異世界陸軍活動記

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 武闘大会は剣技の部でライカ、召喚の部でポンドラスの優勝で幕を閉じた

 一回戦で自滅し、これから生き恥をさらして行かなければならない俺は、また威圧の軽減で掛けていた仮面を付けて生きて行こうか? わりと本気で考えていた


 大会が終わったら軍を辞め、リテア様の専属護衛にしてもらおうと思っていたが、そのリテア様本人の前で失態を犯し、それどころではなくなってしまい悲劇に打ちひしがれ、一人涙をこぼす

 その後、目を赤く腫らしたまま召喚獣を一体ずつ呼び出し説教を開始、説教を受けた召喚獣達は皆ショボンとしていたが、召喚獣達は俺の為に怒ってくれていたのであまり強く言う事が出来なかった。
 ただ、その中で知ったのが、鷹の姿の召喚獣ポッポは、あの時出てこなかった。
 他の召喚獣達が我先にと魔法陣に突撃していた時、ポッポだけは大人しくしていたと‥‥

 召喚獣の中では古株、一番最初の召喚獣であり、付き合いも長いせいなのか俺の事も分かっているし冷静だ、実に素晴らしいと思う。
 皆もポッポを見習うように

 それと、悪魔風召喚獣ラグナの背中に引っ付いている、小さな魔女風老婆3体はあの時姿を見せていない。褒めてやろうかと思ったが、ちょっとだけカマを掛けて聞いてみたところ、ただ単に通れなかっただけだったという事が判明

 3体共、包丁を手に魔法陣に向かったが、ぎゅうぎゅうで通れなかった。実際には外に出ていなかったから自分達は無罪だ。
 なんて主張してきた。
 ‥‥包丁を持った小さな老婆が迫ってくる‥‥こっちの方が恐ろしい気がする、とりあえず3体にも平等に説教をしてあげた

 あの時出てこなかったポッポには今度ご褒美をあげようか? 何をしたら喜ぶかな? 鷹狩ごっこでもしてあげようか

 ・・・・

 ・・・・

 さて、本来の予定であれば武闘大会が終わった後、我がハヤト隊の隊員である、むっつりスケベのデディ・アバルドと、現在彼女募集中、花騎士の彼女をNTRされたタバル.ダイヤと共に夜の街に繰り出す予定ではあったが、あの武闘大会で恥ずかしい思いをしてしまった俺は隊員達、特に俺の事を知っている人達とは会いたく無くドタキャン、連絡が無い事から何となく察してくれたのだろう。
 知らない人だったらそうでもないが、知っている人、特に身近な人とは今の所会いたくはない、だからこの後の休暇はどこにも行かず、誰とも会わずに過ごそうと思う

 しかし、どうしても行かなければいけない場所がある

 ◆◇

「さて、やろうか!」

 なるべく人目に付かないよう、朝早く出発し、約3時間で帰って来れた。
 行って来た所は、ハルツールでは2か所存在する内の一つ、移転門からの距離が一番遠い所を選んだ。
 そこは人通りが少なく、なるべく人目に付かない所を選んだのだ

 首都のサーナタルエでは都市条例で召喚獣での移動は禁止されているが、そこから離れてしまえばその条例は関係ない、ペガサス形態のコスモでひとっ飛びである

 早く試したくて急いで家に帰ってきた。もちろん魔法の契約は成功、俺に契約出来ない魔法はないのだ‥‥今の所は

「何だか緊張して来たな‥‥‥、行け!『浮遊』!」

 行け! とか言わなくても良いのだけれど、男子だったら一度は言ってみたい、人型のロボットのパイロットが使うアレ、気分的なものなのでどうしようもない、今回契約してきた魔法は『浮遊』、対象となる物に触れた状態で発動されると、その対象物を動かせ移動させる事が出来る

 発動前にあらかじめプログラムしておくと、3回までその軌道を変える事が可能となる、まさに『アレ』に近く夢の魔法の一つだ。
 ウチの隊で同じくこの魔法を契約しているタバル・ダイヤは、『戦闘では全く使えない』と言っていたが、俺はそうじゃない、俺だったら見事に扱う事が出来る、そう意気込み練習を開始した

 ・・・・

 ・・・・

「使えませんねぇ‥‥」
 
 練習する事既に数時間、日は沈みかけ空が赤く染まり出した頃、タバルが言っていた事は本当だと実感できた。
 当初の計画だと、剣や槍を敵に対して飛ばしたりすることを目的としていたが、まず最初に、敵は止まっていない飛んで来たら普通は逃げる、逃げるなら追いかけられればいいが、この魔法は発動の前に移動する場所をプログラムする、一度発動してしまうともう手は出せない
 
 一応3回は移動する場所をプログラム出来るが、そんなの先読みの特殊能力がある人以外は当てる事は無理だろう、もしそれで当たるような相手だったら相当運が悪いし、3回まで軌道を変えられるとしても、移動距離はあまり遠くにまで移動出来ない、遠距離から遠隔操作のうんたらは出来ない
 
 しかも魔法を使い、放った武器の飛ぶ軌道は変えられても、武器の向きまでは変わらない、もし武器の軌道を変えた後、的に当たったとしても、剣先ではなく剣の腹や別の場所に当たるだけである
 
 そして『浮遊』を使った時に出る速度、魔力を込めるだけ速度は増すが、正直、手で全力で物を投げた方が早いし、直線でしか放てないが『放出』魔法の方が速度が速い。
 その結果、武器を投げる場合は手で投げた方がいいという事になった
 
 戦闘で全く使えないのが分かったが、生活でも使えない事が分かった。
 物を移動させそれを置くとき、正確な場所をプログラムしないとまともに置く事すら難しい、何度も庭で土を使って試してみたが、時には地面にめり込み、時には少し浮いた所で止まりその後ポトリと落ちる、コレが皿などの割れやすい物だったらすぐに割れるだろう

 『ゴミ箱に捨てる時ぐらいかなぁ? 使うのは』
 タバルはそう言っていたが、俺は素晴らしい使い方を苦心の末開発に成功した

「そーら、オル・トロス取っておいで」
 召喚獣のオルトロスにボールを投げて遊んでいた

「ワンワンワン!」
「ワンワン!」

 普通にボールを投げると、オスであるオルの方が能力が高く常にボールを取ってしまう、そうするとムキになるのがメスのトロス、自分の体の前にデカい顔を出したり、デカい足を出してオルを叩いたりと喧嘩に発展してしまう、だが『浮遊』を使うと軌道を変えられるので、どっちに行くか分からないようボールを飛ばすと、オルが独占する事も無くなった

 そんな軌道が変わるボールを追いかけるのは、二匹にとっても楽しいようで、喧嘩せずに純粋に楽しんでいる、それにこの『浮遊』を使った方が手で投げなくてもいいから楽だし

「おっと、やるねぇ」
 
 オルが起動を変える前にジャンプをしてキャッチし、嬉しそうにボールを咥えて走ってきた



 ◆◇

 マシェルモビア軍、軍団長補佐であるトルリ・シルベ、新兵から敵の捕虜になり、解放されたのち軍大学に入学、その才能を認められまだ若いにも関わらず軍団長補佐に上りつめた女性兵士

「うわぁ‥‥‥‥」

 トルリが手にしているのは一枚の紙、そこには自分が軍団長になったと書かれていた。
 軍団長補佐から軍団長に抜擢され、それに伴い給料も上がった。元々結婚資金の為に軍大学に入ったのに、本人が望むよりも大変な事になってしまった

 マシェルモビアでは現在、秘密裏に軍の編成を進めており、軍団規模の集団をいくつか編成をしているとトルリは聞いた。
 その中で何故自分が選ばれるのか疑問であったが、それは自分が所属する軍団長の推薦であった事は彼女は知らない。

「何でこんなことに‥‥‥‥」




 ◆◇

 元召喚者でもあるルイバ・フロルド

 元、と言うのは自身の召喚獣を『召喚者殺し』に変え、通常の召喚獣を呼び出せなくなってしまったからである。
 そのルイバ・フロルドは自身の所属していた軍団から移動し、別の小隊所属になった。
 それは本人が望んだことで、なるべくグラースオルグであるウエタケ・ハヤトに会える確率を上げる為である、友を殺されグラースオルグに執着する彼の願いは軍本部に届けられ、了承される

 ルイバ・フロルドは一度グラースオルグを退けたという実績があり、軍もそれを事実として認めたからこそだった
 
 「うわぁ‥‥‥‥」

 そんな彼は休暇中であり、自身の住む家で軍が参考にと渡された映像を見ていた。
 それは何年かに一度行われているハルツールの武闘大会の映像だった。
 武闘大会自体は珍しいものでもない、マシェルモビアでもやっているし、マシェルモビアの武闘大会の映像が傍受されハルツールで流れる事もあるからだ

 ルイバ・フロルドは映し出された映像を見て、その顔をしかめずにはいられなかった

 正直グラースオルグと戦ったら自分が勝つ自信はある、魔法も封じる事が出来たし、『召喚者殺し』を持つので相手は召喚獣を出せない、それに自分の方が武器の扱いにも慣れている、だが‥‥‥‥

「何だよ、この化け物はよぉ‥‥」

 たった2体の多重召喚でも出来る者はほぼいないのに、映像に映し出されたグラースオルグは数体もの召喚獣を一度に召喚していた

 化け物染みたその魔力と、最後に自滅したグラースオルグを見て、顔を引きつらせる事しか出来なかった
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