そして俺は〇〇になりました。

ふとん☆まくら〜れん(F.M.)

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そして、竜人カディスは語る。 その1

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「ノ~イ~!そろそろ時間~~!」

 いつもの公園でのミニライブ。
 固定客も増えて来た事もあり…
 トークと曲の時間が半々になって来ている。
 ノイ本人はどちらも大切にしていた。

「え~?
 もうそんなっすか⁉︎
 残念っすね~…
 じゃあ続きは『ゴムール』での本格ライブでいかがっすか?」

 …客びきも上手くなっていた。

 満足した客はそれぞれ散り、
 満足していない客は常連に先導されて次の宴へ。
 まだ娯楽の少ないこの世界での文化はこうして連なってゆく。

 いつもの様に片付けを始めるノーイラ=タスツに、
 ルキリ=スターニーは初めて声を掛けた。

「今日はいつもの曲はやってくれないのかい?」

 いつも背後に竜人二人を従えて遠くから見ていたヤバそうな女性…。

 ノイは身構えながら心の中で、
 この街でパフォーマンスする上での違法やマナー違反について… 
 必至に頭の中で検索する。

「あ!
 すまないね!怖がらせちゃったかい?
 ルキリ達は憲兵とかじゃ無いよ!
 ただの君のファンさ!

 いつもやってた最後の曲が好きでね!
 なんてゆーか…
 いつかの楽しかった『何か』がさぁ!
 グワ~ってね!あはははは♪
 なるんだよ~!」

 自分を讃えてくれるのは嬉しいが…後方の竜人を見る限り、
 訳ありの人物であると悟ったノイは微妙に目線を合わせずに対応する。

「あ、ありがとっす~!
 も、もし時間があるならこの後ライブがあるんでぇ~…」

 営業が身についてしまったノイは面倒臭そうな相手も誘ってしまう。
 
 それに対して乗り気になってしまったルキリは…

「なあなあ、お前達!
 こっちの『天使教』は白っぽかったし、
 あっちの『天魔会』はカディス様がやってくれたんじゃ無いか?
 一晩くらい遊んでもダメなのかい~?」

「ダメです!
 アナタは職務中の軍属扱いなので、
 ここまでの時間だけで満足してくださいよ」
「んもぉ!
 カディス様が帰って来たら遊べますから~!
 店の名前を聞いとく程度にしてください!
 怒られますよ⁉︎」

 ブスッと頬を膨らませたルキリはため息をつく。

「まぁ…怒られるのは嫌だねぇ…。
 じゃあ君!
 店を教えておくれよ。
 店でも毎日歌っているのかい?」

 がっしりと肩を掴まれたノイは、
 ようやくルキリの顔を直視する。
 脳内の記憶が『思い出せ!』と告げているのがわかる。

「…あ。
 お姉さん…ルキリお姉さんっすよね⁉︎
 自分は成長したんで変わってるっすけど!
 昔キャラバンで自分らの街に来てくれて~!!
 自分は忘れて無いっすよ!」

 その様な偶然というか…
 奇跡の再会など予想もしていなかった二人の竜人は周章狼狽する。

 一瞬カチンと強張ったルキリは頭を抱えて悶絶し始めた。

「ちょちょちょ!
 何っすか⁉︎」

 ノイやニリシュを始め、突然の状況に周囲はざわめき立つ…。

「精霊さん!
 ルキリ=スターニーが!」
「お願いです、
 安息をお与え下さい!」

 二人の竜人、ダトスとガトスが魔力を精霊に献上する。
 暫くするとルキリは静かに眠った。

「申し訳ないが…
 君の店に病人を寝かせる個室とかはあるかな?」
「まさかこんな場所で『鍵』が一つ壊れるとは…」
 
 頭を抱える二人は迂闊な自分達を恥じた。
 事情を知った上でこの要人を任されて、
 日々同行していたのに…
 『懐かしく感じる曲』から何故遠ざけなかったのか…と。
 
 ついでに、
 店…意外と遠いな!
 …とも思った。



 場所は変わり、
 カディスの簡易砦である。

 少しだけ気持ちを落ち着かせたアサヒ達は、
 改めて事の真相を尋ねるべくカディスの執務室となるテントにいる。

「では改めて順を追って話す。
 『天使教』は知っておるよな?」

 アサヒはよく知らないが、
 存在だけは知っていた。

「前回の魔王協会との戦争に多少関わっていた様でな…。
 それぞれの勢力は大きいし一枚岩ではない。
 天使教の過激派側の勢力が魔王軍とそれぞれ手を組んで動く組織がある。
 安直な命名ではあるが『天魔会』、
 簡単に言うと大局に目を向ける事の出来ない、
 知能の無いテロリストの集団だ。」

 いきなりの情報量に固まる三人。
 ギリアはもちろん理解している。

「順を追って話しなさいなぁ!」
 
 少しだけだが元に戻り掛けているリアに周囲は安堵する。

「そ、そうだな…
 アサヒ殿はこの世界の宗教について感じることはあるかい?」

 アサヒは少しだけ言葉遣いを考えるが、
 本人の宗教観は変わらない。

「そうですね…
 それぞれの人がそれぞれに何かを信じるのはいいんじゃ無いかと…。」

「ではアサヒ殿が信じる何かとは?」

 アサヒは即答できる。

「そりゃ自分の中の正義でしょ?」

 深くため息をついて…
 カディスは強くうなづく。

「その通りだ。
 問題はそこにある。
 
 『自分の中の正義』…世界にとっては正しいと言い切れるか?」  

 アサヒは少し考え込む…。
 
「我らは精霊を『友人』として共存する考えであり、
 お互いにそうして来ていた。

 『天使教』は精霊を偉大なるものとして崇めて『神』とする。

 問題は『客人』として精霊が招き入れている異世界の者達だ。
 我々は異文化を受け入れて楽しんで入るが…
 天使教の中には、
 神とする精霊をこの世界から奪う『害悪』だと信じている派閥もある。

 それらが魔王協会と手を組んで客人狩りをするのが『天魔会』だ。

 その根城の一つ。
 ここを制圧するのが我らの任務で、
 それはすでに終えたところだ。
 我の魔力を持ってしてみれば雑魚どもは逃げ散らかす様であったからな!」

 どうやら近隣の被害はそのせいである。
 という事は、
 ギルドはソレも踏まえた上で容認したという事になる。

「な…なぁにぃ…?
 じゃあここから魔物達が逃げ出したのはぁ…
 アンタのせいだったのぉ⁉︎
 お、おかげでアタシのお宝がぁ~!」
 
 リアはカディスの首を締め上げる。

「ちょ…やめ…
 わ、我…死んじゃう…!」

 ソレを見てアサヒは思う。

(あ、少し元気になった…。)

 そんなアサヒは状況を人ごとの様に見ており…
 救ってくれた恩人達の死をまだ理解出来ずにいた。
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