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18話
しおりを挟む「さてと……」
と、優介が言って、急に立ち上がり私の方に体を向ける。
「そろそろ話すから、目を瞑って」
「はぁ? 何で?」
「恥ずかしいから」
恥ずかしいからって何?
――まさかキスするつもり!?
「恥ずかしいって……余計に気になって目なんて瞑れないんですけど」
「じゃあ話せないな」
と、優介はニヤニヤと憎たらしい笑顔を浮かべる。
もう、何なのよ……こんな子供達が近くに居る状況でキスはしてこないと思うけど、目を瞑るなんて恥ずかしいなぁ。
「どうする?」
「分かった、分かった」
私は言われた通り、ゆっくりと目を閉じ「これで満足」
「うん、満足。俺が開けて良いよって言うまで、そのままにしていてくれよ」
「はーい」
――フワァッと風を感じたと思うと微かに石鹸? の香りが漂ってくる。
近くにいる……ドキドキしていると太ももに何やら柔らかいものがぶつかる
「きゃ!」
「あ。ごめん」
びっくりして思わず声を出してしまったが、多分あたったのは優介の太ももだ。
「大丈夫、ちょっとビックリしただけ」
と、私は言って足が邪魔にならない様に避ける。
「分かった。じゃあ、行くよ」
目を瞑った状態で今から行くと声を掛けられると、余計に意識をしてしまい、体が固まってしまう。
僅かだが優介の吐息が頬に当たり、緊張のあまりゴクッと固唾を飲み込んだ。
私の髪の中に優介の指がスッと入り掻き分けていく。
嘘でしょ……こんなところで?
ギュッと目を瞑ると、指とは違った何かが私の髪の中を通り束ねる。
これって――。
「目を開けて良いよ」
私は言われた通り、恐る恐る目を開ける。
目の前にはニコニコと笑顔を浮かべている優介が立っていて「初めて付けたから、曲がっちゃった」
「付けてくれたのヘアピン?」
「そう」
「嬉しいけど、何で?」
「ハッピーバースディ、美穂」
「え?」
優介が動き出し、私の横にスッと座る。
「そりゃ、まだ一週間先だから驚くよな。でもその日はちょっと用事があって、今日わたす事にしたんだ」
「あぁ……そういうこと。ありがとう!」
優介はニコッと嬉しそうに笑窪を浮かべ「どう致しまして」
「どんなデザインか、鏡で見て良い?」
「いいよ。ついでに曲がったのを直せば良いよ」
「うーん……せっかく付けてくれたから、それはやめておく!」
「なんかそれ、照れるな」
「自分でやったんでしょ!」
私は鞄を手に取るとチャックを開け、化粧ポーチから小さな手鏡を取り出す。
自分を映しだすと、確かに金色がメインの星をモチーフにしたヘアピンが、ちょっと曲がって付けられていた。
でも、そこがまた愛敬があって微笑ましい。
「どう?」
「可愛いデザインね。可愛すぎて使いこなせるか心配になるぐらい」
「大丈夫、似合ってるよ」
「――それ、面と向かって言われると恥ずかしい」
「はは」
優介は笑いながら空を見上げる。
「あのさ――」
「なに?」
優介が顔を私の方に向け、ジッと見つめ「俺がそういう事するのは、美穂だけだから」
「え……」
「俺……女の子と話す事もあるから、美穂に心配かけることもあると思うけど、髪を触ったり、誕生日プレゼントあげたり、そういう事をするのは美穂だけだから。浮気なんて絶対にしない、安心して」
「優介……」
言葉に出来ないぐらいの喜びが込み上げて来て、涙が出そうになるのをグッと堪える。
優介、私の焼き餅をずっと気にしていてくれたんだね。
「うん、分かった!」
優介は伝え終わった事で急に恥ずかしくなったのか頬を赤く染め、私から顔を逸らし、正面を向いた。
――今までは優介に触れることで不安を補ってきた。
離れればそれは出来なくなる。
離れたくはない……それが本音。
だけど――こんなにも私のことを思ってくれる優介なら、きっと大丈夫。
今ならそう思える。
勇気を持って、一歩踏み出せ、私ッ!
私は両手をギュっと握りしめ「ねぇ、優介。聞きたい事があるの」
「なに?」
「――転校……するの?」
「え……」
恐る恐る優介の方を見ると、優介は目を見開きながらこちらを見ていた。
こんなにも驚いているという事は、きっと誰にも言っていないのね。
「どうして、それを?」
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