そして俺は〇〇になりました。

ふとん☆まくら〜れん(F.M.)

文字の大きさ
33 / 45

そして、想いのレシピを胸に。その2

しおりを挟む
 眼前に酒と食べ物が揃い、
 リアがモグモグゴクゴクし始めた為…
 ようやくギリアは発言を許された。 

「とにかく今度こそ順を追って話そうか。
 確かに私はギルドの『精霊騎士団』の団長を任された事はある。
 しかし、
 それはかなり前の、
 とある魔王協会が起こした戦争の時の一度きりだ。
 そもそも『精霊騎士団』なんてのは存在しないんだよ。
 騎士団として出向きはしたが、
 呼称はその時の流れでそう呼ばれただけだよ。
 対立する精霊同士がそれぞれに肩入れしちゃったもんだから…。」

 よほど酷い目にあったのか、
 ギリアは思い出してひどく首を振る。

「大きな戦乱で冒険者達が個々で挑んでもどうしようもない時に、
 ギルド内で上位ランクにいる者達を招集して、
 その都度編成される部隊に過ぎないんだ。
 それが終われば即解散。
 各々が元通りの冒険者に戻って依頼をこなして日常に帰るんだよ。
 特別な権限が与えられたりする様な物じゃない。」

「そういえば…
 ギリアは前回のレイヴンの時は参加してなかった様だね。」

 ヘラヘラと笑いながらディルが煽る。

「招集どころか別の仕事を押し付けられたからね!
 君の所の件だよ!」

(レイヴン…団長…そうだ、
 ティルスガルのママが言っていた。)

「ああ、それ!
 愚カディスがキャラバンから居なくなってくれたアレよね、
 シュミカ。」

「ん、
 僕のリアに纏わりつく害獣…鬱陶しかったね…。」

 ウンウンと飲み食いが止まらない二人にディルが反応する。

「カディス…カディス=レイヴン第六皇子かい!?
 そうか、君は竜人だから同郷か…。」

 そう聞かれてウンザリした様にリアは言う。

「同郷どころか同級生よぉ…。
 旅先まで嗅ぎつけて追いかけてくるような変質者よぉ…。」

「ん…ちなみにそこのペットが来る前の話…ね。」

「ペット言うな。
 …俺の知らない先輩かぁ…そりゃ沢山居るよな…。」

 当然お互いが出会うまでにはそれぞれの人生が有り、
 出会いと別れを繰り返してきて今に至る訳で…
 それでもアサヒは少しだけピリッとした感情を抱いてしまう。

「まぁまぁ…
 それで、最近また東の方で複数の魔王が結託して何か始めたらしいんだよ。
 奴らにとっては祭り気分なんだろうが、
 確実に戦争になるだろうから…
 せっかく事前に情報が知れたなら、
 早く行動して出来る限り被害を抑えて欲しいって話なんだよ。
 現状考え得る最大戦力で出鼻をへし折って来いってね…。」

 と、深くため息を吐くギリア。
 それに対して気持ちを汲んだのか、

「とは言え、
 複数の魔王軍となると危険だろうね。
 そう言う事さ。
 多少は時間がかかるだろうが、
 ギリアなら問題無く戻ってくるさ!」

 ディルは軽く笑って両手を広げて見せ、
 ギリアはその気持ちに答える。

「…何だか不吉だな…。
 勝手に変なフラグを立てないでくれるかい⁉︎」

 ままならない現状に二人は苦笑い。

「と、まぁ…そんな訳だから、
 流石に断れないし連れて行く事も出来ないんだよ…。」

 アサヒも流石に戦争となると着いて行きたくはない。
 もちろん危険な事が第一だが、
 更に足まで引っ張ってしまうなんて冗談じゃ無い。

「なぁ、
 事情も事情みたいだし…
 仕方の無い事なんじゃないのか?
 俺たちが首を突込める度を越してる。」

 と、
 アサヒがリア達に目を移すと…
 モグモグしていた。

「あぁ、そぉねぇ~。
 良いんじゃないぃ?」

(軽い!怖い!)

「ん、それは仕方がない。
 頑張ってくると良い。」

 ギリアは呆気に取られて呆然としている。

「お腹いっぱいだからアタシ達もう寝るわぁ…。
 行きましょ、シュミカ~♪」

「ん~、
 待ってぇ~。」

 そう言い残すとサッサと立ち上がって二人は部屋を出ていった。

「…アサヒ君、
 これは…どういう反応だい?
 信用してくれてるのかな…?
 嫌われちゃったのかな…?」

 オタオタするギリアに耳を塞いで身を低くしながらアサヒは答える。

「…すぐにわかりますよ。」

 直後にドスン!と城が揺れた。


「これは…何処かの壁がやられたねぇ…。」
 
 落ち着き払って状況を察するディルに対して、
 顔が真っ青になったギリアはとりあえず言う…。

「…弁償は私がするよ。」

 それに呆れたディルは…

「当然だろう。
 それよりも君は自分の心の壁を取り払いたまえ。」

 何も言い返せないままギリアは右手で顔を覆い、
 深い深い溜息に任せてソファに身体を預けて天を仰いだ。

 そのままその場は解散となり、
 それぞれ用意された部屋で朝を迎える。


 翌日…
 気まずい中の買い出しである。
 もうこの街の雰囲気に怯むどころではなかった。

 アサヒもそんな気はしていたが、
 リアは拗ねて部屋に篭って同行していない。
 アサヒとシュミカは一応ギリアに着いて来はしたが…
 今は街中のベンチでお留守番である。

「なぁシュミカ…リア、どうだった?」

 目の下に隈を深く彫った顔を真っ赤にしてシュミカはアサヒを突き飛ばす。

「んななな…何を聞く!」

「…お前ら二人の乳繰り合いの事じゃねぇよ!
 リア…落ち込んでるんじゃ無いのか?」

 本気か冗談かギリギリのリアクションだが、
 そこはそれ。

「…ん、
 多分?大丈夫…
 でも勿論さみしいよ。
 リアも…僕も。
 でも戦士の邪魔をする程、
 野暮じゃ…ないの。。」

 …気持ちで世を狂わせる様な事が出来るのは余程の覚悟である。
 リアが何も言わずに引き下がったのは、
 それ程の状況である事を理解したからだと言う事だ。

「…何か出来る事はあるか?」

「ん。
 今のアナタには無い。」

 バッサリである!
 逆に気を使われて曖昧な事を言われても困るので…
 理解ある判断だとアサヒは身を引く事にした。

「…そうだな。
 リアは今ここに居ないって事か。」

「…ん。
 わかればよろしい。
 賢くなってきたから、
 そろそろ『お手』とか『ちんちん』とか覚える?」

 普段ならムカつくが、
 今のシュミカの心情を考えるとアサヒは…
 ギリギリ笑えないラインの返答を探してケアするしかなかった。

「俺はペットじゃねぇし!
 それを喜ぶ姫様にもメイドさんにもなれないよ。」

 とはいえ今は影を潜めてはいるが、
 そもそも一番ギリアに執着していたのはシュミカのハズである。
 
「…まぁ、
 俺が一番格下なのは確かだけどな。」

 『やっと認めたな?』と、
 何度と繰り返してきた嫌な顔をしてシュミカはニヤける。
 が、今回は微妙だ。

「ん…僕はね、
 本当の家族を探しているの…。
 血のつながった…一族の末裔でも良い。
 本当の『あんちゃ』を…」  

 シュミカが少しだけ開きかけた心の扉を、
 『あ!なんか開いてたんで閉めておきましたよ!』と…
 言わんばかりの勢いで空気を打ち壊す男。
 その名は頬を赤らめたギリア。

「お待たせしたね!
 ちょっと…君達に聞きたいんだよ!」

 …なんか時間が掛かると思ってはいたが、
 これはアレだな?…と、
 待ちくたびれていた二人は目を合わす。

「これ、リア君に似合うとは思わないかい?」

 持って来たと言うことは、
 もうすでに購入してしまったのであろう…
 それらはシュミカに言わせると、
 それなりに貴重な魔道具ではあるのだが…却下!

「えっと…
 買い出しに着いて行ってない俺が言うのもアレですが…」

「あ、
 道中の買い出しかい?
 そんな物はとうに終わっているよ!
 食糧なんかは森を抜けた村で調達した方が鮮度はいいし…
 君達はティルスガルだろう?
 近いもんだ。」

 勢いよく別れをアピールしてくる…
 本当に寂しさを感じてくれているのがわかる。
 強さ偉大さ故の孤独があったのだろうか?

 そこまでの思慮は至らないが、
 その気持ちを嬉しく感じた二人は…
 
 『不器用な父親が愛する相手への贈り物を選ぶ。』

 それに付き合うと言う、
 なんとも心温まる一日を押し付けられた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

無能はいらないと追放された俺、配信始めました。神の使徒に覚醒し最強になったのでダンジョン配信で超人気配信者に!王女様も信者になってるようです

やのもと しん
ファンタジー
「カイリ、今日からもう来なくていいから」  ある日突然パーティーから追放された俺――カイリは途方に暮れていた。日本から異世界に転移させられて一年。追放された回数はもう五回になる。  あてもなく歩いていると、追放してきたパーティーのメンバーだった女の子、アリシアが付いて行きたいと申し出てきた。  元々パーティーに不満を持っていたアリシアと共に宿に泊まるも、積極的に誘惑してきて……  更に宿から出ると姿を隠した少女と出会い、その子も一緒に行動することに。元王女様で今は国に追われる身になった、ナナを助けようとカイリ達は追手から逃げる。  追いつめられたところでカイリの中にある「神の使徒」の力が覚醒――無能力から世界最強に! 「――わたし、あなたに運命を感じました!」  ナナが再び王女の座に返り咲くため、カイリは冒険者として名を上げる。「厄災」と呼ばれる魔物も、王国の兵士も、カイリを追放したパーティーも全員相手になりません ※他サイトでも投稿しています

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

処理中です...