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コトン・ラティウス
しおりを挟む彼が初等部に入って来て、初めて話しかけた理由は何となくだったと思う
妙に寂しげで、儚げな感じの大人の男の人という印象で、しかも言葉を話せず他の生徒が話しかけても弱々しく微笑むだけだった。
だから何となく‥‥
━━いえ違う、ただ単に可哀そうと思ったから
見た目の弱々しさは実際の所その通りで、他の皆と一緒に遊ぶことが出来なかった。走る事も出来ないしボールで遊ぶことも出来ない。
他の子が遊んでいる中、彼だけは一人座ってそれを見ていた
だから私は一人ぼっちの彼の側にいて、いつも話しかけていた。
最初は一方的に私が話しかけていただけだったけど、彼は少しずつ言葉を覚え始め簡単な会話だったら出来るようになっていった。
それが面白くて学校にいる時はいつも彼と一緒にいた。
一緒に絵本を見たり一緒にお昼を食べたり
『コトンちゃんは将来━━お嫁さんに━━』
彼と一緒に居るととても楽しく、私は毎日学校に行くのが大好きだった
━━でも
「ハヤトも随分言葉も話せるようになったし、そろそろ初等部を卒業させようと思ってね」
楽しい時間は長くは続かなかった。このままずっと一緒にいて、一緒に初等部を卒業し、そして一緒に中等部に行くと思っていた。
そしてその日以降、彼は私の前には現れなかった
その日以来、私はずっと一人で泣いていた。両親もそんな私の事を毎日のように心配をし、気にかけてくれていたが彼の事が忘れられなかった。
それでも彼がいなくなり半年が過ぎ、1年が過ぎようとしていた時には彼の事をようやく忘れる事が出来るようになっていた。
でもそんな時だった
彼が軍学校に入学したと聞いたのは
◆◇◆◇
「本当に兄貴はそれでいいの?」
「中等部から言っていた事だからね、コトンのやりたいことをやらせてあげたいし」
「でも軍が流している宣伝とはまるで違うよ、今は敵の動きも激しくなっているし、コトンの事を思うなら考え直した方が‥‥」
「お願いよタクちゃん、長い事この子の夢だったのよ、だから‥‥ね」
「義姉さん‥‥」
彼が軍学校に入学したと聞いたその日から、私は同じく軍に入る事を決意する、また幼かった事から真剣に考えることもせず、ただ大雑把に軍に入るという事だけを初等部のあの時から考えており、私の願いは彼の側に居たいという気持ちだけ
そしてお父さんの弟で、軍に所属しているタクティアおじさんに軍大学入学の為に色々お願いをしていた
「お願いおじさん、ずっと夢だったから‥‥」
彼と一緒に居ることが
これでやっと近づける
この世界では誰もが知っているおとぎ話に登場する怪物『グラースオルグ』。彼がそういった存在であることは知っている、最初その映像を見た時は私も恐怖に心を支配された。ただ、それを知ったとしても彼の事が忘れられなかった
「うーん‥‥コトンがそこまで言うなら」
◆◇
「すいません今日の食事は無しでおねがいします、と言いますか暫くは抜け出せそうにないんです」
「そんなに忙しいの?」
「いえ、仕事の事では無くて、私の兄の子が来年、軍学校に入る事になりまして、その手続きとか私がやる事になったんです」
「へぇー、タクティアの家って代々軍の家系とかなの?」
「そんな事は無いですよ、兄弟では私だけですから」
◆◇◆◇
「行ってらっしゃいコトン」
「頑張るのよ!」
「はい、行ってきます」
高等部を卒業した私は両親に見送られ軍学本部の門をくぐった。
軍本部の敷地内にある軍学校、ここで私は4年間を過ごす事となる。どうやら私には召喚者としての才能が有ったらしく、既に5つの召喚獣と契約を果たしている
イデラム
カーネロ
ミオロゼ
モルフト
テストリン
の5つ、これはタクティアおじさん曰く、これだけの戦闘向きの召喚獣を持てるのは結構珍しいらしくかなり驚かれた。
そしておじさんの進めるまま『召喚科』に入る事を決め、進む方向も『召喚隊』志望にする。それと魔法も『収納』『照明』『重力』『雷』の4つを契約出来ている
「おう! コトンお前も来たか」
軍本部施設内を移動中、不意に声を掛けられる
「久しぶり、ケンタクンも今来たところ?」
「父ちゃんに送ってもらってな、今着いたところなんだ」
高等部は別々だったが、初等部中等部では一緒だった『ケントゥアルクゥ・アルカシャーツ』。初等部の時、彼から『ケンタクン』と呼ばれ、それ以降周りの生徒全員が『ケンタクン』もしくは『ケンタ』と呼ぶようになった。
親からもケンタクンと呼ばれているらしい、そしてケンタクンも軍学校入学を決めており、それは友達からの情報でお互いに知っていた
「一緒に行こうぜ」
「うん」
ケンタクンと一緒に軍学校を目指すことにする
「ホールにはさ、ハヤトの『アレ』があるんだろ? 楽しみだな」
「うん!」
軍学校のホールには、ハヤトが召喚獣を契約した時の写真がある。私がタクティアおじさんの紹介でカーネロを契約した時、軍本部を訪れたが軍学校には行っていなかった。だから今回がその写真を始めて見る機会となる。
その写真を見る事は新入学生にとって一種の行事となっており
その反応は大きく分けて二つ
「ぎゃはははははは!!」
その写真を見て大声で笑う者
「見ろよコトン、ハヤトの奴のこの顔! しかも私服だし」
お母さんが買って来たのでは? と思わせるようなキャラクターがプリントされた服に身を包み、無理やり撮らされているという状況に笑いを抑えないケンタクン
そして
「かっこいい‥‥‥」
その美しい召喚獣とその召喚主の勇ましさにウットリする者、もちろん私もその内の一人
私の部屋にはハヤトが映っているチョコレートのポスターがある、高値が付き中々手に入れられない天使ネクターのポスターとは違い、ハヤトのポスターは簡単に手に入れられた。
それを毎日眺めていたが
「仮面のハヤトもいいけれどやっぱり素顔の方がもっといい‥‥‥」
「えーっ? コトンここは笑う所だろ? ほら、親戚のオジサン達にもてはやされる子供みたいじゃねーか」
ケンタクンはウットリしている私に驚いているが
「何を言ってるのこんなにかっこいいのに、この人が私の婚約者だなんて‥‥素敵」
「えっ、お前まだそんな事言ってたの? 本気なのか?」
「当たり前でしょ、将来お嫁さんに来てくれって約束してたんだし、ケンタもあの時一緒にあの場にいたでしょ」
「確かにあの時いたけど‥‥あれ? 『将来いいお嫁さんになる』じゃ無かったか? 子供の時だったから記憶があやふやに‥‥‥」
「言った、言ったし、将来僕のお嫁さんになってって」
「いや待てよ、流石に初等部の子供にそんな事言わないだろう、もし本当に言ったとしたらハヤトはちょっと危ないぞ?」
「危ないってのが何かは知らないけどそんなんじゃない!」
その後ケンタと多少の言い争いもあったけれど
「そう言われると言ったような‥‥‥」
最終的にケンタクンが折れた
二人のその会話を他の生徒も聞いており、それは内容がいびつになりながらも徐々に周りに広がってゆく
◆◇
「おいタクティア」
タクティアは軍本部で仕事中、仲の良い同僚に突然呼び止められた
「はい、何ですか?」
「お前のトコの隊長って‥‥小さい子供にしか興味を持てないんだって?」
同僚は誰にも聞かれないよう小さな声で囁く
「はい?」
突然の事に、聞こえていたにもかかわらず聞き直してしまった
「他の奴が噂してたぞ、そうだって」
「いえ、流石にそれは無いでしょう」
「それは本当に言い切れるのか? タスブランカの次期代表の噂だってあっただろう」
「ははは、まさかまさか‥‥‥ まさか」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「ちょっと本人に聞いてみることにします」
・・・・・
・・・
数日後
「タクティア、なんて言ってた?」
「ハヤト隊長はそんな事は無いって言ってましたよ、それと変な噂を広めるなら『喰うぞ』って言ってましたから気をつけて下さい」
「お、おい、やめろよ!」
◆◇◆◇
軍学校に入り2年目になった
彼と一緒に居れるからとして召喚隊に入り卒業を待ちわびていたのだが、それが叶わないという事を‥‥‥
軍の召喚科には『召喚隊』と『先行隊』2種類あり、彼は『先行隊』を選んでいた事を知った
「頼むよタク、この子の将来の為なんだよ」
「お願いよタクちゃん」
彼との事を両親に伝えた所、彼と同じ部隊のタクティアおじさんに相談しようという事なった
「二人とも本当にそれでいいの? いや、ウチの隊長に悪い噂とかは無いけれど、大体ほら‥‥コトンが子供の時に言った話でしょ? 隊長も流石に子供にお嫁さんになってとかは言わないと思うんだよね、多分‥‥。コトンの聞き間違いかもしれないし」
『コトンちゃんは将来━━お嫁さんに━━』
「言った! ちゃんと言われたもん!」
「ッ!‥‥‥コトン‥‥」
おじさんは少し考えた後
「兄貴と義姉さんはいいんだね?」
「コトンが幸せになるんだったらそれでいいんだ」
お父さんの後にお母さんも頷く
「おじさんお願い‥‥‥」
「う~~~ん‥‥‥」
おじさんは最後まで渋い顔をしていたが最終的には了承してくれた。ただ、いきなり彼の部隊には入る事が出来ないので、軍学校ではこのまま召喚科で卒業し、暫くは召喚隊に所属するように言われた
これでやっと‥‥‥
◆◇
「おう! お邪魔してるぞ」
タクティアが本部の私室に入るとそこには仲の良い同僚が待っていた
「ああ、いたんですね」
「ご挨拶だなぁ~せっかく来てやったのに」
あからさまにむくれた振りをする
「仕事は終わったんですか? こっちは仕事が増えたというのに」
「何の仕事だ? 協力してやってもいいぞ内容次第では」
「必ず手伝ってくれるなら教えますよ」
「む‥‥嫌な予感がするが‥‥分かった手伝おうか」
「助かりますよ‥‥‥実はですね」
「うん」
・・・・・
・・・
「お前のとこの姪と竜騎士をか?」
「はい、ハヤト隊長が初等部の時に約束したそうで」
「そりゃお前‥‥その時にそんな約束なんかしたら駄目だろう?」
「ええ‥‥多分コトンの聞き間違いだと思うのですが、ウチの兄貴と義姉さんも大概ですよ、二人とものほほんとした性格ですからね、もしかしたらハヤト隊長に相手がもういるとか考えないんですかね?」
「えっ? いるの?」
「いませんけど」
「でもお前どうするの? ソルセリ―とあわよくばくっ付けて、血を残す為に退役させる計画はどうなる?」
「どうしましょうかねぇ~、でも可愛い姪の為ですから‥‥取りあえずラベル島駐留の計画はそのまま進めて‥‥うーん、ソルセリーがハヤト隊長の事を想っているのは確かなんですが‥‥ここは諦めてもらいますか」
「おいおい、それでいいのか?」
「仕方ないですよ姪の為ですから、ソルセリーは‥‥まぁ他に誰かいるでしょう」
「お前がいいならいいんだが‥‥ラベル島の事はこのままこっちで進めてもいいんだな?」
「お願いします。問題は‥‥最近ソルセリーが結構な頻度でアプローチしている事ですね‥‥‥邪魔‥‥した方がいいんでしょうか? 殺されるかもしれませんね」
タクティアは白紙の紙を取り出し、そこにペンを入れる
「遺書を残しておきますから、もしソルセリーに私が殺されても彼女が罪に問われないように」
「それ本気っぽいから止めろ」
◆◇◆◇
軍学校を卒業し、召喚隊に所属する事になってから1年と少しが過ぎた。
少し前から召喚者殺しと呼ばれる、召喚獣自体を消す事が出来る武器がマシェルモビアに出回っていて、召喚者達は前線から後退させられる事が多くなっていた。
その一環で今回私が所属する召喚隊の一部隊もラベル島に駐留が決められていた
「ねえコトン、竜騎士よ竜騎士!」
「う、うん‥‥」
「なに赤くなってんのよ、ほらっ! 未来の旦那様でしょ? 行かなくていいの?」
私が所属する小隊の人達には、既に私と彼の関係を伝えてある
「おじさんが編入の日までは会ったらダメだって言われてるし‥‥」
海軍所属の軍艦に乗り込みラベル島に向かう時、おじさんが言っていた通りその船には彼と、彼が率いる小隊が乗船していた。
海軍の兵士と楽し気に談笑している彼はとても楽しそうにしており、海兵達に色々質問を重ねていた。答える海兵達も質問される事が嬉しいのか、笑顔で答えている。
それで数年ぶりに見た彼はやっぱり‥‥‥
「かっこいい‥‥‥」
軍服に身を包んだその姿は、どんな着飾ったアイドルグループよりも素敵で洗練されていて、その彼の一挙手一投足から目が離せない
「コトン涎、涎が出てるよ」
「えっ? いけない‥‥」
ローブの袖で拭い、緩くなっていた口元を閉める
「いいよなーコトンは、あの竜騎士と同じ部隊に入れるとか‥‥俺も入れるものなら竜騎士の部隊に入りたいよ」
召喚者でありながら、竜騎士と呼ばれる彼の持つ召喚獣はその全てが独特であり、召喚者なら必ず一目を置く。
しかも本来なら他の兵士に守られる先行隊、もしくは集団で行動する召喚隊所属の召喚者と違い、彼の場合単独で作戦を実行するなど普通ではあり得ない事をやり遂げてる。
それは基本集団で行動する召喚者にとって彼の活躍は、憧れにも似た感情を持つことが多い。
実際私以外にも彼に話しかけたいという気持ちを持っている者は多いが、話しかけるという事の恥ずかしさ故に遠くからチラチラと見る事しか出来ない。
それでなくとも彼には独特の近寄りがたい雰囲気があり、普通の陸軍兵士でもしないような艦上で釣りをしたり、甲板上で椅子とテーブルを持ち出しお茶をしているなど大物ぶりを見せていた。
時折笑顔で艦内を走り回る彼の姿を見ていると、初等部に戻った気がしてとても懐かしく感じる事もあった
・・・・・
・・・・
目的地ラベル島までもう少し‥‥という時、異常が発生した
私と、私以外の者も生まれて初めて体験するであろう強風と豪雨、それにより艦の制御は全て失われ漂流する事となる。
タクティアおじさんには
「制御は失っていますが、この艦は大陸の方に引き寄せられているので不安になる必要はありませんよ、それにここはハルツールの領海内ですから、その内に助けも来るかもしれないし、その前にこの艦の動力源も復活するかもしれませんから、コトンは不安にならなくても大丈夫です」
と言ってくれた。
私はそれを信じ漂流する艦の一室で同じ召喚隊の部隊と大人しくその時を待っていた
だが、敵艦との遭遇で事態は急変する
「今光ったぞ! 召喚の光だ!」
部屋にある小さな窓から強烈な光が差し込む、それは召喚時に出る黄色の光だった。この艦にいる召喚が出来る者は私達召喚隊かもしくは━━
彼一人しかいない
海での戦闘時は海軍所属の兵士以外艦の外に出てはいけない事になっている、でも私はその光が見えた瞬間その部屋を飛び出した。
それを咎める者はおらず、部屋にいた召喚隊所属の者は全て私に続いて部屋を飛び出した
「こっちだ、こっちの方で召喚が!」
光の出どころである艦の後部に向かい急ぐ
「やっぱり今の光って召喚の?」
そして多分その黄色の光の原因であろう場所には彼がいた。そして
「おい! そこの召喚隊、手伝え!」
私達は直ぐに彼の元に駆け付け
「何をすればいい!」
小隊長が叫ぶ
「今から召喚をする、でも魔力が足りないだから魔力を貸してくれ」
彼が言うや否や私達の前に小さな魔法陣が現れる
「その魔法陣に向かって魔力を流して欲しい! ━━」
これに流せばいいのね、彼の役に立たなきゃ!
「分かりました!」
私は魔法陣に手を触れ━━━
━━何か硬い物が体に当たっている
そう思ったが実際には私は倒れていた。何故倒れているのか分からない、体を起こそうとすると何かに引っかかっているのか、上手く起き上がれなかった
「━━倒れている召喚者! お前だお前!」
急に聞こえた彼の声
「えっ!? わ、私?」
その声が私に向けられている事に驚きながらも、今度はちゃんと起き上がる事が出来た
「そうだお前だ! これからお前には召喚獣を操ってもらう」
物凄い形相で見つめる彼を少し怖いと感じてしまう
「し、召喚です‥‥‥か?」
いったい何の? と思った時、嫌でも目に入ってしまう様な巨大な物がそこにはあった
「‥‥‥えっ?」
「おい! 聞いているのか! 今からお前に召喚獣制御の力を譲渡する、近くの魔法陣に触れろ!」
「え? え、そ、その」
「いいから早くしろ!」
「は、はい!」
頭の中が整理されていない状態だけれど、反射的に魔法陣に手を触れる
「今から譲渡する! 頭の中に何か浮かんだか?」
魔法陣に手を触れると頭の中には四角い物、本? が浮かぶ
「ほ、本が見えます!」
「よし行くぞ!」
彼がそう言った瞬間、頭の中にある記憶している事柄が、全て消えてしまうような‥‥真っ白な感覚にとらわれ━━━━新しい記憶が植え付けられる
「行けるか?!」
その彼の言葉は召喚獣を操られるか? だろうか、それともこの状況を一変できるか? だろうか?
大丈夫‥‥‥
「行けます」
私は短く答え
その召喚獣に乗り込んだ
・・・・・
・・・・
敵艦の位置を把握しないと‥‥‥
召喚獣のレーダー内に12の反応を感知、レーダー外の敵艦の位置も調べるため観測機を2機射出。 射出直後、敵竜翼機に背後を取られる
「邪魔‥‥」
敵が射撃体勢に入り機体が固定した瞬間、垂直旋回で背後に回り込み機銃で撃ち落とす、その攻撃は『耐壁』をいとも簡単に打ち破り敵機に直撃、そのまま海面に墜落し行く
「脆い‥‥そのままレーダー外の敵艦を探しなさい」
観測機はそのまま外の敵艦の索敵に向かう
「まずは‥‥上の竜翼機を‥‥‥」
ヤマトに搭載してある全ての高射砲を作動させ上空の敵機に狙いを定め
「撃て‥‥‥」
時間は一瞬、その全てを撃ち消した。その爆発はまるで雨雲のように空を染め、その敵機の欠片が雨のように海面に降り注ぐ、そしてその落下する敵機の欠片に反応した敵艦の『耐壁』
「近距離に敵艦3隻確認、副砲用意‥‥観測機、敵艦を発見した? 主砲準備」
位置を割り出した敵艦に副砲が砲撃を加え難なく2隻撃沈、残り一隻を狙う。その間にも主砲の狙いが定まった
「1番主砲、放て‥‥」
ヤマトが揺れるほどの衝撃と光を放ち、弾丸が発射される。弾丸はヤマトのレーダー内にいた敵艦に命中、反応が消える。続けて
「2番主砲、放て‥‥」
同じくレーダ内の反応が一つ消えた。第一・第二主砲は次の獲物を捕らえるため旋回を開始
そしてレーダー外にいた敵艦を捕えた観測機、その観測機から見える光景を私の目に写し狙いを定める。
「3番主砲用意‥‥」
だが‥‥‥
「むぅぅぅ‥‥‥邪魔」
仲間の乗った艦が近くにおり、主砲を放てない。
このまま撃っても‥‥という気持ちが少し出て来たが、危険と判断したのか味方艦は速度を上げ離れる。少し待とうと思ったが、何故か撃ちたいという気持ちがヤマトから伝わりそのまま許可を下した
「放て‥‥‥」
轟音を響かせ発射される弾丸、その衝撃に味方艦が大きく揺れるが敵ならず味方までも蹂躙するその破壊力の心が躍ってしまった。
弾丸は少し時間が空いたせいか命中せず、近距離に着弾した弾丸に敵艦は速度を上げその場を離れる。
3番主砲からすかさずもう一発、だがそれも外れてしまう
「位置修正、放て‥‥」
3番主砲から放たれた3発目は見事命中、敵艦を沈める
「レーダーに敵竜翼機接近中、三式弾用意‥‥‥」
砲は接近する竜翼機に向けられ、観測機は接近する竜翼機の方向から敵空母の位置を割り出しその場に急行する━━━
◆◇
マシェルモビア海軍との戦いは私達召喚獣ヤマトにより、巡洋艦19隻、空母2隻轟沈、敵竜翼機多数の撃墜により勝利を収めた。
微力ながらもこの戦闘に加わった味方艦に敬意を示す
「これからの貴艦の御安航をお祈りします、どうかご無事で‥‥‥」
役目を終えた私達は召喚獣が故に現世に留まる事が難しい、魔法陣に帰らなければならない
ひと時の時間でしたが、一緒に戦えたことを私達は誉と感じるでしょう‥‥
これから行く彼らの未来に敬礼で送り出す
・・・・・
・・・
突如
フワッとした感覚
「あれ?」
夢見心地から覚めた私は考える間もなく
ビターン!!
という衝撃と共に何かに叩きつけられ海中に沈む。そして背中に受けた強い痛みを感じながら体は海面の上に浮かび上がる
でも強い背中の痛みよりも私はあの全てを支配する召喚獣、それを操れた事の快楽に心を奪われていた
「気持ちよかった~」
海兵に助けられるまで私は恍惚の表情で海面を漂っていた
◆◇◆◇
救助された私はその疲れからかそのまま眠りにつき、目が覚めたのは時計の針が日をまたいでからだった
「コトン起きましたね」
「あれ‥‥おじさん?」
私のベッドの横にはタクティアおじさんがおり、私に笑顔を向けていた
「どうです、立てますか?」
「‥‥ん、うん、大丈夫」
「それはよかった、私もコトンがあの召喚獣に乗っていたと聞いた時はビックリしましたが、無事でよかったですよ、しかもあの絶望的な状況から勝利したのですから、よく頑張りましたねコトン」
「えへへ‥‥うん」
少し照れ臭く感じるが、実際あの召喚獣を呼び出したのは私以外の召喚者だったりするので素直に喜べな━━━でも褒められると嬉しいものは嬉しい
「ささ、これから部隊のみんなに紹介しますから、隊員を集めてきますからコトンは後で来てください」
「あ、うん、はい」
おじさんは部屋から出て行った。
ああ‥‥そうか今日なんだ‥‥‥
部屋の時計は既に次の日になっており、それが彼の部隊の編入される日になっている事に気づく
「そうだ‥‥この召喚隊の皆に挨拶しておかないと‥‥起きてるかな」
・・・・・・
・・・・・
・・・
元同じ部隊だった召喚隊は小隊長がまだ起きていて無事に最後の挨拶が出来た。寝ている隊員もいたが小隊長がたたき起こしてくれた。
「頑張れよ」という皆の言葉に押され、私はタクティアおじさんと新しく同じ部隊となる人達が集まる場所に向かう
ずっと、ずっと前からそうなりたいと思っていた。彼の側に居たいと
その事を話すと他の人は
『小さな子供が大人の男性に憧れを抱くのと一緒だろう? そういうのって時間が経つと忘れるし、良くある事じゃないの?』
『将来お父さんと結婚するとか言い出す子供と同じ事だよね』
などと言われる
私はそれを全部否定してきた。そうじゃないと、彼の事が好きなのだと
『コトンちゃんは将来いいお嫁さんになるね』
‥‥でも実際は私も気付いている、あのまま彼と一緒に中等部に進んだらこの気持ちは無くなっていたのかもしれない、一時の思い込みだった事に気づいたのかもしれない。
そう気付く前に彼は私の前から消えてしまった。だからこの気持ちもそこで固定されてしまった。周りに違うと言われて意固地になっていたのかもしれない、そうじゃないと
でも彼の顔を見るとそんな事はどうでもよくなる、一緒にいたいと思う気持ちが溢れ
「初めましてコトン・ラティウスです、本日付けでハヤト隊に編入される事となりました。宜しくお願いします」
彼は持っていた私の資料から目を離す、私はその深く被っていたフードを取り
「久しぶり、ハヤト」
19年ぶりの再会がやっと叶った
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