そして俺は〇〇になりました。

ふとん☆まくら〜れん(F.M.)

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そして、文化とクルセイト。その2

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 気付くとアサヒはベッドに横たわっていた。

 記憶は途中から途切れている…だが、
 何だかんだであっという間にやられてしまったのだろうとの想像は容易い。

 ダメージが残っているのは、
 自分達が本当に戦ったと言う証。

 生きているのは、
 仲間が助けてくれたという証。

 ここに横たわっているのは、
 スパルタ教師に虐められた証である!

 身体の様子を確かめながら半身を起こすと、
 ちょうど目の前の扉が開いてギリアが入ってきた。

「やぁ、目が覚めたかい?
 身体の方は大丈夫かな?

 やられてはしまったが、中々の成長ぶりだ。
 よく相手を見ていたね。」

「いやいや…身体の方がついて行かなくて…

 覚えてませんけどきっと、
 あっという間でしたよね…。」

 アサヒは少し恥ずかしそうに笑う。

 しかし、
 それを聞いたギリアはとても嬉しそうな笑みを浮かべて言う。

「全っぜん問題ないよ!
 もう君は次に何が必要なのかの答えを口にしたろう。
 強さへの道とはそう言うものさ。
 ははははは!」

(し、師匠!一生着いていきます!)と、
 心に誓うアサヒは、
 一つの疑問と物足りなさを思い出した。

「あ、ところでここは?」

「ああ、最近までここは滅多に外からの訪問者が来なかったから、
 泊まれる所が少ないんだよね。
 でもギルドの上にいくつか空き部屋があって、
 冒険者に使わせてくれてるんだよ。
 便利だよね。」

 どうやら過疎地の役場兼民宿…的な施設の様だ。

「そうそう、彼女達は別の部屋で休んでいるよ。」

「…あの後、アイツらもボコボコに⁉︎」

 どんな結果報告を求めているのか…

「ちょっと待って、
 そんな一人一人倒れて行って全滅するまで傍観する趣味なんて無いよ⁉︎

 君が気を失ってからはスグに私が入ったから彼女らは無事さ。
 疲れたからって…普通に呑気に寝ていると思うよ。」
  
(あああソーデスかぁ、ソンナ気もしてマシタヨー。) 
 と、密かに順応性という名の図太さのレベルアップも欠かしていないアサヒは、
 誰もが持つスキルを発動する。
『時間経過の確認』である。

「って、あれ?
 今、明るいですよね?
 俺、どれくらい寝てたんですか?」

「ああ、大丈夫。
 今は翌日の朝だよ。

 君は一晩ゆっくり寝ていただけだ。
 シュミカ君が面倒臭そうにだけど、
 精一杯治癒してくれたからね…。」

 ギクシャクとして答えるギリアにも理由がある。
 実際の所はシュミカを庇おうとしたアサヒが被弾して気を失い、
 ギリアがその場を瞬時に制圧。

 シュミカが泣きじゃくりながら、
 全力治癒魔法を行使した為にアサヒは長時間の睡眠で今に至り、
 逆に力を使い果たしたシュミカを別室でリアが看護しているのであるが…。
 リアに口止めされ、

 『アイツは単純だから、
  何か聞かれたらそう答えなさいなさいなぁ♪
  シュミカのプライドの為よ、わかるわねぇ?』

 との事での結果であった。

「まぁ、あの場ではみんな頑張っていたし、
 成長も感じたよ!
 先程も言ったけど後は上への繰り返し、
 意識は高い方が良いに決まってるんだから考えて進むのが一番良いよ!
 ははは!

 それはそうとしてお腹が空いてないかい?
 半日以上何も食べてないだろう。」

 そう言われてやっとアサヒは自分が目醒めた理由が、
 身体からのエネルギー供給の要求である事に気づく。

「…あぁ、そう言えば。
 そうですね、お腹…減りました!何だか急に…
 色々安心したからですかね~。」

 元々、朝のトレーニングの日課を終えたギリアは
 アサヒが目覚めていれば朝食に誘おうと戻って来たのである。

「私も軽く体を動かして来て空腹なんだ。
 ここのギルドは下に降りれば食堂も有るから、
 そこで朝食にしようじゃないか♪」
 
「へぇ…、便利ですねぇ。」

「この街は特殊だからねぇ…。
 『閉ざされた王国』と言えば格好は良いが…
 辿り着ける冒険者も限られているし、
 一応ギルドは有っても依頼と言うものが少ないのさ。
 だから色々と纏まっているんだよ。
 じゃ、食事でもしながら以前来た時の話でもしようか?」

 衣服を整え、
 身体に異常の無いことを確認しながら聞いていたアサヒは

「あ、良いですね。
 それ聞きたいです!」

 と、久しぶりに訪れた様に感じる食欲と好奇心を満たす為に
 階下の食堂へ向かったのだが…
 そこに広がる光景は、
 見知った竜人が朝っぱらから飲んだくれて
 地元民に悪絡みする地獄絵図であった。

「さ、さっき通った時には居なかったのに…
 部屋でもずっと飲んでたのかな?
 ははは…。」

 アサヒは無言で歩み寄り、
 有無を言わさずにスパーン!と頭をはたき落とす。

「んな、なぁによもぉ!!

 …あらぁ、アサヒおはよぉ~♪
 元気になったのかしらぁ?」

「ああ…お陰様で『今』、な!
 早朝だぞ…。
 他所に来て地元の方々に迷惑かけるなよ!」

「そんな事ないわよぉ、ねえ?」

 そう言ってリアは同席していた地元民にグラスを掲げる。
 賛同する方々もそれに倣ってグラスをぶつけ合う。

「心配いらんよ、若い人!
 今日は休日じゃてワシらも昨夜から飲みに集まっとっての、
 さっきその姉ちゃんが来たんで同席しとるんじゃ。
 外から来るもんも珍しいからの~。」

「そうそう、
 酒の強い綺麗な姉ちゃん、
 しかも竜人となりゃこっちからお近づきになりたいってもんさぁ♪」
 
(同類どもか…。)

 二人の酔っ払いの若い方はユックリと焦点があったのか、
 ようやく見知った顔に気がついた。

「あれ!?
 ギリアさん!なるほど、アンタの連れか~。
 久しぶりだねぇ!」

 わざわざギルドで飲んでいると言う時点で、
 顔見知りである事に不思議は無くギリアの顔の広さにも納得できる。

「いやぁ、今回は王様からの依頼でね。
 またお世話になりますよ、ははは!」

「ほう、王からの?」
「へぇ、じゃ、あの件だな~。」
「じゃろうなぁ…。」
「いよいよか…。」
「ふふふ、苦労するぞぃ、ギリア殿~。」
「はっはっは、
 今の姫様は面倒臭いぞ~、王城には今日行くのかい?」

 酔っ払い特有のマシンガンにたじろぐギリアは何とか気を立直し、

「あ、ああ。
 そのつもりだけど…姫様がって、
 あの子がどうかしたのかい?
 彼がついていたよね?
 何かあったのかい?」

 二人は顔を見合わせて笑う。

「まあ、行ってみると良かろうて。」
「そうだな、アンタにとっては友人なんだろうけど、
 一応王様だ。
 見舞いの品でも用意する事を進めるよ。」
『わははははは!』

「なぁによもぉ~!
 アタシにわからない話で盛り上がるんじゃ無いわよぉ~!」

 と、何やら盛り上がる中に、
 意味も分からず同じ様に盛り上がって
 グラスをぶつけ合う変な竜人の事など放っておいて…

 出来るだけ離れた席に着き、
 メニューの様なものに目を走らせるが文字が読めないアサヒは思う。

(何で言葉は通じるのに…)

「ん…そこの文字もろくに読めない惨めなダメ男…。
 助けが欲しければ…ひざまづいて懇願するといい。」

 いつの間にか席の向かいで腕を組み、
 邪悪な笑みを浮かべて見下してくるちんちくりんローブに対して
 アサヒは軽いため息を吐くと、
 テーブルの上で人差し指と中指で脚を模してひざまづいて見せた。

「これで良いかい、お嬢様?」

 家族の無事に対する安堵感など微塵も見せる事なく、
 見下したままムフ~~っと満足げな笑みを浮かべるシュミカはそのまま席に着く。

「ん、苦しゅうない…。
 望みを申して見せい…。」

 アサヒはテーブルに両手をついて頭を下げながら…

「では、病み上がりにちょうど良さそうな
 消化に良い物を所望いたします~!」

 スッとメニューに目を通したシュミカは軽く思考して…

「ん、そんじゃ…
 この辺?
 これとこれも良いかも…滋養に良い…。
 どんな物かというと…」

 わかりやすい説明をフムフムと聞きながら選ぶアサヒの席に
 高タンパクの塊がやってきた。

「朝食のメニューは決まったかい?
 シュミカ君もおはよう!
 ゆっくり休めたかな?」

「ん…リアが色々激しくて…
 ゆっくりとは言えないけど…休息は取れた。
 問題ない…よ。」

(…意味深に言うんじゃねぇ!)

 などと心内でツッコミながらも、
 アサヒは思考する…

 『答え』は優しさか罠なのか?と。
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