証が
「ならその証を見せてよ!」
身近な者達を全て失い、もう今の私には彼しかいない、彼に見捨てられたら私はどうしていいか分からない
心に余裕が無い今だからこそ、証明して欲しかった。
「‥‥‥‥えっ!? あ、証ですか?」
彼から出た言葉は意外な物だった。
すべてにおいて私を先回りし、表情をほとんど変えず、まるで人形の様だった彼は、いつも私が見てきた彼とは全く違うものだった。
「えっ‥えぇ、あ、証‥‥えっと‥‥‥‥」
本気で困った顔でうろたえている、そこまでの回答を準備していなかったかのようにオロオロし、目があちこちに泳いでいた。
色々な事が一辺に起こり頭が混乱していた私だったが、慌てふためく彼を見ていると何だか冷静になる事が出来た。
こっちの方が本来の彼なのね
もうフェルドという名前が偽名なのも分かっている、フェルドという護衛を演じるための性格が今まで見てきた性格なのだろう
ピン! という音が聞こえてきそうな顔をした彼が、私が今まで見てきたフェルドの顔に戻る、私が見せろと言った証が見つかったのだろう
「んんっ‥‥‥‥」
軽く咳ばらいをし
「私の居た世界で、別の国の作法なのですが‥」
竜騎士は異世界人
この事実はもう結構な人が周知している、実際にそんな世界が本当にあるのか? と思う人が大半だが、私は夜空にあれだけの星があるんだから、この星のように人が住める星があってもおかしくないと思っている、その別の星の作法とはどういった物だろうか?
彼は私の目の前に跪き、私の左指を優しく掴み自分の方に引き寄せ‥‥
「えっ?」
左手の甲に感じる柔らかく暖かな感触、私の左手には彼の唇が軽く当てられていた。
「これでどうでしょうか? 私の記憶だとこれは忠誠を誓う儀式の一つだったのですが」
「う‥‥‥うー‥おー‥‥‥‥」
どうでしょう? って言われても! お、男の人に、こ、こんな事!
今年で60歳になるが、男性の唇が体に触れたのは初めてだった。
赤ん坊の時に父親何かにされた事はあるかもしれない、しかし、家族以外の人からはこれが初めてとなる
よくあるキスシーンなどを見ていると「いいなぁー」とは思う事はあるが、実際この10歳の体の私に、そんな事をしてくる男性はいるはずも無いし、居たとしたらそれはまた危ない人間である、生命の契約が切れ、体が女性の体に成長するまで、ずっと先の事だと思っていたのに‥‥
私はあまりの恥ずかしさと興奮状態になり彼に対し背を向けた。私の顔は今どうなっているだろう? 他者にも分かる位顔が赤くなっているだろうか? 引きつっている? それとも笑っているだろうか?
嫌悪感は全く無く、むしろ嬉しいという気持ちの方が大きかった。
「ううううわぁたあ!」
突然の事に対する興奮状態で舌が回らない
「は?」
「分かったって言ってるのよ!」
思わず怒鳴ってしまった。こんな年下の男に動揺してしまうなんて‥‥
忠誠の儀式と彼は言っていたけど、もしかしたらその忠誠を認め、返す儀式なんかもあるかもしれない、そうした方がいいのか気になる、私も手の甲に‥‥その、するのかしら?
「んん゛っ! ねえ?」
彼に背を向けたまま話しかける
「なんでしょう?」
「その忠誠の儀式に対して、貴方の世界ではその返答の儀式なんかもあるんじゃないかしら?」
フェルドは少しだけ考え
「たしか‥‥額にキスだったでしょうか?」
額に!! な、難易度が高すぎる! 今の私ではむむむ無理!
手の甲にキスされただけで舞い上が‥‥動揺しているのに、彼の額になんて! そんな事をしたら! そんな事をしたら‥‥‥‥
「そ、そう」
出来るだけ冷静に、冷静に見えるように
「そうね」
バレないように‥‥ああ、どうしよう、聞いてしまった手前何か答えないと
「そうなのね」
言葉が出てこない!
「・・・・・」
・・・・・・・・・! そうだ!
「い、今の私の体では貴方も不満でしょう、私が成長したらその返答の儀式もしてあげるわ」
あ゛あーっ! そんなことを言ってしまったら、やらなきゃいけなくなるじゃないの!
「ではその日を楽しみにしています」
嫌な訳ではないが、そんな勇気は今の私には無い、どうか今のまま体が成長しなければそれに悩むことも無い、このまま体が成長しなければ、いやいや駄目よ! それも色々と困る、どうか、どうか時間をもっと下さい
うーっ‥‥‥‥時よ止まれ!
そんな事は実際に起きる事は無く
「えーと、この人は私の前任者だった筈ですが、彼もリテア様を狙って?」
既に息絶えているサムを見つめ聞いてくる
「いいえ、彼はここまで私を守っていてくれたのよ」
「そうですか‥‥出来れば連れて行ってあげたいのですが」
サムを囲むように土が盛り上がり
「今はこれで」
その土は棺桶の形になった
サムを弔ってくれるのね‥‥ありがとう
貴方『土』魔法も使えるのね‥‥
私が感心していると遠くから4本足の召喚獣が走ってきた。館から逃げ出すときに乗った召喚獣だった
「主よ!」
あれ? 今喋った?
近づいてくる4本足の召喚獣の上には人が乗っており‥‥いや、乗っていたのは首の無い死体だった。
「敵は全て排除してきました」
「ご苦労、戻ってくれ」
「はっ!」
上に乗っている人首無しの人間だけが、黄色の魔法陣に消えて行き、下の方の4本足の召喚獣だけが残った。
今、脇に抱えられている首が喋ったような‥‥いえ! 気のせいよ、これは気のせい、私は何も見ていない
収まって来ていた心臓の鼓動が再び動き始める、全てを見なかったことにしよう。
フェルドによると、追手は全て排除に成功したという、そのため『目』を失った襲撃者は私達を探し出すのが困難になったと、しかしまた発見される恐れがあるので急ぐことにしようと
召喚獣にまたがり、私たちはタスブランカの北の防衛都市ヒェーブスに向かう事になった。途中フェルドは通信機で誰かと通信していた。
番号を入力している音がしていたので、あらかじめ登録してある現タスブランカ代表のお爺様では無いのだろう、どんな経緯で私の護衛になったのかは知らないが、国もしくは軍が関与しているのは明らか、そのおかげで私は助かったが‥‥‥この事がバレてしまったら少し騒がしくなるかもしれない。
もしもの為に、人目の付く通りは避け、道なき道をひた走る
フェルドは休むこと無く召喚獣を走らせた。それがいけなかったのか
「お願いだから休ませて!」
という私の頼みで休ませてもらった。その間もフェルドは周囲の警戒を怠らない、私は慣れない召喚獣に乗り、股が限界に来ていた。
「私も最初の頃はそうでしたよ」
何も言っていないのに私の状態が分かっていたようだ。一応私も女性の端くれ、そう言った事は言わないで欲しい、恥ずかしい
「リテア様は何か食べる物を持っていませんか?」
「いえ、持ってないわ」
そうか、フェルドはあの日の夜から何も食べていなかったわね、よく考えたら私もだわ、サムが買って来てくれた食べ物を食べておくんだった。
あの時は食べようとする気持ちも無かったから‥‥
「そうですか」
フェルドは自身が付けている指輪を外し「パチン」とそれを分解し、中から黒い粒のような物を取り出す
「それは何?」
「パナンの種ですよ」
「どうするつもりなの?」
「パナンを食べようと思いまして」
そう言って土の中に埋めだした。
今から育てるつもりなの?
この人は少し、いや、やっぱりおかしいのかしら?
「フェルド、食物っていうのはね、そんなにすぐ育つわけでは‥‥って! パナンが育ってる!」
ど、ど、どうして!
先ほどまで何も無かった地面にパナンの実が既に育っていた。
「リテア様も食べますか?」
・・・・
・・・・
フェルドといると衣食住に不便する事は無かった。服は着替える必要なく、寝る時は家を出現させ、食べ物は瞬時に作り出す、フェルドが道端で採取した雑草を口にしていた時は、少々心配になってしまったが‥‥‥
私にも食べさせようとはしないわよね?
その後も召喚獣による移動は辛かったが、追手も付かず無事にヒューブスに到着する事が出来た。
短い時間の間に色々な事が起き過ぎて、もう何年もそうしているような心境でいた
「やっと終われるのね」
途中でヒューブスに駐留している軍が迎えに来てくれ、私の安全は完璧な物になった。
フェルドが途中で連絡を入れていたのは、これの事だったのだろう
「あれ? 護衛の奴ってお前の事だったのか」
軍人の一人がフェルドを知っているようで、話しかけていた。
「てかなんだその恰好、全然似合わないなハヤト」
「違います、人違いです」
「はあ? 何を言って━━」
「人違いです、私はフェルドと申します」
「そういう設定なのか?」
「そうです」
「以外にあっさり認めたな、まあいい、タスブランカ代表候補、ヒューブスまでは軍用車でお送りします」
召喚獣ではなく車での移動となり、私の股の負担は軽減した。
迎えに来た部隊はフェルドと仲が良いらしく、道中車内で色々と話をしていた。それでフェルドはいつもはどのような感じかを知る事が出来た。
「ハヤ‥‥フェルドとやら、お前、手が付いてないじゃないか、油断しすぎだぞ、ヒューブスに付いたらすぐに見て貰えよ、知ってたら『癒し』使える奴を連れて来たんだけどなぁ‥‥」
ヒューブスに到着し、フェルドは治療の為に軍の施設に向かったが、返ってくる時は何だかしょんぼりして帰ってきた。
何やら怒られてしまったらしい
◆◇◆
私はフェルドと、数十人のハルツールの軍人に護衛され、タスブランカに戻る事になった。
戻ったところに私の父と母に泣きながら抱きつかれ、そして私も泣いた。
館が襲撃に合ったと聞き、別の場所で教育を受けていた兄弟姉妹や従妹達の所も、すぐさま警備が強化されたという、結局は私を狙った犯行だったので、他の兄弟たちには危険はなかったのが幸いだった。
今回この犯行の主犯格ともいえる、ルマジ・ラタクー本人は否定はしているが、ハルツールが既に掴んでいる証拠や、フェルドが身に着けていた記録用の魔道具の映像を検証し、結果的にルマジ・ラタクーの罪が暴かれる事になるのは時間の問題だと聞いた。
次から次へと発覚する共犯者や協力者で、タスブランカは混乱の極みとなっている。
◆◇
外は女神の恵みの雨が降り注いでいる、「サー」っと降る雨の音は何と心地の良い事か、今の私は館ではなく、私の生まれた生家の自分の部屋にいる、このような形で戻れるとは思っていなかった。
本来なら嬉しいはずだが、今思うと館で皆と生活をしていた時の方が、楽しかったと思えるようになっている
第一、家に戻ってこれても外に出れる訳ではない、私は狙われた身なので当然なのだけど
まだ危険だという事でフェルドには護衛を続けてもらっている、もうしばらくは私の側にいてくれるそうだ。
今は私の家の空き部屋に待機してもらっている
ゴロゴロゴロ
「何かしら? 今の音は」
家の外で魔法を放っている者でもいるのだろうか? と思い、立ち上がり窓から外を見た時
ピシャァァァァァァァァァン!!!!!!!!
「きゃぁぁぁぁ!!」
雲の下から一本の光の線が降り注ぎ、轟音と凄まじい振動が家を揺らした
「何!? 今のは何なの!? フェルド! フェルド!」
フェルドをいくら呼んでも彼は来てはくれなかった。
来る来ない以前に彼はその時家にはおらず、暫くしてから少し青い顔をして戻ってきた。
次の日
タスブランカで起きたあの大きな音と光は、女神が使うという『雷』魔法だという事が分かった。その魔法が直撃したのは、あのルマジ・ラタクーの館、ルマジ・ラタクー本人は取り調べの為、館にはいなかったものの、彼の家族が館におり、ルマジの子供が2人亡くなったという
巷ではその子供2人も評判が悪いようで、今回私の件も含め
「女神からの天罰が下った」
と噂されていた。
『昨日、タスブランカ次期代表候補のリテア・ネジェン誘拐の件で取り調べを受けている、ルマジ・ラタクーの館に、大規模な『雷』魔法が直撃しました。
たまたまその館にいたルマジ・ラタクーの長男43歳と、三男40歳が魔法に直撃し死亡が確認されました』
たまたまその報道番組をフェルドと一緒に見ていた私は
「私を手にかけようとした男の家にあの魔法がが落ちたのね、きっと女神による天罰だと思うわ」
慈悲深いとされている女神にも愛想をつかされたのだろう
「フェルドもそう思うでしょう?」
「え、ええ、そう思います‥‥」
フェルドは目を泳がせ落ち着きがない
そう言えば‥‥
「フェルド、貴方は雨を降らそうとか女神の意思に逆らおうとしていたわね、貴方もこうならないように気をつける事ね」
自分が以前天気を操ろうとしていたのを、今頃になって理解したのね
「そうですね‥‥、気を付けます」
自分の子供が、女神の魔法と言われる『雷』で死亡したのが効いたのか、ルマジ・ラタクーはあっさりと罪を認めた。
息子が死亡したと聞いたルマジはがっくりと肩を落とし、自白したと言う、自身の共犯者や協力者を聞き出した後彼は、ハルツールの国の法に従って処刑されるだろう、今回の犯行に加わった者のほとんどは処刑される事になる、捜査に協力的な者のごく一部は無期懲役になるだろうが、いずれにしろその者達の人生は既に終わっている
・・・・
・・・・
ルマジ・ラタクーが自白してから1ヵ月立った
「リテア様どうかお元気で」
「ええ、フェルドも」
彼は私に頭を下げ、私から遠ざかっていく、その時一度もこちらを振り返ってはくれなかった。
新しい館に移り住み、再び代表になるための教育を受けていた私の元からフェルドが去る事になる、館はタスブランカから離れた場所ではなく、タスブランカの都市の中に用意された。
護衛も1人だけではなく15人体制で館を守り、護衛の武器防具も、より実践的な物に変えられる事となった。
フェルドが行ってしまった後、自身の部屋でぼーっと外を眺める、彼がいなくなってしまった事で寂しくもあるが、私の左手に目線を向けると何となく顔が緩んでくる
「おや? リテア様、顔がにやけてますよ」
いい気分に浸っていると横からマルロンがちゃちゃを入れてくる
「別ににやけてなんか無いわよ」
死んだと思われていたマルロン、実は彼女は生きていた。
あの日の夜、体の線がクッキリと出る露出の激しい服装でフェルドの部屋に向かい、そこで警報を聞いた、今の恰好を他の館の者達に見せたくないマルロンは、フェルドの予備の服を着て様子を伺いっていた所、侵入者に気付き一時的に身を隠していた。
そして裏庭から侵入者の声がし、侵入者が全員裏庭に出たところを他の館の者達と合流したのだ。
私が館から脱出した時、彼女は確かに侵入者に切られていたのだが、フェルドはもしもの時の為に、自身の服に衝撃を受けた時にだけ発動する、『硬化』魔法を付与していたおかげで、マルロンは助かった。
しかし、マルロンは衝撃で気を失ってしまった。
目の前のグラースオルグが出た事と、非常ベルを鳴らされ、直ぐにでも来るであろうタスブランカの防衛・治安の部隊、警察に焦りを覚え、彼女が死んだことを確認しなかったため彼女は無事だった。
彼女の他にも、重傷ながら生きていた館の者も後2人程生存した。
ただし、生きていたとなれば消されるであろう事から「死亡した」事になっていた
「リテア様はいいですねぇ、忠誠とか誓われて、私もされたかったなぁ、私の方がリテア様よりも魅力的な体をしていると思うんですけどねぇ」
私の目の前で自分の胸を持ち上げる
マルロンはフェルドと再会した後、彼に思いを告げに行った。しかしマルロンは泣きながら私の元に戻ってきた。私は何も聞かなかったが彼女の思いは届かなかったのだろう、私の胸にすがり泣いているマルロンに私が言った事は
「実はねマルロン、私フェルドに忠誠を誓われたの」
どんな経緯でそうなったのか私は全てその事を話した。もちろん手の甲にキスをされた所も全て
マルロンはどうして今その話をするのか? と信じられないような目で私を見ていたけど、理由としてはただ単に自慢したかったから、皆に話したくて仕方がなかったから
ひどい女? ええ、そう思われてもいいわ、だって自慢したいんだもん
その後、事あるごとにマルロンは私を口撃してくる、意外とマルロンは根に持つ性格らしい
「マルロンそう言っていられるのも今の内よ、あと何年かすれば、私も貴女を超えるような女性らしい体つきになるんだから」
「そうなれたらいいですねぇ」
「きっとなるわよ、それよりお茶が飲みたいわ用意して!」
「はーい」
マルロンはお茶を用意するため一旦部屋から出て行った。再び静かになった部屋でまた窓の外を見る、そして左手を目の前にかざすと顔が再び緩んでくる
「直ぐにまた会えるといいな」
フェルドが口付けした場所に私の唇を当てる
「私だけの竜騎士、フェルド」
◆◇◆
男はずっと身を潜めていた。
次期タスブランカ代表の館を襲撃した際に、目撃してしまったグースの姿を見て、男はその場から逃げてしまった。
正直あの場所から逃げたのは自分でもまずかったと思っている、逃げたことで今まで仲間だった者達からも追われる立場になったからだ。
ずっと隠れていたが、食べる物ももう無く、それにずっと潜めていた為、あの後どうなったのか今の状況も分からない、男はあの後どうなったのかを確認するために潜んでいた場所から出た。
そしてそれが男の間違いだった。
「俺は違う! 何もやってはいない!」
「そう言われても‥‥ね、昼間にそんな真っ黒な恰好していたら可笑しいでしょ? それに見たとこあるし」
丁度出た所に自分が逃げる原因となった男が、空から召喚獣に乗り降りて来た。そして降りて来るや否やいきなり両足を切断してきた。
グースの手には自分と同じ、館に忍び込んだ者が所持していた大きな大剣が握られている
「あの時逃げたでしょ? だから印象に残ったんだよね、あれだけいた中で逃げたのが2人、その内1人は館の人に切られてたし、まぁ、印象に残らなかったとしてもその服装はね」
「頼む助けてくれ! 俺は何もしていないんだ! ただあそこにいただけなんだ!」
「ふーん、なら刀を出してみ?」
男は言われた通りに『収納』から刀をだす
「ほら、これでいいだろ! 俺は歯向かう気なんかない、だから━」
「血、着いてるね、誰の血だろうかね? 正直に言ってみ? どこで使った?」
グースは手に持っている大剣を男の首筋に当てた
「ひぃ~! 言う言うから! 調理室、調理室にいた男だ! 見つかったから切ってしまったんだ!殺す気は無かった本当だ!」
「調理室‥‥」
淡々と話していたグースだったが、調理室と言う言葉で雰囲気が変わった。
「言い残す事はもう無いな」
「待って、待ってくれ、ななな何でも話す、俺が知っている事なんでも、だから助けてくれ!」
「それはもう間に合っているみたいだから、それにお前がもし、死罪じゃなくて無期懲役にでもなったら、お前を生かしておくための金は誰が払うと思っているの?、俺の給料から天引きされている税金が使われるんだけど?」
「そ、そんな! そんな理由で簡単に人を殺すなんて、どうかしているだろ!」
「‥‥軍人の俺に言われてもなー、今まで何百と人を殺しているわけだし、それにお前に俺の事が言えるの? ‥‥お前ヴァンギエル族の血が少し入っているだろ? 頭デカいし。
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