地元の怪物はどうやらガチでヤバいらしい

２６ 化け物

その影はどうやら男の仲間らしい。
そう言えば男も同じような鳴き声をしていた。



コイツらはまともな人間じゃ無い。




俺の方にその影がやって来た。




ガッ！！




柱をその影が引っ掻く。
俺を縛っている縄が切れて、解けた。


「ハハハ、もう食っちゃいな。」
男の声から喜びが溢れていた。



その影に突き飛ばされ、俺は床に倒れた。
影は俺の体を押さえつけた。



それは長い爪で俺の頬を突いた。


「その調子だよ」
俺は調子に乗っているのだろうか。
何かの腹いせなのだろうか。


どこかいじめっ子の様な言い方で、冷徹な言い方だった。



それは言った。
「ド…グモ……」



「お前は、蜃気？」



「逃げろ」
それは頷いて、はっきりと言った。
蜃気の声だった。


それーーー蜃気は、何かを渇望しているように思えた。


「何をしている」
男が言った。

俺は逃げようと立ち上がった。
ドアへ向かう。




ダッダッダ




ドアからまた人が来たみたいだった。


「またか。忙しいな」
男はやれやれと頭を掻いた。



３人の警官だった。


「警察だ！」



銃声がした。



「うわあっ！！」



蜃気の声がした。
振り向くと、蜃気が撃たれていた。

「そんな」



「こっちへ来てください」
警官は俺をドアの外へ案内した。



「あっ！蜃気やめろ！」

俺の身体は勝手に動いていた。
警官の手を振り解いて蜃気の動きを封じさせる為に駆けた。


血に飢えたその化け物は人間の血を欲しがる。
その化け物は血が出ている田中を狙う。

土蜘蛛は化け物の動きを封じようと必死だった。

「やめろ！蜃気！！それは田中だ！！」




必死で掴みかかる。なんとか田中を襲うのは防げているが、ずっとこれが続くとなると時間の問題だろう。


「……え？」
俺の間抜けな声が響く。

背中に鋭い刃物が刺さった。


力が出なくなったように立てずにしゃがみこんだ。何が起きた？


「よっわ」
男は完全に楽しんでいる。
全ての不満が解消された様な楽しそうな顔をしていた。


刺さったままのナイフが痛みをひどくしているみたいだった。



警官は全員ナイフに刺されて倒れていた。



「うわあああああああああああああん」
次郎が泣いていた。



「……」
俺はもう、意識が朦朧とし始めていた。




力を振り絞って蜃気の方を見た。

田中はもうただの肉の塊と化していた。
鉄の匂いがした。
うっ！と臭がる力もなくて、俺は蜃気の方へ意識を向けた。




「人が、、、人を、、食べた」
蜃気は血を取り戻したのか、人間のときの意識に戻っていた。


俺が思うより先に男が言った。


「やれやれ、とんだ化け物が生まれたみたいだな」