4 / 24
4話
しおりを挟む
次の日の朝。
私は校門の入口でスマホを触りながら、良太君が通るのを待っていた。
周りではチュンチュンと、スズメが鳴いていて、爽やかな朝を感じるが、私の心はどうも落ち着かない。
良太君は電車通勤だから、おそらく時間は大きくズレないはず。
チラッと駅のある方へと視線を向ける。
微かではあるが、良太君らしき男の子が歩いているのが目に入る。
その後ろには学君?
良く分からないけど、ここでジッと見ていたら怪しまれるし、駅とは反対にあるコンビニの方へ移動するか。
※※※
用事は特ないけど、せっかくコンビニの方へ移動したので店内に入る。
部活がある生徒かな?
学校に近いだけあって、中は割と混雑していた。
私は缶コーヒーを手に取ると、レジに並ぶ。
良太君、そろそろ着いたかな?
嫌だな……。
私は不安をぶつけるかの様に缶コーヒーをギュっと握った。
でもここで何とかしなきゃ、他の人も被害にあるかもしれない。
頑張ろう!
私は買い物を済ませ、コンビニの外に出ると、早足で学校へと向かった。
――学校の外の時計では7時35分。
さっきの男子が良太君と学なら、もう着いているはず。
私は校内に入ると、二人の下駄箱を探す。
――あった。
まずは良太君の方から――。
男の子の下駄箱を開けるなんて、どうもドキドキしてしまう。
誰かに見られていないか不安で、キョロキョロと辺りを見渡してしまった。
よし、誰も居ないな。
私はゴクッと唾を飲み込むと、良太君の下駄箱を開ける。
――スニーカーがあるって事は、もう校内には居るわね。
私はソッと、下駄箱を閉めた。
続いて学の下駄箱を開ける。
「――臭うわね……」
思わず鼻を摘んでしまう。
――こちらもスニーカーがあるって事は居るわね。
無意識ではあるけどバタンッと勢いよく閉めてしまった。
優介の下駄箱もこんなに臭うのかしら?
――って、何を考えているんだ私……今はそれ所じゃない!
私は早足で教室へと向かった。
渡り廊下を歩いていると、二階から本を片手に下りてくる良太君を見かける。
本を持っているって事は図書館に行くのかな?
――って事は、教室には学が一人?
私は慌てて渡り廊下を走り抜け、二階にある教室へと向かう。
教室の前に着くと、ゆっくりと深呼吸をして、呼吸を整えた。
いきなり開けちゃ駄目。
ゆっくり、ゆっくりよ……と、自分に言い聞かせ、ドアの引き手に指を掛ける。
ゴクッとツバを飲み込み、音を立てない様に徐々にドアを開けていく。
少し開いた所で、覗き込むと自分の席に座っている学の姿が視えた。
学がスッと席から立ち上がる。
ヤバい?
私はバレない様に、少し後ろに下がった。
――学は自分の席の前の良太君の机の横で立ち止まり、良太君の黒色のリュックをジッと見つめる。
何か盗む気?
私は証拠を押さえるため、スカートのポケットに手を入れ、スマホを取り出す。
学はやっぱり何か盗む気で、良太君のリュックを机のフックから外し、持ち上げた。
リュックのチャックをつまみ、ジーッと開けていく。
私は急いで、写真を撮ろうとスマホの電源を入れた。
あれ? カメラどこだっけ?
焦りと不安でテンパって、普段当たり前にやっている事が出来なくなる。
早くしなきゃ……。
私はようやくカメラを立ち上げ、スマホを学に向けた。
シャッター音でバレないかな……緊張で手が震え、ピントが合わない。
学がリュックに手を入れ、ガサゴソと漁り出す。
ブレていても、誰だか分かれば大丈夫だよね。
――意を決して、画面をタッチしようとした瞬間!
後ろから誰かの手がヌゥッと出てきて、私からスマホを取り上げる。
え!?
慌てて首を後ろに向けると、そこに立っていたのは優介だった。
え!? 何でここにいるの?
優介いつも、時間ぎりぎりに来るじゃない。
優介は唇に人指し指を当てる。
静かにしろって事ね。
優介はスッと私の方に手を伸ばし、スッと細くて長い綺麗な指で、ギュッと私の手首を掴むと自分の方へと寄せた。
急に温かい温もりを感じ、思わずドキッとしてしまう。
え、え、こんな時になにするのよ!
優介は左手に持っていた私のスマホを右手の掌にポンっと乗せた。
あぁ……返してくれるためか。びっくりした。
続いて優介は私の耳元に顔を寄せてくる。
え、なになに。今度はなにするの!?
私が動揺していると、優介は「あんまり無茶するなよ」
と、ひそひそ話をするように耳元で囁いた。
優介の吐息が耳に当たり、恥ずかしくて体が火照ってしまう。
きっと今の私は、顔が真っ赤に違いない。
優介は顔を離すと、階段の方を指差した。
離れていて欲しいのか、私はコクリと頷き、居た堪れない気持ちもあって、直ぐに教室から離れる。
優介は私が離れた事を確認すると、引き手を握り、ドアを勢いよく開いた。
ドンッ! と、ドアがぶつかる音が響く。
「おはよう!」
と、優介は元気よく挨拶をし、ズカズカと教室の中に入って行く。
ここからじゃ教室の様子は見えない。
近づきたい。
だけど、せっかく優介が庇ってくれたのを無駄には出来ない。
私はもどかしいけど、その場に立っている事しか出来なかった。
「あれ? 学君。それ、良太のリュックじゃねぇ」
優介の大きな声が廊下にまで聞こえてくる。
日頃の優介の声はあそこまで大きくないので、私を安心させるため、聞こえるように大きく言ってくれているのだろう。
「えっと、これは……」
誰も居ない静まり返った廊下だからか、微かだけど弱弱しい学の声も聞こえてきた。
「返せよ! もしかして、良太君のカードを盗んだのお前か? ちょっとこっち来いよ!」
教室から出てくる!?
私は慌てて階段の方へと隠れた。
二人のカツ……カツ……という足音が聞こえてくる。
――どんどん離れている気がするから、階段と逆の方に行った?
私はゆっくり顔を出し、様子を窺う。
二人は職員室のある方へと向かって歩いていた。
「ふぅ……」
ホッと胸を撫で下ろす。
これで良太君のカードが返って来ると良いけど。
私は優介が掴んだ右の手首を左手でソッと触る。
どうしよう……優介の過去に触れちゃった。
私は校門の入口でスマホを触りながら、良太君が通るのを待っていた。
周りではチュンチュンと、スズメが鳴いていて、爽やかな朝を感じるが、私の心はどうも落ち着かない。
良太君は電車通勤だから、おそらく時間は大きくズレないはず。
チラッと駅のある方へと視線を向ける。
微かではあるが、良太君らしき男の子が歩いているのが目に入る。
その後ろには学君?
良く分からないけど、ここでジッと見ていたら怪しまれるし、駅とは反対にあるコンビニの方へ移動するか。
※※※
用事は特ないけど、せっかくコンビニの方へ移動したので店内に入る。
部活がある生徒かな?
学校に近いだけあって、中は割と混雑していた。
私は缶コーヒーを手に取ると、レジに並ぶ。
良太君、そろそろ着いたかな?
嫌だな……。
私は不安をぶつけるかの様に缶コーヒーをギュっと握った。
でもここで何とかしなきゃ、他の人も被害にあるかもしれない。
頑張ろう!
私は買い物を済ませ、コンビニの外に出ると、早足で学校へと向かった。
――学校の外の時計では7時35分。
さっきの男子が良太君と学なら、もう着いているはず。
私は校内に入ると、二人の下駄箱を探す。
――あった。
まずは良太君の方から――。
男の子の下駄箱を開けるなんて、どうもドキドキしてしまう。
誰かに見られていないか不安で、キョロキョロと辺りを見渡してしまった。
よし、誰も居ないな。
私はゴクッと唾を飲み込むと、良太君の下駄箱を開ける。
――スニーカーがあるって事は、もう校内には居るわね。
私はソッと、下駄箱を閉めた。
続いて学の下駄箱を開ける。
「――臭うわね……」
思わず鼻を摘んでしまう。
――こちらもスニーカーがあるって事は居るわね。
無意識ではあるけどバタンッと勢いよく閉めてしまった。
優介の下駄箱もこんなに臭うのかしら?
――って、何を考えているんだ私……今はそれ所じゃない!
私は早足で教室へと向かった。
渡り廊下を歩いていると、二階から本を片手に下りてくる良太君を見かける。
本を持っているって事は図書館に行くのかな?
――って事は、教室には学が一人?
私は慌てて渡り廊下を走り抜け、二階にある教室へと向かう。
教室の前に着くと、ゆっくりと深呼吸をして、呼吸を整えた。
いきなり開けちゃ駄目。
ゆっくり、ゆっくりよ……と、自分に言い聞かせ、ドアの引き手に指を掛ける。
ゴクッとツバを飲み込み、音を立てない様に徐々にドアを開けていく。
少し開いた所で、覗き込むと自分の席に座っている学の姿が視えた。
学がスッと席から立ち上がる。
ヤバい?
私はバレない様に、少し後ろに下がった。
――学は自分の席の前の良太君の机の横で立ち止まり、良太君の黒色のリュックをジッと見つめる。
何か盗む気?
私は証拠を押さえるため、スカートのポケットに手を入れ、スマホを取り出す。
学はやっぱり何か盗む気で、良太君のリュックを机のフックから外し、持ち上げた。
リュックのチャックをつまみ、ジーッと開けていく。
私は急いで、写真を撮ろうとスマホの電源を入れた。
あれ? カメラどこだっけ?
焦りと不安でテンパって、普段当たり前にやっている事が出来なくなる。
早くしなきゃ……。
私はようやくカメラを立ち上げ、スマホを学に向けた。
シャッター音でバレないかな……緊張で手が震え、ピントが合わない。
学がリュックに手を入れ、ガサゴソと漁り出す。
ブレていても、誰だか分かれば大丈夫だよね。
――意を決して、画面をタッチしようとした瞬間!
後ろから誰かの手がヌゥッと出てきて、私からスマホを取り上げる。
え!?
慌てて首を後ろに向けると、そこに立っていたのは優介だった。
え!? 何でここにいるの?
優介いつも、時間ぎりぎりに来るじゃない。
優介は唇に人指し指を当てる。
静かにしろって事ね。
優介はスッと私の方に手を伸ばし、スッと細くて長い綺麗な指で、ギュッと私の手首を掴むと自分の方へと寄せた。
急に温かい温もりを感じ、思わずドキッとしてしまう。
え、え、こんな時になにするのよ!
優介は左手に持っていた私のスマホを右手の掌にポンっと乗せた。
あぁ……返してくれるためか。びっくりした。
続いて優介は私の耳元に顔を寄せてくる。
え、なになに。今度はなにするの!?
私が動揺していると、優介は「あんまり無茶するなよ」
と、ひそひそ話をするように耳元で囁いた。
優介の吐息が耳に当たり、恥ずかしくて体が火照ってしまう。
きっと今の私は、顔が真っ赤に違いない。
優介は顔を離すと、階段の方を指差した。
離れていて欲しいのか、私はコクリと頷き、居た堪れない気持ちもあって、直ぐに教室から離れる。
優介は私が離れた事を確認すると、引き手を握り、ドアを勢いよく開いた。
ドンッ! と、ドアがぶつかる音が響く。
「おはよう!」
と、優介は元気よく挨拶をし、ズカズカと教室の中に入って行く。
ここからじゃ教室の様子は見えない。
近づきたい。
だけど、せっかく優介が庇ってくれたのを無駄には出来ない。
私はもどかしいけど、その場に立っている事しか出来なかった。
「あれ? 学君。それ、良太のリュックじゃねぇ」
優介の大きな声が廊下にまで聞こえてくる。
日頃の優介の声はあそこまで大きくないので、私を安心させるため、聞こえるように大きく言ってくれているのだろう。
「えっと、これは……」
誰も居ない静まり返った廊下だからか、微かだけど弱弱しい学の声も聞こえてきた。
「返せよ! もしかして、良太君のカードを盗んだのお前か? ちょっとこっち来いよ!」
教室から出てくる!?
私は慌てて階段の方へと隠れた。
二人のカツ……カツ……という足音が聞こえてくる。
――どんどん離れている気がするから、階段と逆の方に行った?
私はゆっくり顔を出し、様子を窺う。
二人は職員室のある方へと向かって歩いていた。
「ふぅ……」
ホッと胸を撫で下ろす。
これで良太君のカードが返って来ると良いけど。
私は優介が掴んだ右の手首を左手でソッと触る。
どうしよう……優介の過去に触れちゃった。
0
あなたにおすすめの小説
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる