クラスメイトに良く当たる占い師を紹介して貰ったら、可愛い彼女が出来ました

若葉結実(わかば ゆいみ)

文字の大きさ
16 / 50

第16話 グリコジャンケン

しおりを挟む
 その日の夜。俺はベッドで寝ころびながら圭子との思い出を振り返る。確か圭子をかばった帰り道、一人で帰っていたら話しかけられたんだよな。

「光輝君、一緒に帰ろう」
「──やだよぉ」
「えぇー……一緒に帰ろうよ」

 俺はそう言われたが、圭子を置き去りにして、早足でスタスタと歩き続ける──圭子は俺の後ろを歩きながら「ねぇ、光輝君。女の子と一緒に居るのが、ただ恥ずかしいだけなんでしょ? だったらさ、私が克服のお手伝いをしてあげるよ」

 圭子がそう話しかけてくるが、俺は無言で歩き続ける。圭子はめげずに「──ねぇ……ねぇったら!」

「なに?」
「グリコジャンケンって知ってる?」
「グリコジャンケン? なにそれ?」
「ジャンケンして勝った方が先に進むやつ」
「あぁ……やったことある」
「やろ?」
「何だよ行き成り……やらないよ!」

 俺が少し強めにそう答えると、圭子は俺の手をグイっと掴む。俺は足を止め「なんだよ」

「やろうよ──行くよぉ、せーの……」と、圭子は掛け声を出し「ジャン・ケン・ポン!」と、グーを出した。俺は圭子の勢いに負け、パーを出す。

「あ、光輝君の勝ち! ──ほら。進んで、進んで」

 俺は渋々「パ・イ・ナ・ツ・プ・ル」と、ゆっくり進む。

「ふふ、今度は負けないよ。せーの……」と、ジャンケンをし、勝っては負けを繰り返す──二人の距離は一向に縮まらなかった。

 これが最後の直線。圭子は「これで最後ね。せーの……」と、ジャンケンをし、グーを出す。俺はチョキを出して負けてしまう。

 でも相手はグ・リ・コの三歩だけ、勝負は俺の勝ちだ! と、安心していたが……圭子は「グ・リ・コ・の・お・ま・け!」と、言いながら進み、俺の一歩前へ出る。

 そして「ふふん、私の勝ち~」と、誇らしげにそう言って、クルッとこちらを振り返った。

「おい、ちょっと待て。何だよそれ!?」
「知らないの? こんなのもあるんだよ?」
「卑怯だな~」
「卑怯じゃないよ!」

 圭子は何故か俺を見つめ、両手を後ろで組むとクスッと笑う。

「なんだよ?」
「負けず嫌いなんだね。楽しかった?」
「あ……」

 ニヤニヤしながらこちらを見つめてる圭子に、素直に言うのは何だか悔しい……でも「──楽しかったよ」と、正直に伝えた。

「じゃあ、明日も一緒にやろう!」
「お、おぅ」

 それから俺達は毎日の様に遊びながら一緒に帰るようになる。これで女の子に対して苦手意識がなくなった──と、まではいかなかったけど、少しはマシになれたと思っている。

 その証拠に俺は、あの時、星恵さんに話しかけられている。圭子と仲良くなってない俺だったら、きっと星恵さんに声を掛ける事は出来なかったはずだ。

 今の自分が居るのは、圭子のおかげだと思っているよ。だから──俺なんかよりずっと良い人が、お前に見つかると良いな。俺はそう思いながら、ゆっくりと目を閉じた。

 ※※※

 数日後の日曜日、俺は星恵さんを誘って釣りに来ていた。圭子と星恵さんの会話で、俺は星恵さんの気持ちに気付いているし、今までのやりとりで星恵さんだって俺に気持ちに気付いているかもしれない。

 でも……これといって進展はなかった。

 だからといって不満はない。正直、気持ちを伝えて、この関係が崩れてしまうぐらいなら、ずっとこのままの関係でいた方が良いんじゃないかとさえ思える。

 だけど──不満はなくても不安はある。イメチェンしてからクラスメイトの男子から人気が出ているのも知っているし、こんなに可愛い女の子だ。いつ見捨てられるか、分からない。

 今日は朝早く来たからか、俺達以外に誰もおらず、小鳥のさえずりが聞こえるほど、長閑だ。

 これってチャンスなんじゃないか? 俺はゴクッと固唾を飲み込み、口を開く。

「星恵さん、あのさ──」

 星恵さんが「ん、なに?」と、こちらに顔を向けると、竿の先がググッと震える。おのれぇ……空気が読めない魚め。

「おッ! これは手強そうだぞ」と、星恵さんは必死にリールを巻き始め──苦戦しながらも見事に吊り上げた。

「ほら、みてみて。結構、大きいよ!」
「本当だね! これは大きい」
「ふふん」
 
 ──魚に告白を邪魔されてしまったけど、まぁいいか。満足げに微笑む星恵さんをみて、俺はそう思う。

 星恵さんは魚を逃がすと、こちらを振り向き「ところで光輝君、さっき何を言おうとしたの?」

「ん? ──まぁいいや、また今度にする」

 俺がそう言うと、星恵さんは眉を顰め、明らかに不満げの顔をする。そりゃ言い掛けてやめられれば、そんな顔になるわな。でも……告白するならもっとムードのある場所でしたい! そんな贅沢な事を思ってしまった。

「──あ、そう。分かった」と、星恵さんは返事をすると、釣りを続ける。

 ちょっと気まずい雰囲気にしてしまった……何か楽しくなるような話題はないか?

「──ねぇ、光輝君。今度の水曜の夜、空いてる?」
「水曜の夜? 空いてるよ」
「○○公園って大きい公園あるでしょ? いまそこ、イルミネーションやってるんだけどさ、水曜日で終了なんだって」
「へぇー……」
「だから花火もやるみたいなんだけど……どう? 一緒に」

 俺が星恵さんの方に視線を向けると、星恵さんは照れ臭いのか、池を見たままリールを巻いていた。

 考えたら、面と向かって誘ってくるなんて珍しい。

「もちろん良いよ」
「じゃあ、駅前で待ち合わせね」
「分かった」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

処理中です...