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第4章
37.魔物の行進④
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エイクが後方へ目を向けると、新米冒険者の姉弟を守って戦っていた女剣士が、胸元を押さえて苦しんでいる。
女剣士には目立った傷はない。エイクが討ち漏らした2体のイミテーション・デスワームとスライムも既に倒されている。
イミテーション・デスワームの酸攻撃を、僅かに避けそびれたようで、服の胸元と袖が溶け、ハードレザーアーマーも一部劣化しているようだが、大きなダメージは見受けられない。
つまり、女剣士を襲っているのは、恐らく物理的な攻撃はない。
そして、エイクには、女剣士が何らの呪いに類する効果を、今まさに受けている事が察せられた。これも“呪いの破壊者”の能力の一部なのだろう。
(ゴーストがもう1体いたのか!)
エイクはそう悟って、女剣士へと走った。
背後から振るわれるタロス・ジェネラルの攻撃も避けて、女剣士に近づいたエイクは、女剣士の身体に異様な変化が起こっていることに気付いた。
右肩辺りで何かがもぞもぞと動いているのだ。
その動きは激しくなり、女剣士の衣服を突き破り、ハードレザーアーマーをも壊して、何かが飛び出る。
それは、女剣士の体から生じた、人の顔の形をした大きな瘤だった。
(変身する憑依霊!)
エイクは心中でその魔物の正体を叫んだ。
それは、他者に憑依した上で、その身体を生前の自分と同じ姿に作り変えてしまうという、更に珍しいゴーストだった。
この魔物の行いにより、死亡して肉体は完全に消滅したはずの者が、生前と同じ姿で舞い戻る。などということがごく稀に起こる。
エイクはその人面瘤を迷わず左手で握った。
(呪いの破壊者の能力は、他者がかかった呪いにも有効だ)
エイクはシャルシャーラから聞いたそんな情報を、既に確認済みだった。
予想通り、エイクは人面瘤と共に実態のない何かを掴んだ感覚を得た。そして、そのまま左手を思いきり引く。すると、ゴーストが女剣士の身体から引っ張りだされる。エイクはそのままそのゴーストを投げ飛ばした。
女剣士の身体に生じていた人面瘤も速やかに消え去り、元の美しい肌に戻った。だが、女剣士は意識を失ってしまっているようで、崩れ落ちそうになる。
シェイプチェンジャー・ゴーストの変身は、憑依された者に内側から身体をかき回されるような、激烈な苦痛と嫌悪感を与えるという。女剣士はそれに耐えられなかったのだろう。
エイクは、倒れそうになる女剣士を、手にクレイモアを握ったままの右腕で支えた。
そこに、エイクに追いついたタロス・ジェネラルの大剣が振るわれた。
エイクは背後から迫る大剣を前進してかわそうとしたが、女1人を不安定な形で抱えたままでは避けきれず、背中に攻撃を受けた。
「ッ!」
エイクは、舌打ちをしつつ、女剣士を姉弟が身を寄せ合っている通路へと放った。さすがに、丁寧に扱っている余裕はない。
そして、左回りで振り返り様にクレイモアを一閃して、再度攻撃をしようとしていたタロス・ジェネラルを両断した。
「その女も守っていろ!」
エイクは動けない弟を抱きしめているテレサに向かってそう叫ぶ。
「は、はい」
その答えを聞きつつ、エイクはクレイモアを左腰の鞘に戻し、右手を背中にまわすと、素早くブロードソードを抜き払った。
予備の武器として携帯していた、ミスリル銀製のブロードソードだ。
エイクはそのブロードソードを高く掲げ、横をすり抜けて通路に入り込もうとしたシェイプチェンジャー・ゴーストを、上から下へと大きく切りつけた。
「おぉぉうぅぅぅ」
そんな叫びを上げ、その姿が掻き消える。魔を払う効果を持つミスリル銀の一撃によって滅ぼされたのである。
その間に最初にエイクを襲ったゴーストは、透明化の能力を使って姿を消していた。
透明化している間、ゴーストは憑依を試みる事は出来ない。しかし、移動は出来る。
そして、今ゴーストが狙っているのはまず間違いなく、エイクか通路に身を潜める者達に憑依することだろう。
エイクはその事を踏まえて、意識を集中させて周りの様子を伺った。
そして、何も見えない空間に向かってブロードソードを一閃する。
「おあぁぁぁぁ」
また叫びが上がる。エイクの一撃は、透明になって近づいて来ていたゴーストを過たず切り捨てた。
エイクは大きく息を吐いた。そして荒い呼吸を繰り返しながら正面を改めて見据える。
厄介なゴーストを倒したエイクだったが、その間に情勢は悪化していた。
魔物たちが次々と広間に入り込んできていたからだ。
魔物たちは、邪魔なイミテーション・ジャイアントオクトパスやバイコーンなどの魔物の死体を避けて、広間の中に広がって来ていた。
黒色の人型をして腕の先が槍のように尖った人工生物、ガストが5体。ストーンサーヴァントが5体。
そして更に、動く全身鎧のような魔物も5体いる。その全身鎧の中からは、人工生物のオドが感じられた。
(アーマード・スライム。厄介だ)
エイクはその正体を見抜く。
それは、生命力が豊富で打撃には強いが斬撃に弱いスライムに、斬撃から身を守るために金属鎧を纏わせるという発想で作られた魔物だった。単純だが、戦闘という面に関しては有効な発想であり、かなりのしぶとさを誇る魔物だ。
エイクは、魔物たちが即座には動かない事を見て取ると、ブロードソードを背中の鞘に戻し、代わりにクレイモアを抜きはらった。
ちょうどそのタイミングで、先ほどから鳴り響いていた足音の主が姿を現す。
それは2体の魔物。通常よりも身長を低く代わりに重厚に作られたアイアンゴーレムと、その背後に立つ牛の頭部を持つ3m近い巨体の魔物、魔獣ミノタウロスだった。
女剣士には目立った傷はない。エイクが討ち漏らした2体のイミテーション・デスワームとスライムも既に倒されている。
イミテーション・デスワームの酸攻撃を、僅かに避けそびれたようで、服の胸元と袖が溶け、ハードレザーアーマーも一部劣化しているようだが、大きなダメージは見受けられない。
つまり、女剣士を襲っているのは、恐らく物理的な攻撃はない。
そして、エイクには、女剣士が何らの呪いに類する効果を、今まさに受けている事が察せられた。これも“呪いの破壊者”の能力の一部なのだろう。
(ゴーストがもう1体いたのか!)
エイクはそう悟って、女剣士へと走った。
背後から振るわれるタロス・ジェネラルの攻撃も避けて、女剣士に近づいたエイクは、女剣士の身体に異様な変化が起こっていることに気付いた。
右肩辺りで何かがもぞもぞと動いているのだ。
その動きは激しくなり、女剣士の衣服を突き破り、ハードレザーアーマーをも壊して、何かが飛び出る。
それは、女剣士の体から生じた、人の顔の形をした大きな瘤だった。
(変身する憑依霊!)
エイクは心中でその魔物の正体を叫んだ。
それは、他者に憑依した上で、その身体を生前の自分と同じ姿に作り変えてしまうという、更に珍しいゴーストだった。
この魔物の行いにより、死亡して肉体は完全に消滅したはずの者が、生前と同じ姿で舞い戻る。などということがごく稀に起こる。
エイクはその人面瘤を迷わず左手で握った。
(呪いの破壊者の能力は、他者がかかった呪いにも有効だ)
エイクはシャルシャーラから聞いたそんな情報を、既に確認済みだった。
予想通り、エイクは人面瘤と共に実態のない何かを掴んだ感覚を得た。そして、そのまま左手を思いきり引く。すると、ゴーストが女剣士の身体から引っ張りだされる。エイクはそのままそのゴーストを投げ飛ばした。
女剣士の身体に生じていた人面瘤も速やかに消え去り、元の美しい肌に戻った。だが、女剣士は意識を失ってしまっているようで、崩れ落ちそうになる。
シェイプチェンジャー・ゴーストの変身は、憑依された者に内側から身体をかき回されるような、激烈な苦痛と嫌悪感を与えるという。女剣士はそれに耐えられなかったのだろう。
エイクは、倒れそうになる女剣士を、手にクレイモアを握ったままの右腕で支えた。
そこに、エイクに追いついたタロス・ジェネラルの大剣が振るわれた。
エイクは背後から迫る大剣を前進してかわそうとしたが、女1人を不安定な形で抱えたままでは避けきれず、背中に攻撃を受けた。
「ッ!」
エイクは、舌打ちをしつつ、女剣士を姉弟が身を寄せ合っている通路へと放った。さすがに、丁寧に扱っている余裕はない。
そして、左回りで振り返り様にクレイモアを一閃して、再度攻撃をしようとしていたタロス・ジェネラルを両断した。
「その女も守っていろ!」
エイクは動けない弟を抱きしめているテレサに向かってそう叫ぶ。
「は、はい」
その答えを聞きつつ、エイクはクレイモアを左腰の鞘に戻し、右手を背中にまわすと、素早くブロードソードを抜き払った。
予備の武器として携帯していた、ミスリル銀製のブロードソードだ。
エイクはそのブロードソードを高く掲げ、横をすり抜けて通路に入り込もうとしたシェイプチェンジャー・ゴーストを、上から下へと大きく切りつけた。
「おぉぉうぅぅぅ」
そんな叫びを上げ、その姿が掻き消える。魔を払う効果を持つミスリル銀の一撃によって滅ぼされたのである。
その間に最初にエイクを襲ったゴーストは、透明化の能力を使って姿を消していた。
透明化している間、ゴーストは憑依を試みる事は出来ない。しかし、移動は出来る。
そして、今ゴーストが狙っているのはまず間違いなく、エイクか通路に身を潜める者達に憑依することだろう。
エイクはその事を踏まえて、意識を集中させて周りの様子を伺った。
そして、何も見えない空間に向かってブロードソードを一閃する。
「おあぁぁぁぁ」
また叫びが上がる。エイクの一撃は、透明になって近づいて来ていたゴーストを過たず切り捨てた。
エイクは大きく息を吐いた。そして荒い呼吸を繰り返しながら正面を改めて見据える。
厄介なゴーストを倒したエイクだったが、その間に情勢は悪化していた。
魔物たちが次々と広間に入り込んできていたからだ。
魔物たちは、邪魔なイミテーション・ジャイアントオクトパスやバイコーンなどの魔物の死体を避けて、広間の中に広がって来ていた。
黒色の人型をして腕の先が槍のように尖った人工生物、ガストが5体。ストーンサーヴァントが5体。
そして更に、動く全身鎧のような魔物も5体いる。その全身鎧の中からは、人工生物のオドが感じられた。
(アーマード・スライム。厄介だ)
エイクはその正体を見抜く。
それは、生命力が豊富で打撃には強いが斬撃に弱いスライムに、斬撃から身を守るために金属鎧を纏わせるという発想で作られた魔物だった。単純だが、戦闘という面に関しては有効な発想であり、かなりのしぶとさを誇る魔物だ。
エイクは、魔物たちが即座には動かない事を見て取ると、ブロードソードを背中の鞘に戻し、代わりにクレイモアを抜きはらった。
ちょうどそのタイミングで、先ほどから鳴り響いていた足音の主が姿を現す。
それは2体の魔物。通常よりも身長を低く代わりに重厚に作られたアイアンゴーレムと、その背後に立つ牛の頭部を持つ3m近い巨体の魔物、魔獣ミノタウロスだった。
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