異世界陸軍活動記

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今後の話

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 兵士達が忙しく行き交う中、ソルセリーは必死に誰かを探していた。
 それをライカは離れた所から見ていた。彼女の眼にはライカの姿は写っていない、彼女が誰かを探しているのかは分かっている、その不安げな表情が一転して晴れた時、彼女から出た言葉は

 『隊長!』

 だった。その顔はホッとしたようなそれでいて嬉しそうな顔だった。

 いつからだったか
 彼女が嬉しそうな顔を向ける時は、常に自身の所属する隊長のハヤトがそこにいた。

 そしていつからだったか
 そんなソルセリーの笑顔を見ていると、心の奥底がチクリと痛むようになったライカ自身がそこにいた。




 ◆◇◆


「よーし、これで全員だな、それじゃあ始めてくれ」
 この中で一番経験の長い男性召喚者がこの場を仕切り、欧米ズの一人、ユーロスに向かい話しかける

 今いるこの場所は、この砦に急ピッチで作られてはいるがまだ未完成の食堂になる。
 この砦はハルツール軍から重要拠点と指定され、砦その物の拡張や強化を受け、今や砦というよりも、大規模な要塞のように様変わりした。
 そしていままで番号で呼ばれていたこの砦には新しく名前がつくらしい、その砦の食堂には、ここに配属されている召喚者8名全てが集まっていた。

 ユーロスは頷くと立ち上がり話し出した

「うす、まず自分は今回北側に配置されていました。自分の他には2名の他の兵士が護衛として自分の側に待機、自分はもしもの為に召喚獣のモルフトを出していたんです」

 今回の戦闘でユーロスは自身の召喚獣であるモルフトを失っている・・・・・、モルフトとは空中に6本の腕だけが突き出ている召喚獣である、つまりユーロスは召喚者殺しによって自身の召喚獣を攻撃されたのだ。

「砦北側は敵兵の攻撃が激しくてかなり押されていたっす、だから自分も前に出て対応したんすけど、その時対峙したマシェルモビアの敵兵が黄色の魔法陣を出したんっす、自分は召喚獣だと思って警戒したんすけど、そこから出て来たのは穂先が黄色に光る槍だったんすよ、その槍でモルフトが突かれた瞬間一気に魔力が体から抜けて行って、同時にモルフトが消えていったんす」

「「「・・・・・」」」
 ユーロスの話にその場にいた召喚者達は言葉を発する事が出来なかった。


 戦闘が終わり、砦の方が騒がしかったのはこれが原因だった。
 事の経緯をユーロスは報告その結果、砦内部は軽い混乱状態になっている、既にハルツール軍本部にも報告が上がっているだろう、タクティアも忙しいらしく、戦闘が終わってからまだ一度も姿を見ていない。

「‥‥それは、槍で突かれただけで消えたのか? それともある程度モルフトは攻撃を受けた後か?」

「槍に突かれるまでモルフトは攻撃を食らって無かったっす」

「それは本当に魔法陣から出て来たのかい? そう見えただけなんじゃ」

「それは無いっす、小さな黄色い魔法陣が出たのは自分はしっかり見ているし、他にももう1人それを見た人がいるっすから間違いないっす」

「その槍は━━」


 

 他の召喚者達が話ている中、俺はじっと目を閉じて話の内容についてまとめていた。
 
 槍が魔法陣から出て来た。
 しかも召喚獣を召喚する時に出てくる黄色の魔法陣、これによって槍は召喚獣だとなるが、本当に召喚獣か? 召喚獣が持っている武器では? と思ったが、だったらその武器を持つ召喚獣が直接出て来てもいいだろう、
 しかし召喚獣を失った召喚者達からの証言にそう言った報告は無い。
 ならばその槍自体が召喚獣‥‥‥という事になる

 槍の破壊力は凄まじく、ユーロスのモルフトを一撃で消した。
 しかもユーロスは「突かれた」と言っている、「貫かれた」では無く突かれただ。
 普通、武器で突かれただけでは召喚獣は消えたりしない、ある程度のダメージを超えた場合、あるいは首などを吹き飛ばされるなど、生物としての致命傷を受けた時などに消滅する。

 ‥‥もしかして、槍に触れただけでもアウトなのか? ウイルスの様な物か?

 その槍は人に対しても通用する? いや‥‥穂先が黄色に光る槍に殺されたという報告は聞いていない、目撃が無いだけかもしれないが、流石にそれは無いと思いたい



「・・・ぱい、先輩」

「ん? な、何?」
 隣にいたドルバに肩を叩かれていた

「先輩はどう思うっすか?」

 どう思うか? 怖いなーとしか思わない
「ユーロスが見たって言うならその事は事実なんだろう、他にも見たっている人がいるんだし」

 欧米ズ3人が頷く

「それと、もしかしたらその槍に触れただけでも召喚獣は消えるかもしれない」

「「「えっ‥‥」」」
 その場にいる召喚者7人全員が声を上げる

「俺の予想だよ、実際触れただけで消えるとは限らないし‥‥ユーロス」

「はいっす」

「貫かれたんじゃ無いんだろう? お前は突かれたって言ったよな?」

「‥‥そ‥‥っすね、あの時の攻撃は召喚獣には致命傷になって無いと思うっす」

「モルフトの腕6本全部突かれたわけじゃ無いな?」

「その内の一本だけですね」

 モルフトは6本の腕の召喚獣、その腕は繋がっておらずそれぞれ空中から生えている、その内の1本だけ攻撃を受けて再召喚出来なくなった。
 となると、俺の召喚獣ではどうなる? ノームは3体だし、デュラハン・オルトロスはそれぞれ2体存在している、その内の片方でも突かれたら消滅してしまうのか?

「‥‥今後の対策だけど、みんなは何かいい案はある? 軍からはまだ指示が無いけれど、それまで自分の召喚獣を守る為にさ」

 突如出される召喚者殺しについて、誰も対策も思いつかないのか俯く者や天井を見上げる者それぞれだった。

「無いなら俺から提案だけど、召喚獣にも防具を装備させた方がいいと思う」

「防具っすか」

「うん、既に防具を付けている人もいるだろうけど、そうでない人もいる、金がもったいないからとか、召喚獣は消えてもすぐに復活する消耗品、なんて思っている人は考えを改めた方がいいと思う、
 もうそんな言ってられる場合じゃ無くなっているからね」

 防具を付けていなかった召喚者達は渋い顔をしながらも頷いている
 もし召喚獣が普通に倒され消えた場合、装備している防具などはその場に落ちる、それをいちいち拾ってられない状況の時もあるし、なにより召喚獣自体大きい事もあり防具も大きいし重い。
 そう言った事から防具を付けない召喚者も多い、それに召喚獣用の防具は売ってはいるが高い

「そうっすね、そうなると俺らも付けないといけないっすね」
 隣でドルバが呟く、ドルバも召喚獣には防具を付けない派だった。

 全く、ドルバもそうだけど、他の召喚者達ももっと自分の召喚獣を大事にした方がいいと思う、自分の相棒ともいえる召喚獣だよ? そこら辺はもうちょっと‥‥‥

「あれ? どうしたんすか先輩? 頭なんか抱えて」

「‥‥俺も召喚獣に防具とか付けて無かった」
  デュラ子には色々作ったが他の召喚獣には皆無だった

「ははは‥‥別にいいじゃないか、防具を装備させて無い者はハルツールに戻ったら買いに行けば」
 一番経験の多い召喚者がちょっとだけ呆れたような声で笑う

 ドヤ顔で『考えを改めた方がいい』と言っていた本人が防具を付けさせていない、恥ずかしい思いもあるがそれ以前に

「そ、そっすよ! そこに気付いた先輩は流石っす、何なら今度俺と一緒に買いに行きませんか?」
 
 俺をヨイショしながらも上手くフォローしてくれるドルバだが

「俺の召喚獣、全部規格に当てはまらないんだけど」

「あっ!」

 おもしろ召喚者としての弊害か、一般の召喚獣と違い俺の召喚獣は全て形が違う、売っている召喚獣用の装備は全て当てはまらないのだ。

「はぁ‥‥また鍛冶仕事しなくちゃならないのか、休暇が潰れる」

「先輩、だったら鍛冶屋に特注で作らせたらいいじゃないですか、先輩お金持ちだからそれくらい━━」

「嫌だよ、お金勿体ないし」


「「「えぇぇ‥‥‥‥」」」

 今さっき
『お金がもったいないからなんて理由で召喚獣の装備を何とやら』
 とか言っていた本人が、勿体ないという理由で嫌がる顔を見てその場にいた召喚者全員が何とも言えない雰囲気に包まれた。


 お金は大事だ。『成長促進』があるから食べる物に困らないし、召喚獣のラグナも野菜などを育てている、住む場所も魔法で作れるから問題ない

 だがしかし、今現在首相から借りている立派な庭付きの家を借りており、給料もオヤスの所の顧問としての報酬も含めかなりもらっている、ハッキリ言ってかなり贅沢な暮らしをしている。
 一度贅沢の味を知ってしまうと、それ以上下の生活は出来なくなってしまう、そして今後もそんな贅沢な暮らしをしていたい、老後のための資金も貯めておきたいし、ノーム達の酒代もある。

 そして何よりデュラ子にもっと服を買ってあげたい、毎年出る新作をちゃんと着させたい。
 最初の頃の10代後半の姿から、20代前半の姿に変わったデュラ子は何を着ても似合うようになった、落ち着いた服も似合うようになったし、10代が着るような服でも何となくこう‥‥企画物っぽくてイイ!
 具体的には上げられないが、とにかく良い

 何にせよこの素晴らしい生活をいつまでも続けていきたい





 その日の夜、まだ宿舎が完成していないので俺が魔法で作った家で寝たのだが、その日はタクティアは家に戻って来なかった。
 タクティアが家に戻ってきたのは次の日の夜になる。

「こうなったか‥‥」

「はい、召喚者の方々には申し訳ないのですが」

 俺が休んでいると俺の部屋にタクティアが訪ねてきた。そして手渡された資料、そこには今後の召喚者としての動きが書かれていた。

 内容は召喚者を囮に使うという事、それまで召喚者殺し対策の為なるべく召喚獣を呼び出さないという事になっていたが、今後は戦闘の時必ず召喚獣を出す事に決まった。しかし前に出す事まではしなくてもよい、ただ召喚者の側に呼び出しておくだけでいい
 そしてその召喚獣の周りを少し離れた所から複数の兵で囲むというものだった。

「召喚者殺しを持っている者は必ず召喚者が出している召喚獣を狙うでしょう、常に出しておけば必ず食いつきます、明らかに近づこうとしますからそこを見極め、一斉にその兵士を叩きます。
 召喚者に付ける兵士は4人、つまり5人一組となり行動する事になります」

「そして警戒の為後方に下がっていた召喚者は、戦闘の時には中盤まで前に出てきてもらいます、敵から発見されやすくし、召喚者殺しを持っている者を釣るんです」

 そう決まったんならそうするが
「でももしもの場合、戦力が減る事になるよ? タクティアからしたらそれでもいいと?」

「はい」
 と肯定する
「それは仕方ない犠牲だと思います、ただしそれ以上の成果が見込まれる事となるでしょう」

「‥‥‥その根拠は?」

「ハルツールでの召喚獣契約が出来る人は、国民全体の6%だと言われています。同じ人間ならマシェルモビアでもそれが当てはまるでしょう」

「そうだね」

「このやり方では召喚獣が消滅させられるという危険が伴いますが、それと同時に敵召喚者を倒せる事が出来ます、つまり敵国の召喚者を減らせるという事です」

 考えている事は分かった。こっちが召喚獣をやられ戦力が落ちたとしても相手はその召喚者自体が減る事になる、という事だろう

「上手くいくか?」

「上手くいかないと厳しくなるでしょうね」

「‥‥それが指示ならそうするよ、で? 編成はどうなる? 俺に着くのはライカとエクレール、それと他の隊から借りるのか?」

「ハヤト隊長は一人です」

「‥‥?」

「ハヤト隊長には誰も付きません」

 おいおい、オイオイ‥‥‥‥流石にそれは無いんじゃないの?

「そんな顔しないで下さいよ、ハヤト隊長は後方にいてもらうので囮になる必要はありませんから」

 なんだホッとした
「でもさ、それだと他の召喚者から反感を買いそうな気がするんだけど」

「ははは、それは有りえませんよ、それだけは有りません」

 タクティアはそう言うが、絶対陰で色々言われそうで嫌だ
「あー、でもさぁ、一人くらい俺に付けてくれてもいいと思うんだよね」

「必要ないでしょう、昨日の戦闘でも一人でしたよね?」

「う、うん」

「なら問題ないですね」
 そう言って話を打ち切ってきた

 
 何だろう‥‥‥ボッチだった時の記憶が溢れ出てきそうだ。これだけ砦に数が揃っているのに戦闘では一人でいろとか、そうでは無いと思ってはいるがイジメかな? と勘ぐってしまう

「話は変わりますが、次の武闘大会にハヤト隊長の出場が候補として上がっているので、そのつもりでいて下さい」

「え? は? 何だって?」
 急に話が変わったと思ったら聞きなれない言葉が出て来た

「武闘大会ですよ、ハヤト隊長は召喚者の部で話が出ているんです」

「なにそれ」

「武闘大会、見た事ありますよね?」

「見た事どころか聞いたこともないよ」

「えーっおかしいですね、3年に一度やってるじゃないですか? 全国放送もされているし」

 オリンピックかな? でも思い出してみると・・・
「かなり前に剣技の試合みたいなのが放送されていたけど、それとは関係ない?」
 
 つまらなかったから直ぐにチャンネルを変えたけど、その後召喚者の部もあったのか、それは見たかったな

「それですよそれ、3年に一度「剣技の部」と「召喚者の部」があって、軍からも各1名ずつ出す事になっているんです」

「軍から各一人ずつ?」

「はい、その他の参加者は民間などから各地の大会を経て集まります、一応軍の広報の役割なんかもはたしている大会なので、出場する軍の代表は負けられないんですよ」

 うーん、めんどくさそう

「それって断れない?」

「まだ候補という段階で、正式に決まった訳では無いのですが、もし選ばれた場合軍からの命令になりますから断る事は出来ませんよ」

「ふーん」
 すっごい出たくない!





 ・・・・

 ・・・・

「今日こそはぐっすりと眠れますよ」
 
 昨日まともに寝てなかったのか、話が終わるとタクティアは少し疲れた顔で俺の部屋を出ていった。

 一方俺の方は、一人で行動しろとか大会に出ろとかあまり聞きたく無いような内容を聞いてしまい、寝たいという気持ちが無くなってしまった。

 なので外に少し出てみる事にした。
「眠れない夜は夜風に当たる」なんてよく物語にある、何故かベランダとかバルコニーとかに出ていくやつ、正直布団の中で目を閉じていたらその内眠くなると思うんだけどね

 でも俺もそんな物語のような気分が味わいたくて外に出てみた。

 夜風など全くない無風状態の中、夜番をしている者や、まだこの時間まで働いている工作部隊の人達を尻目にただ歩く、高い壁が周りにそびえ立っているので風など一切入ってこない、この地点で夜風に当たるという目的は頓挫した。
 取りあえず出てきてしまったし、特にどこかに行きたいという訳ではないので、砦を囲む壁の周りを一周したら帰ろうと思う。






「飽きた・・」
 ただ歩くと言うのがこんなにも意味の無い行動だとは思わなかった。
 歩いていれば何となく気分がすぐれるとか、気持ちが切り替わるとか思っていたがただ苦痛になるだけだった。

 夜中に徘徊している老人とかは何を考えて徘徊しているのか? その行為は楽しいのか? など考えだし、まだ壁の周りを一周していないけどショートカットして家まで帰ろうかな~など思って来た時


「やあ、元気にしてたかい?」
 
 あれ!? この声は!

 なんとも懐かしく麗しい声で、そして、とても美しい顔立ちをしたネクターが数年ぶりに俺の前に降り立った。
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