そして俺は〇〇になりました。

ふとん☆まくら〜れん(F.M.)

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そして、思い出は黒い絨毯の下に…。その1

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 大きい筋肉と、
 小さい姫王子が何だか競い合ってくれたおかげで、
 高難度クエストの森の帰り道はスンナリであった。

「エイナ君、
 アサヒ君も強くなろうとしてるんだから…
 たまには任せてあげないとダメだぞ~!」

 森を抜けて村へ向かう道中、
 先輩ヅラをひけらかすギリア。

「いえいえ!
 お構いなく!」

 その度に気を配るアサヒ…
 それに手を引かれるエイナ。

「わかったよ~。
 でもアサヒ~、
 変に鍛えると無駄な肉が付くから気をつけてね♪」

(…いちいちギスギスしてるな、
 この二人は…。)

「ちょっと待ってぇ…。
 あの煙…村の方よねぇ⁉︎」

 確かに目的地の方角に近い。
 その遠方には確かに不穏な煙が上がっている。

「聞こえるわぁ!
 アタシの愛おしい子達の悲鳴がぁ!
 ギリア!
 あんたアタシとシュミカをあの方向に投げなさいなぁ!
 飛距離と着地は何とかするからぁ!早くぅ!」

「な、投げろって…どうやって…」

「手を出しなさい!」

 サッとシュミカを肩車したリアはその手にまたがろうとする。

「い…いやいや!
 やめなさい!はしたない!」

 アサヒはこんな時の移動方法を知っている。

「さ、みんなギリアさんに掴まって。
 姫様は俺の背中に。」

 少しムッとしながらエイナはアサヒの背中に覆いかぶさる。

「ボクの事はエイナって呼んでよ~。」
「…慣れる様に頑張るよ、エイナ。
 さ、ぎゅってして!」

 全員分の体重を喜びと共に確認したギリアは全力で飛び上がる!

「リア君、方角を指し示して!
 精霊さん、彼女が指し示す地へ!」

 ブン!っと加速してあっという間に村へと辿り着くが、
 ギリアは頑張り過ぎて全てを精霊さんに持っていかれた。
 暫くは動けそうにない。

「ぷふ♪
 ギリアおじちゃんは体力ないなぁ~。
 膝枕したげよっか?」

 運んでもらったくせにエイナは煽る煽る! 

「それどころじゃないよ、
 ほとんど壊滅してるじゃないか…。」

 アサヒは…
 ほんの数日前に見たのとは全く違う景色に恐怖を覚えた。

「ああああ~!
 あの建物…燃えてるぅ~…。」

 膝から崩れ落ちたリアが言うのは彼女の宝物庫…
 として借りていた小屋。
 火は落ち着いているが、
 完全に焼け落ちていた。

「んん~!
 精霊さん~、ごめんねぇ~!」

 どうやらシュミカが使役する精霊の結界は、
 人からは守れるが火には無意味だった様だ。

 グッタリしているギリアの襟首を掴んで揺さぶるリア。

「だぁ~かぁ~らぁ!
 アタシは残るって言ったでしょぉ~~!!
 レイヤ様が死んだんだからもう手に入らないのよぉ~⁉︎」

「い、いやいや…謝るから…やめ…やめて…!」
 
 その時…

「おい、アンタら!
 この村のモンか⁉︎
 それとも盗賊か火事場泥棒か?」

 いかにも冒険者という感じの男である。

「どちらにしても敵意は無い。
 何をしているか聞いてるだけだ。」

 両手を挙げて近づいてくるその男は、
 いつでもどんな体勢からでも腰の剣を抜けるのだろう。
 ひょっとしたらその剣すら囮かも知れない。

 アサヒとシュミカは小声で相談を始める。

「おい~…なんか来たぞ?」

「ん…盗賊にしては良い装備…。」

「ひひ♪
 ちょっと脅かしちゃおう!」

 相手は余裕を感じさせながら、
 アサヒ達と少し距離を置いて立ち止まる。

「ん…子供連れ?
 旅人…巡礼者かい?」

 いつの間にか足元にいるエイナに気づいて男は少したじろぐ。
 それまでその子供の気配に気づかなかったからだ。
 強者の嗅覚がそうさせる…。

「あ、あぁ。
 急に声をかけて悪かったね。
 まずはこちらから名乗ろう。」

「うるっさいわねぇ!」
 
 バヒュン!っと、
 男の頬をかすめてリアが投げつけた小石は…
 男の後方でまだ形を保っていた小屋を半壊させた。

「…降参します。
 話を聞いていただけませんか?」

 その小屋の陰に隠れていた男の仲間達は、
 同じ様に両手を挙げて出てくる。

 ローブを纏った女性と、
 弓から離した矢を背に戻し…
 敵意の無さをアピールする戦士の方が似合いそうな中年男性。

「我々はギルドのクエストで訪れただけの者だ。
 被害者達の保護も請け負っている為、
 君達が何者か確認する必要が…
 ギリア団長⁉︎」

 リアに頭を揺さぶられてグッタリしている筋肉の塊を見て、
 中年の弓使いは驚きを露にする。

「オジちゃん、この肉ダルマを知ってるの?」

 気配無く近寄り、
 いつの間にか足元にいたエイナに弓使いは更なる恐怖を覚えた。

「…肉ダルマて…。
 レ、レジェンドだよ…ギルドの上位で知らない者は居ない。
 大きな騒動が無い時は姿を眩ませているから…
 こんな所で何を?」

「ま…魔力体力切れで脳を揺さぶられて倒れてるんだよ…
 君は…あぁ、ピッピか…。」

 それを聞いて横の女性と、
 リアの前に立ちすくむ男は吹き出す。

「その名で呼ばんでくださいよ!」

 お互いに敵では無いことを確認出来た一同は、
 森の中の避難所へと移動する。

 そこではアサヒ達が見覚えの有る男が縛られている。
 たしか、この村の教会の神父だか神官だかだったハズだ。

 半狂乱で
 『悪魔を呼び出してしまった』だの
 『娘が拐われた』だの騒いでいる。

「『絶対禁呪』の蘇生を発動して失敗した男です。
 他の協力させられていた者は情状酌量…というか、 
 状況的に断る術が無かったと思われるので、
 後日ギルドが裁定を下すでしょう。

 今は生存者の治療にあてさせています。」

 アサヒ達がこの村に戻ってきて、
 最初に声を掛けてきた男はリリリー=コンキリシャ。
 二度とその姓を確認する必要の無い程に個性的な名前で有る。

「娘さんが魔物に襲われて命を落として…との事です。
 気持ちは分かるが成功なんてするはずない。
 悪魔とやらも、
 そこらのタチの悪い精霊の仕業でしょうね…。」

 アサヒはシュミカに訪ねる。

「蘇生なんて出来るの?」

「ん…不可能ではない。
 でも、代償が割に合わなさ過ぎる…。
 一国の国王だとしても、
 国民全員の生贄じゃ済まないくらい?
 あと、精霊さん達に好かれてないと騙されて終わり。
 こんな小さな村で出来る事じゃない…。」

 他のパーティの冒険者達に男を連れて行かせると、
 リリリーは改めて訪ねる。

「所でギリア様はなぜこの村に?」 

「私達はギルドの依頼で数日程『森の奥』に居たんだ。
 こちらで何が起きたのかを詳しく教えて欲しい。
 例の魔王関係かい?」

 何とか体力が戻って来たギリアは、
 取り敢えずの情報を求めた。

「例の魔王?
 …すみません、どの魔王の話ですか?」

 それを聞いて改めて事の大きさに気づいたらしいギリアは、
 溜め息をついて質問を変える。

「…徒党を組んでいる可能性は?」

 それに答えるのは先程『ピッピ』と呼ばれた弓使いの男、
 ピーニゲレ=ピイラギィネ。
 このパーティのリーダーである。

「奴らは脅威ですが、それぞれが自分本位です。
 その可能性は今の所は無いと思いますが…。
 兆候でも?」

「…そうだね、
 それでわざわざ私にまで話が来たんだろうね。
 ここで詳しく話す訳にはいかない案件があるんだよ。」

 そこでもう一人の女性魔道士のササ=ギュルコーナが、
 話題の方向修正に入る。

「ギリア様、
 今回の話は多分それとは別だと思います。
 魔王絡みでリーダーだけが駆り出されるのならわかりますが…
 自分達はティルスガルで依頼を受けて来ただけです。

 最近山岳地帯の上で陣取っていた強力な魔物が、
 急に逃げるように下山して来て街や村を襲ってるんですよ。
 我々が受けた依頼は、
 複数のパーティで連携しての『魔物の討伐』『襲われた住民の保護』
 だけです。」

 ギリアは少し考えて答える。

「それもそうか…。
 私が向かう様に言われたのは遥か東の大陸だ…。
 そういえばピッピは呼ばれてないのかい?」

 それが初耳だったピッピは少し傷ついた様だが…

「ピッピ言わんで下さい…
 『見習い勇者』のパーティリーダーなんてやらせて貰っとりますが…
 自分なんてまだまだ。
 どうせグランドマスター案件なんでしょう?
 邪魔にしかなりゃしませんよ。」 

 以外そうな顔のギリア。

「そうかい?
 君には以前かなり助けられたし…
 アテにしていたんだけれど…。」

 その言葉に照れたのか少し落ち込んだのか、
 ピッピは苦笑いを浮かべる。

「『精霊騎士団長』様にそう言っていただけただけでも自慢できますよ。」

「だからそんな『団』は無いよ!」

「…言わせてくださいよ。
 みんな『あの時』貴方と戦えた事を誇りにしてるんです。
 かっこいい名前くらい付けて気取ったって良いでしょう?」

 やれやれそういうことか…と、
 ようやくギリアは理解した。
 
「…まぁ、確かにかっこいい名前ではあるね。」


 …ちなみにこのピッピをリーダーとした三人のパーティは、
 いつか語られるかも知れないもう一つの旅の顔となる。
 
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