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12 血

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「血を、血を与えてください!!」

俺は部屋に来た医師に頼み込んだ。



「もう亡くなりました。血は必要ありません。」


「でも、今さっき……」



「必要ありません。」



着々と何かの準備を始めている。もう、死んだのか。でも、まだ諦めきれなかった。

「絶対にそれは違うよ!」


自分の手首を爪で引っ掻いた。

白く皮膚が剥けてヒリヒリした。


「何やってるんですか」

看護師が何だ何だと駆けつけて来ていた。



「俺はコイツに血を分けるんだ!!」


引っ掻いていくと皮膚は剥がれて、次は白かった。


「クッ!!痛いっ!」


血が出てきた。


痛みを堪えながら蜃気の口の上に手首をのせる。


「お願いだあ!!生き返ってくれよ!!」



ポタっと自分の血が落ちるのを感じた。




やっと血が垂れたと安心する。



医師たちがコイツは精神異常者だとか言っているのが聞こえる。


この際そんなことはどうでも良い。



ただこの血で人が生き返るなら、、、それが人間じゃ無くたって良い。



わかるよ無駄だって。蜃気がさっき喋ったのは死んでからだ。ファンタジーでもいいから信じたい。蜃気が吸血鬼で、血があればまた復活するって。


小さい頃、映画で吸血鬼をやってた。じいちゃんは吸血鬼は本当にいると言って笑ってた。
そんなの嘘だという事は流石に分かる。
でも今は、宇宙人がいるんだから吸血鬼もいる筈だと思いたい。


「田中は居なくなった。お前も死ぬのかよ。お前が居なければこんなことにはならなかったんだふざけんじゃねーよ……」






「もう、やけくそなんだよ!!」




コンコン



「蜃気!生き返ったのか!?」


蜃気が咳をした。




医師たちが驚いているのを感じた。




ガブッッ!!


蜃気が俺の手首に噛み付いてきた。


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