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恋心 ②
しおりを挟むまたやってしまった‥‥‥‥
サコナ・ソルセリーは昨日の夜、自分がしでかしてしまった事に対し、後悔していた。
昨日の夜の出来事‥‥‥‥
◆◇
「隊長‥‥じ、実は私」
ソルセリ―はついに決心をし、隊長のハヤトに自分の思いを伝えることにした。夜ハヤトの部屋に行き、その口から自分の思いを伝えるために
「‥‥‥私は、私は隊長の事が!━━」
バタン!
「ハヤト隊長! 疲れている所申し訳ないのですが、今日のお話を‥‥あれ? ソルセリ―もいたんですか?」
思いを告げようとした時に丁度、大きな音がして扉が開き、タクティアが入ってきた
「申し訳ないのですが、これからハヤト隊長の今日のお話の時間なので、ハヤト隊長をお借りしてもいいですか?」
笑顔でそう告げてきた
私が勇気を出して‥‥‥やっとの事でこの場にきたのに、この大事な場でこの男は‥‥
「ささ、ソルセリー申し訳ないのですが、私とハヤト隊長の大事な話なので部屋から退出して欲しいんです」
笑顔でそう言ってくるタクティアに
ブチッ!!!!
「タクティアァァァァァ!!!!!!!」
ソルセリ―が切れた
「うわぁぁぁ!!」
物凄い形相で自分に掴みかかってこようとするソルセリーに、タクティアは直ぐに逃げようとドアに向かったが、足がもつれその場に倒れる。
「貴方はあぁぁぁあ! 貴方はいつもいつも余計な時にぃぃぃ!!」
タクティアの首を掴み、上に持ち上げる
「ぐ、ぐるしぃ!」
何とか振りほどこうとするが、本気になったソルセリーの指は離れる事は無い
「アァァァァァァァ!!」
「た、たいじょぉ‥‥たすげ」
既に足が着いていないタクティアは助けを求めるが‥‥‥
暫く無言で二人を見ていたハヤトだったが、机に体を向け、その日の日報の作成に取り掛かった。
・・・・
・・・・
それが昨日の夜の出来事、ソルセリーはその事をまだ引きずっていた
隊長の前であんなみっともない事を‥‥‥‥
自分の見せてしまった醜態、物心ついた時から何一つ不自由しない生活を送ってきたソルセリーだったが、そのせいで我儘で、我慢の出来ない性格になってしまった。
自分でも分かっていて直そうとしてはいるが‥‥、実際何十年もかけて形成された性格を直すのはそう容易くない。
告白を邪魔され、カッとなってしまうと自分でももう抑えが聞かない。
今まで何度もハヤトに思いを告げようとしたことがあったが、その都度誰かが邪魔に入る、その中でも最も邪魔をしてくるのがタクティアだった。
最近では‥‥以前からタクティアに関しては容赦はしない、非力なタクティアはソルセリーにも簡単に与しやすく、それに細い首はソルセリーの手にも馴染み、絞めやすい
全部、全部タクティアが悪いのよ!
そう決めつけようとするが、実際には自分にも非がある事はソルセリーにも分かっている
「はぁ‥‥‥‥」
この日何度目かのため息が口から洩れた
こっちはもう大丈夫ね、ライカの方は
「ライカ、そっちは終わったかしら?」
同じ場所で確認作業をしていたライカに進捗状況を尋ねる
「こっちはもうすぐ終わる、後は自分だけで大丈夫、ソルセリーは少し休んできたらどうだろう、何だか体調も良くなさそうだし」
「そうね‥‥そうさせてもらおうかしら、後はよろしくねライカ」
体調が悪いわけでは無いが、気持ち的にすぐれないし、ライカがそう言ってくれるならせっかくだから‥‥と言う理由でライカに任せることにした。
どこに行く宛ても無いのだが、ソルセリーは敷地内にある櫓を目指す、大陸東部東地区はハルツールが今だ押している状態にあり、以前は最前線であったこの場所は、今は補給物資の保管場所になっている。
そして活躍していた櫓は、今は使われておらず、人はいない。
何となく人と会いたくなかったソルセリーはその場所に移動したが、途中
「ソルセリー、確認は終わったのか?」
たまたま通りかかったエクレールに声を掛けられた。
「ええ、まだ終わった訳はないのだけれど、ライカが後は自分がやるから休めって」
「そうか」
エクレールは浮かない顔のソルセリーが、何故そうなのか? 大体察しは付いていた。
「昨日隊長と何かあったのだろう?」
「何かあったと言うか‥‥タクティアとの‥‥」
「ああ~」
エクレールは少しだけ考えるそぶりをし
「どうだろう、ちょっと話をしないか?」
「ええ‥そうね」
・・・・
・・・・
「タクティアにも困ったものだな」
「そうよ、いつもいつも邪魔ばかりして!」
誰もいない櫓の下でエクレールに鬱憤を吐き出す、ソルセリーから見て彼女はとても話しやすく、ハヤトに対しての相談などもしていた。
エクレールに会うまで、ソルセリーには気を許せるような相手はおらず、全部自分一人で抱え込んでいる事が多かった。
そんな彼女との会話はソルセリーにとってとても有意義で楽しいものだった
ため込んでいた鬱憤を吐き出してしまうと、最初タクティアに対しての文句を言っていたはずが、いつの間にかハヤトへの文句へと変わっていた。
「大体隊長は~」
「分かる、私と二人で行動していた時も~」
二人の会話は互いのストレスを発散させ終わるまで続くことになる
・・・・
・・・・
この子はいつもチョコレートを食べているわね、一体いくつ持って来てるのかしら‥‥‥‥
いつの間にかエクレールはチョコレートを食べながら話をしていた。そしていつの間にかソルセリーの手にはチョコレートが握られている、いつ手にしたのかも覚えていない、それ程ソルセリーは話に夢中になっていた。
「そうだソルセリー、今度の休暇に隊長とどこか出かけたらどうだ?」
「出かけるって‥‥どこに?」
「そんなのはどこでもいいさ、行きたい場所に行けばいい、告白するには勇気がいるだろ? ソルセリ―の事だ、勇気が出るまでまた数日かかるんだろう?」
「そ、それは‥‥」
違うとは言えない、実際昨日だって決心するのにかなり時間を要した。
「それに、そっちの方が気持ち的には楽だろう? 二人だけで出かければ邪魔する人もいないだろう」
エクレールは指に付いたチョコレートをなめると立ち上がった。
「まだやる事が残っているから行くよ、ソルセリーの事は応援している、後は頑張れとしかいえないがな」
・・・・
・・・・
エクレールと別れたソルセリーは、そのまま櫓の上で景色を眺めていた、見つめる先には竜翼機が離着陸するための滑走路、以前は無かったが、前線を押し上げこの場所が物資の保管場所になったのに伴い新しく新設された。
木が生い茂っていた場所を切り開き、整地しただけの簡単なものだった
「情けない」
自分はいつから意気地なしになったのか? ただ思いを伝えるだけなのに‥‥‥‥
エクレールには他人が悪いと言ってはいたが、一人になると自分の不甲斐なさが悔しくて仕方なくなる、いくら話しやすい相手でも、本当の自分の本心まで打ち明けられる事は出来ない。
気が楽になっていた先ほどまでは違い、やはり一人になるとどうしても思い悩んでしまう
「ずっと言えないで‥‥もう何年目だろう、もしかしたら‥‥もうこのまま言えずじまいで‥‥」
また朝のように気分が落ち込むかとおもった時だった
「い、痛い‥‥」
少年のような声が聞こえてきた
何かしら?
その声に続き、ソルセリーの知っている声が聞こえてくる
「男だろう? それくらいは我慢しな」
この声は‥‥マース?
同じ部隊のマース・シーメントの声だと分かった。ソルセリーは実の所このマース・シーメントの事が苦手だった。馴れ馴れしいというか、懐に入って来られるのが自分には合わないと思っていた。
「で、でも、痛つっ!」
そしてこの少年のような声
あれ? この声はノース? ‥‥‥‥!!
ソルセリ―は聞こえてきた内容からある事を思い出した。
ノース・ビベルはハヤトが引き抜いた兵士で、その前の部隊ではいじめにあっていたと、そしてこの会話の内容からして
マース、まさか隠れていじめを!
ソルセリーは声が聞こえる方角を探した。その間にも「ぐっ! うっ!」などの苦しそうな声が聞こえてくる
いったいどこから! マース、なんて事を、いったいどこに!
「ほら! 女に恥をかかせるものじゃないよ!」
マースのその言葉で、ソルセリ―はついに声のした場所を見つけ出した
いた、そこね!━━━えっ? ええっ!!!
二人の姿を発見したソルセリーはその場に姿を隠した。いじめかと思い、それを止めようとしたが、ソルセリーは止める事が出来なかった。
それだけではなく、その場から動けなくなってしまった
・・・・
・・・・
その日の夜
日中にとんでもない物を見てしまったソルセリーは、全く寝付く事が出来なくなっていた。目を閉じるとあの時の光景が瞼の裏に映し出されてしまう、目を開けてもその事ばかり考えてしまう。
何となく落ち着かない気持ちになってしまったソルセリーは、ハヤトに今から思いを伝えに行こうと決意する、何故そう思ったのかはソルセリー自身も分からない、日中の事を思い出すと心の奥底から勇気が湧いてくるのだ。
「ふぅー、よし!」
気合を入れ、意気揚々とハヤトの部屋に乗り込むが、乗り込もうとしたハヤトの部屋の前には何故かエクレールが立っていた。
「エクレール?」
そしてそのままハヤトの部屋に入って行く
こんな時間に何を‥‥
盗み聞きしようとしたわけではない、体が部屋の扉の方へと向いていた。そして中から聞こえてきたのは
『隊長、我慢できないんだ!』
『我慢できないって、昨日もだったろ?』
中から聞こえてきた会話に、ソルセリーの頭の中では日中の、ノースとマースの事が重なる
「エクレール‥‥‥‥貴女」
『今すぐ欲しいんだ』
『しょうがないなぁ』
部屋の中から聞こえてきた会話で全てを察した
エクレール‥‥貴女は‥‥応援するとか言っておきながら、もう既に隊長と‥‥
今思えば心当たりがあった。二つに分かれていた部隊が合流した時、やけにエクレールと隊長の距離が近かった、そんなはずはないと思っていた。
でも実際にはこの部屋の中で‥‥‥‥
ゆ、許せない、エクレール貴女は陰では私の事を笑っていたんでしょう? 私を見てほくそ笑んでいたんでしょう?
私は、私は貴女の事を信じていたのに‥‥信じていたのに
裏切られたという気持ちがソルセリーの心を黒く染め上げる
許せない、許せない、許せない!
ソルセリ―は直ぐに自分の部屋に戻り、ベッドの傍らに置いてあった折り畳み式の槍を手に取ると、ハヤトの部屋に向かった。
ハヤトの部屋の前に戻ったソルセリーは、槍に魔力を込めドアを突き破った。
ドガン!!
一瞬で吹き飛んだドアは、勢いで正面にあった窓に激突、窓ガラスが砕け散る、そのままその勢いで部屋に踏み込んだ
「エクレール!! 貴女の事は絶対に許さない!! 私を裏切ったのね!!」
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