異世界陸軍活動記

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別れ 回収 再会

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 ハルツールにマシェルモビア軍が侵入したのが5年前、敵が操る特殊オーガにより精鋭たちは蹂躙され、移転門を一つと都市が2つ侵略された。
 そこらからハルツールは苦難の時を迎える、多くの犠牲が出た穴を埋める為に軍学校の4年生が学徒兵として招集され、そこからすぐに3年生も戦地に向かう事となる‥‥それでも戦況は焼け石に水だった


 まだ未熟な生徒達はそれでも国の危機の為に戦いに身を預けた。
 その一人であるジラード、皆からはジッドと呼ばれている彼は、輸送機の窓から見える大地を見ながら誰に対しての質問では無いが、これから行われる作戦への不安からか不意に言葉が出る

「この作戦が成功すれば、ハルツールは国土を取り戻せるんでしょうか?」

 そんな質問をするジッドも、当時軍学校3年の学徒兵だった。
 当時は右も左も分からない未熟者だったが、今では5年も戦場を生き延びた一人前の兵士となっている。もはや泣き言も言わず、足が震えて立ち尽くすことも無い
 
 そんな彼を含む他3個小隊は、輸送機で今回の作戦が行われる場所へと移動していた

「ああ、間違いないだろう。ブレドリアとロメで奴らは大きな被害を被っている。戦力差で言ったらウチの方が勝っているさ」
 
 質問には覇気の無い声が帰ってくる

 彼の質問に答えたのは彼の所属する小隊長であった。
 その隊長も5年前のあの悲劇により、本来まだ指揮が出来るほど経験を積んでいなかったが、急遽分隊長として一分隊を任せられる事になる。それから5年を経て実力で小隊を預かる程の実力を手に入れた

 ‥‥いや、実力を手に入れられなければ生き残れなかったと言った方がいいだろう。足掻き、もがき、何とか生き延びようとした結果今彼らは生きている。
 それをしようとしなかった者、運の無い者達は今はこの世から消えている

 彼の所属する隊の小隊長は輸送機の窓から見える景色を見ていた。ただぼーっと見つめているだけだった。
 『赤い柱』によって更地となった大地を‥‥

 心ここにあらずといった小隊長だったが、不意に━━
「あそこ‥‥あそこ辺りに俺の家があったんだよ‥‥多分な」
 
 小隊長が指を指した先には何もない大地が剥き出しになっている、その小隊長の言葉には誰も返答する事は無い、皆何と言っていいのか分からなかった。
 小隊長の実家は昔からブレドリアにて、定食屋を営んでいるという。それは一度、竜騎士隊の指揮下にこの小隊が付いた時に小隊長が口にしていた。
 ハルツールの英雄ウエタケ・ハヤト、その人の指揮下に一時的ではあるが配属されるというのは、ジッドにとっても所属する小隊にとっても幸運だったと思う
 
 現代の竜騎士と言われた英雄ウエタケ・ハヤトの活躍は、正規の軍人はもちろんの事、当時学生であったジッドも知っている。
 最初に特殊オーガが世に姿を現した時、それは緩衝地帯に建設中であった防衛拠点での戦いであった。当時のリクレク隊が撮影したとされるその映像には、特殊オーガと戦うリクレク隊と、白い召喚獣にまたがり特殊オーガと戦うウエタケ・ハヤトの姿が映し出されている映像は圧巻だった。
 オーガをかく乱しそして撤退まで追い込んだあの戦いは、対特殊オーガの教材として、その映像は軍学校でも使われるようになっている。
 その英雄と共に戦えるのは自身の成長の為にもなったと思っている。ブレドリア制圧時のあの鬼気迫る戦い方はまさに歴戦の戦士、誰よりも先を走り、誰よりも敵兵を討ち取っていた‥‥

 輸送機は大きく旋回し、機長室からの室内への通信が流れる
『ブレドリア中央拠点に到達しました、着陸態勢に入ります』

「よし準備はいいな」
 ぼーっと窓の外を眺めていた小隊長が隊員達に声を掛ける、先程までの虚無な感じ既に無く、集中していた

「「はい」」
 隊員達のそれに続く

 ジッドも同じく続いたが不意に窓の外を見る。
 機体は右に旋回中であり、機体の左側に座っていたジッドの方からは北側、つまりマシェルモビア側が位置している場所が見えた。
 『赤い柱』により何も無い更地の大地になった地表には、遠くに大きなシミが張り付いているように見える

 なんだ?‥‥と目を凝らし‥‥

「っ!‥‥」
 思わず息を漏らしてしまった

 それは、シミではなく全てマシェルモビアの大軍だった。かなり上空から見ても距離があるにもかかわらず、それは全て兵士だというのが分かってしまった。
 ジッドだけではない、その光景を見た他の兵士達も息を飲む。、そしてその誰もが恐怖を抱く事になる。
 これから行われる作戦の大きさを知り‥‥
 

 
 ◆◇◆◇





 ハルトの移転門からサーナタルエの移転門へと飛び、俺は軍本部に来ていた。
 というのも、タクティアが用意してくれた新しい武器防具を受け取る為である。タクティアは俺が作ってあげた防具のように、色々魔道具やらを引っ付けて装備すればどうだろうか? と提案し、それをこの短い期間で完成させてくれたようだ。
 そのタクティア自身は既に戦地となるブレドリアにいるが、俺は装備の受け取りと護衛対象となるリテア様と共に向かうために、首都のサーナタルエに一度行かなければならなかった

「こちらが中尉の装備になります」
 以前、俺が軍にお願いして作ってもらった時と同じ人が俺の装備を持って来てくれた

「ありがとうございます」

「説明は必要でしょうか?」

「出来ればお願いします」

 『付与』魔法を失ったのが原因なのか、それとも魔法全てを失ったのが原因なのか、何かしらの付与がされてあるであろう防具に、一体どうのような付与がされているのか、どのような効果があるのか俺には分からなかった。
 女神サーナにより魔法を奪われる前は説明されずとも理解は出来ていたのだが‥‥取りあえずめちゃくちゃ金が掛かっているのは理解出来た

「では━━」
 装備を持って来てくれた人はそのまま説明してくれる。
 防具は俺がいつも愛用していた軽鎧タイプではなく、どちらかというと重鎧タイプの物であった。基本外側には『耐壁』『硬化』、そして内面には肉体のダメージを抑えるために『保護』の魔法や、重さを抑えるための『重力』魔法などが付与されている、それを見えない場所に隠してある魔石で強化をしている具合だ。
 腕・胴体・足と揃っているが、頭の防具だけは軽鎧タイプである。そこまでならいいが何と! 塗装がなされていた。
 俺が自分で作った防具は付与をしたり改造していたりするが、塗装まではしていなかった。まずメンドクサイし、無骨な金属の色が好きだったからというのもある。
 でもタクティアが用意してくれた防具は『黒』を基調としたもの‥‥黒よりも赤黒いと言った方が合っているかな?、どことなくグラースオルグになった時の色に似ている。
 これで戦場に出たら真っ先に狙われる奴だろうと思った。この姿で行ったら目立つし‥‥。
 それにデザインもなんか凝っている、こんな装飾とか必要ですか? というレベルのデザインだった

 まあそこまでだったらまだ‥‥ねぇ‥‥分かるよ。
 でも問題は、その赤黒い防具に羽織るように出来ている真っ白なコートだった。それはどこかで見た事のあるデザインで、よーく知っている。
 そう、俺がタクティアに作ってやった防具(おもちゃ)と若干は違っているが、見た目も性能もほぼ瓜二つだった

 嫌だなぁ‥‥アイツ(タクティア)も今ブレドリアに行ってるんだから、この姿で行ったらなんだかペアルックみたいで気持ち悪いんだけど。
 これから親戚関係になる訳だし、親しくしなければならないのは承知しているけど、そこまで親しくなりたいとは思って無いんだよ、俺が困った時だけ頼りにしたいだけなんだ。
 俺がまだ中学生くらいの年だったら
『うぉぉぉぉぉー! かっけぇぇぇぇえ!』
 と叫んでいたかもしれないが、そんな年齢は既に過ぎているんだよ

 当初ただの軽鎧だったタクティアの防具を、俺が改造して遊んでいるうちにいるうちに何故か真っ白なコートになってしまった奴の元軽鎧、どこをどう弄ったら軽鎧がコートになったのか? 改造していた俺にすら気づかないうちにその形になった。
 それで更に面白がって色を白にしたり変なヒラヒラの裾にしたり‥‥どんどん変わっていく自分専用の防具にタクティアは喜んでいたが、陰で俺はそれを笑っていた

 『まるでピエロ』と‥‥

 戦場に行ったらまず最初に狙われるのはアイツだ、なにせ目立つしとにかく目立つし、ホントに悪目立ちするし、もろ中二病装備だし‥‥

 でもそれがブーメランのように自分に突き刺さる事までは予測できなかった。今更デザイン変更をお願いできるわけじゃ無い、今更無理やりやり直してくれと言うほど俺はメンドクサイ人間ではないので‥‥今回はこれで我慢しよう、どうせ今回が最後だし

 装備の説明も終わり

「ここで着替えて行っていいでしょうか?」

「はい構いませんが‥‥」
 『収納』に入れないのか? という感じが伝わってくるがそのまま話を続ける

「それで今自分が来ている服をこっちで預かってほしいんです」
 『収納』が無いので今着ている服をしまう場所すらない

「では着替えが終わりましたらお呼びください」
 そう言って装備を持って来てくれた人は部屋を出て行った

 俺は来ていた服を脱ぎ、防具を一つ一つ付けていく。足、胴、手と身に着けその上から真っ白なコートを羽織る。
 コートの内側にはもしもの為の護身用に短剣が一本供えられており、その他に裏の生地にびっしりと様々な魔石が縫い付けられていた。威力を増幅させる物だったり、投擲用の魔法が付与されていたりと、動かすたびにジャラジャラと音を立てている

「数珠かよ‥‥」

 多分俺がタクティアの装備に付けていた魔石より数が多いだろう、多いに越したことは無いが‥‥

「こんなにいる?」

 真っ白なコートを羽織り左腕に付ける盾、バックラータイプの丸い小さな30㎝程の盾を付ける。直接つけるタイプの物ではなく、俺が前に作った重装甲用のアタッチメントに使っていた『キューブ』を参考にして作られているようで、左腕に触れることなく少し宙に浮いている感じになっている。
 コレだと持つ必要が無いしあまり邪魔にならないでいい、そして巨大な大剣に手を掛ける。それは以前俺が使っていた大剣とよく似たデザインの物だった。

「‥‥」

 何となく墓標を思い出してしまうが、それを手に取り背中に持って行くと盾と同じように宙に浮くように固定された

「昔のゲームにこんな格好の主人公がいたな」

 これならこんな大きな大剣をいちいち持ち歩かなくてもいいのだが

「これじゃあ俺大剣が邪魔で座る事出来ないじゃん、せめてこの槍のように折り畳み式にして欲しかったよ」

 最後に、折り畳み式へと改良してもらった、先が十字の形をした蜻蛉切りを腰に付けた

 
 



 ◆◇

 軍本部で装備を受け取った俺は、日本で言ったら総理官邸と呼べる場所へと軍用車で送られる。そこで待つリテア様に同行するために

 俺が到着して約1時間後、リテア様と数年ぶりに対面する事となる

 数年ぶりにお会いするリテア様は大人の女性へと姿を変えており、初めてお会いした時のあのお転婆な姿のリテア様とは別人になっていた‥‥だが胸部はあの時のままだ

「久しぶりねフェルド、また貴方に護衛してもらえるとは思っても見なかったけど、宜しくお願いするわ」
 リテア様は久々に会う友人のような感覚で俺に話しかけてくる


 この瞬間から俺の最後の任務が始まった
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