そして俺は〇〇になりました。

ふとん☆まくら〜れん(F.M.)

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そして、希望と一矢を持ちて。

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 今回最大の脅威であった地竜が瞬殺されはしたが、
 生まれたばかりではあるが人間にとっては十分な脅威となり得る幼生体や、
 それの元になる卵の駆除など兵士達の仕事は続いている。

「やれやれ…戦闘はやっぱり適材適所だねぇ…。
 あの子の精霊力は桁違いだ。
 あんなの食らったら流石の私でも吹っ飛んじゃうよ…。
 それより大丈夫かい?君達。」

(吹き飛びはしないんですね…。)

 などと様子を見に駆け寄って来たギリアに対しての軽口も頭には浮かんだが…
 小さな子供が消化されず遺った衣類と、
 どれが誰のなのか判別不能の骨肉片を抱き締めて慟哭する光景を前に、
 微塵も口角を上げる気にはなれなかった。

 しかし、そんな状況をもぶち壊す仲間達…。
 本当に仲間達としておいて良いものかどうか…?

「あああアサヒ!
 ちょっとアサヒぃ~!
 シュミカがぁ~!シュミカが変なのよぅ~!」

(心配するな、お前らはずっと変だ。)

 アサヒは口角を上げるどころか爆笑を堪えているらしいマイファミリーを、
 地竜の道連れにしてやろうかとリアの胸の中にそのまま押し込む。

「んぶぅ~~!」

「お前、いつから知ってた⁉︎
 ずっと一緒にいた立神零也は何だったんだ⁉︎」

 驚いてキョロキョロ辺りを見渡すリア。

「レイヤ様⁉︎
 レイヤ様に会ったのぉ~?
 ずるいじゃない~!」

「お前も会っただろうが!
 俺が休んでた部屋に居て、
 お前が『寒々しい』奴って言ってた男だよ!」

 怪訝そうな顔のリア。

「なぁにぃ~?
 …アナタずっと独りだったじゃない。
 なんかブツブツ言ってたけどぉ…きゃあ!」

 堪えきれなくなったシュミカがリアの胸の中で吹き出した。

「んぶぁははは!
 桁違いはレイヤの霊力も同じ…。
 意思を持ったままゴーストになってあの部屋に居たレイヤは神職の僕か、
 取り憑かれてたアナタにしか見えたりしない…。
 ぶっ!ひひひぃ~~!
 ま、まんまと…まんまと引っ掛かった愚かな男!
 ヒィ~、ヒィ~…」

(ちぃっくしょう!) 

 流石のリアも多少の大筋を感じ取れた様である。

「あぁ…
 半裸のアナタを見たから…何かヒヤッとした嫌悪感は感じたけどぉ。
 霊体が居たのねぇ~?
 嫌だわぁ……
 え⁉︎
 あれ、レイヤ様だったの?
 死んだの⁉︎
 じゃあ、あの続編はもう読めないのぉ~⁉︎」

 推しの死を知り今更に慌て始めた、
 霊体を湿気の様にしか感じない竜人様の関心はその程度である様だ。
 にわかファンからすれば会った事も無い本人より、
 作品の続きの方が大切なのは勿論のことである。

 それよりも、スッと流していた一言…。

「ちょっと待てシュミカ、
 俺が取り憑かれてたって何だよ⁉︎」 

 呼吸を整えたシュミカは、
 いつもの自作自演無表情三白眼不思議少女顔を再構築してリアの膝を枕にする。

「城に着いた辺りから僕には…美しい光が見えてたの。
 亡霊が生命力を奪い取る時に見える光はとても美しい!
 段々それがアナタに向かって行って…
 あ、なんか拾ったなコイツとは思ってた。
 で、散歩中の公園で精霊さんがざわついてたから聞いてみて…
 『これは乗っかって愉しむべき案件』だと理解した。
 …ぶふぅ!」

「俺の体調不良は全部アイツの仕業かぁ!」

「ん、本体を見た時の輝きは正に眼福…
 とても良いものを見せてもらった、
 褒めて遣わす、サクリファイス!」

 殺意ゲージが振り切れそうなアサヒであったが…
 それ以上に重くのしかかる殺気を感じた一同はそちらへ目を向ける。
 チラッと視界に入ったギリアは笑顔ではあるが、
 冷や汗をかき、その手はゆっくりと剣を構える姿勢を取ろうとしていた。

「…楽しそうだねぇ、お客人のお兄ちゃん達…。
 ボクのお兄ちゃんが死んじゃったって言うのに…、
 そんなに嬉しい事なのかなぁ…?
 じゃあもっと楽しくしちゃっても良いよねぇ!」

 血と涙でグシャグシャな爆発寸前のエイナの顔にペシっ!
 と、平常心でリアの膝枕に身を委ねたままのシュミカが何かを投げつけた。

「…これ、お兄ちゃんと一緒に作ったお花の髪飾り…。」

 少しだけ冷や汗をかいているシュミカの小芝居が始まるのだが、
 後に聞いた所…
 『こんな事もあるかもと色々刷り込んでおきましたので、
  いざとなったら使ってみてください♪』と、
 あの時、部屋から出て会議に戻る間にコッソリ教わった情報の元、
 城内に隠されたアイテムをかき集めていたらしい…。 
 扉を開けっぱなしにしていたのも思念の伝達の精度を高める為だとか…。
 

「ん、エイナ。
 お兄ちゃんは死んだよ。
 でも、知ってるでしょ?あの規格外の霊力…。
 まだいるよ、どっかに…!」

(どっかって⁉︎)

「なんでこれを?」

「ん、霊体と話せる僕にレイヤが託してくれたの…
 『これを見せればあの子はわかってくれる。』
 さっきまでいたんだよ…。
 媒体になってたアサヒもずっと見てた。」

 流石にテンパったのか、
 アサヒへキラーパス!
  
「あ…ああぁ、
 俺はまだ本当に生きてる人間だって信じてるくらいハッキリとそこに居たよ。
 き、君をとても心配してた(と…思う)。」

 だら~ん…と横たわったままのシュミカに勢いよく縋り付くエイナ。

「どこ!どこにいるの⁉︎
 お姉ちゃん!精霊さん!声を…聴かせてよ…。」

 流石にふざけている場合では無いと観念したシュミカは、
 起き上がってもう一度だけリアの胸を堪能して一呼吸を置く。

(いや、いらんだろう…その工程は。)

「ん…もうここには居ないけど、伝言を預かっている。
 …少し長いけど、聞く?」

 少し嫌そうな顔でチラッと見たエイナの子犬のような目に、
 流石のシュミカも断念した様であった。

「ん~…、
 まず、
 意思を持ったまま霊体として存在する事が僕の知る限り有り得ない。
 そこの活躍の場もなくカビてカピカピになる事を運命づけられたボロ雑巾…
 そんなアサヒと同じ世界から来たとは思えないレイヤは言ったよ。

 『メイド長…ルナナラさんの事は許してあげて欲しい。
  彼女が君の為を思ってワタシに反発していたのは正しい。
  悪かったのは悪ノリし過ぎたコチラだ。
  
  約束していたワタシとの冒険は叶わないけど、
  彼らと世界を見てきてごらん!』って。」

(長いのは俺へのディスりだけだったなぁ!)

「ん…あと、
 『アサヒはワタシが絶望していた時に掬い上げてくれた仲間達の中の一人。
  どうか助けてあげて欲しい。
  きっといつかまた会えるさぁ~さぁ~…ぁ~…』
 って言いながら風に飛ばされて行った。」

(嘘だ!
 絶対にまだそこらに隠れているに違いない!)

「本当なの?
 死んじゃったのに…また会えるの?」

 子供相手となると多少なりとも罪悪感が発動するらしいシュミカは目を泳がせて取り繕う。

「ん…ん~、
 そ、それはエイナ次第?
 伝言は伝えた。
 あとは君がどうするか…だね。」

「え、じゃあ行くよ!
 連れてってよ♪」

 子供ながらの判断力!即答であった。
 とはいえ、一国の王子様である。

 『…ちょっと後でね?』
 
 という空気を残してひとまずは残務処理を片付けて後ほどゆっくり…と、なったのであった。

 やがて一通りのアレコレは終了した。
 仮に逃げ出した幼生体がいたとしても、
 母体を離れて生き延びれるリミットは越えた。
 坑道のダンジョン化は解除され、元の姿に戻る。

 元気を取り戻した…とまではいかないが、
 『絶望』よりも『不確かな希望』を選んだエイナはお迎えのスチラル達に保護されて行った。

「なあシュミカ…本当の所レイヤさんは今どこに隠れてるんだ?」

「ん?
 言ったでしょ…もうとっくに居ないよ…
 アナタにエイナを押し付けてネタ探しの旅に出た。
 エイナは好きだけどこの国は窮屈だったんだって…。

 あと、アナタにも伝言を預かっている…
 『ご馳走様でした♪』
 …てさ。」

「ちっくしょう!
 逃げやがったな、あの野郎!
 見つけ出して塩ぶつけて成仏させてやる!」

 そこにいて話を聞いているものの…
 理解が追い付かない竜人のお姉さんが割って入る。 

「何よ何よ~もぉ…
 アタシにもわかる様に話してよぉ~!
 今回ずっと除け者じゃない…。」

「…それは君が今回ずっと呑んだくれてたからだよね…。」

 とりあえず自分のするべき仕事を終えたギリアも合流した。

「やる事があるなら言ってくれれば、
 ちゃんとやるわよぉ~…
 竜人は『静か動』じゃなくて『酔か動』なのよぉ!」

「…お、覚えておくよ。」

 ツッコむと面倒だと判断したギリアは話を変える。
 色々わかってきたようだ。

「とりあえず今回はお疲れ様!
 付き合わせてしまって悪かったね…
 でも強敵との戦闘を見てもらえただけでも勉強になったと思うよ!
 いざとなったら、
 色々発動して君達を守り切ることだけは出来たけど…
 アレを倒しきるのは私には無理だった。
 あの子が必要だったのは…まぁ、そう言う事だね。
 さっきも言ったけど、適材適所ってことさ。

 みんな…無事でいてくれて、本当にありがとう!」

 全てわかっていたからこそ、
 実は一番緊張していたのかも知れない。
 今、本当にその緊張の糸が切れたシュミカは、
 顔から出る液体を全て流しながら告白する。

「んん~!
 ご、怖かったあああ~~~!」

 リアに身体を預けて泣くシュミカ、
 それをなだめるギリア。
 
 そして、
 それを見ながらアサヒは嬉しく思う。

 『本当の家族みたいだな』

 …と。
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