38 / 50
第38話 ねぇ、しちゃおっか?
しおりを挟む
「な、なに?」
「ねぇ、さっきの電話は何だったの?」
「何だったって……ただ声を聞きたいからって電話をしてきただけだったよ」
「そう……じゃあ来るとかって話じゃなかったのね?」
「うん」
飯田さんは急に俺の太ももに温かい手を乗せ、優しく撫で始める。俺は驚いて背筋をピンっと伸ばした。
「ちょ……止めてくれないか?」
「どうして?」
「どうしてって……くすぐったい」
飯田さんは「ふふ……」と笑うと俺の耳元で「ねぇ、しちゃおっか?」と囁く。
「え……しちゃうって──何を?」
「分かってるくせに、女の子に言わせる気?」
「しないよ。彼女が居るんだ」
「遠く離れていて来ないんじゃ、平気じゃない? バレはしないわよ」
確かにバレる事はない──ないけど、俺は──。
クッションから立ち、飯田さんの方に体を向けると「絶対にしない! それを望んでいるなら、ここから出て行ってくれ!!」と、キッパリ断った。
飯田さんは立ち上がると「あ、そう……分かったわよッ!」と逆切れすると、ハンドバッグを手に取り──アパートから出て行った。
俺は彼氏の浮気で悲しむ圭子の姿を見ている。だから不誠実な事は絶対にしたくないと思ってる。それに──どんな誘惑されても、星恵ちゃんの魅力には敵わない。俺はそれを知っているんだ。
※※※
それから必要最低限のこと以外、飯田さんが俺に関わることは無くなった。だからといって、どうということはない。むしろ距離を置いて貰った方が、気持ちが楽だ。
一体、飯田さんは何がしたかったんだろ? 一人でいる男子生徒に話しかけたりしているのをみると、もしかしたらチヤホヤしてくれる男性を探していたのかもしれない。
俺はグループワークで一緒になった友達を大切にする様にし、大学生活を楽しんでいた。そんなある日──。
大学の廊下を歩いていると、携帯の着信音が鳴る。俺はズボンから携帯を取り出すと、着信画面で星恵ちゃんだと確認してから電話に出た。
「はい」
「あ、光輝君。いま大丈夫?」
俺は廊下の端に寄り、壁に背中を預けると「大丈夫だよ」
「今度の長期連休だけどさ、こっち戻ってくるの?」
「うん、そのつもり」
「じゃあさ、遊園地に行こうよ。新しいアトラクションが増えたみたいだよ」
「マジで!? 行く行く」
「じゃあ後で行けそうな日、連絡くれる?」
「了解!」
「楽しみにしてるね!」
「おう!」
星恵ちゃんは俺の返事を聞くと、通話を切る。俺も通話を切って、携帯をズボンにしまった。
飯田さんがアパートに来た日。飯田さんが帰った後、俺は直ぐに電話を入れて、事情を話した。
その甲斐あってか、星恵ちゃんは信じてくれた様で、何も起きていない。だけどあれから会っていないから、ちょっと心配だな。何も起きずに楽しめれば良いけど……。
※※※
長期連休に入り、俺は実家に帰っていた。明日はいよいよ星恵ちゃんとデートの日だけど、天気は大丈夫かな? 気になった俺は机に置いてあった携帯を手に取り、調べてみる。
「午前中は大丈夫そうだけど、午後は怪しいな」
どうするかな……現地で買う事も出来そうだけど、念のために傘を持っていくか。俺はそう決めると、机に携帯を置き、クローゼットに向かう。
クローゼットを開けると、折り畳み傘を取り出した。この傘をみると、星恵ちゃんと一緒に相合傘をしたことを思い出すな──。
「あ……そういえば今日は星子さんからメールが届かないけど、大丈夫かな?」
俺がそう呟くとタイミングよく携帯の着信音が鳴る。俺は折り畳み傘を黒のリュックにしまうと、携帯を手に取った。
良かった。星子さんからメールだ。直ぐにメールを開くとそこには『明日のラッキーカラーは、ズバリ赤です!』と書かれていた。
なんか珍しい書き方だな。本当の占いみたいに抽象的で、どうしたら良いのか分からない。
「ん~……困ったぞ?」
赤、赤ねぇ……とりあえず黒のリュックを赤にしてみるか! 俺は荷物を一旦だして、すべて赤色のリュックに移し替えた──。
これが当たりかどうか分からないけど……準備は済んだし、明日に備えてもう寝よう!
「ねぇ、さっきの電話は何だったの?」
「何だったって……ただ声を聞きたいからって電話をしてきただけだったよ」
「そう……じゃあ来るとかって話じゃなかったのね?」
「うん」
飯田さんは急に俺の太ももに温かい手を乗せ、優しく撫で始める。俺は驚いて背筋をピンっと伸ばした。
「ちょ……止めてくれないか?」
「どうして?」
「どうしてって……くすぐったい」
飯田さんは「ふふ……」と笑うと俺の耳元で「ねぇ、しちゃおっか?」と囁く。
「え……しちゃうって──何を?」
「分かってるくせに、女の子に言わせる気?」
「しないよ。彼女が居るんだ」
「遠く離れていて来ないんじゃ、平気じゃない? バレはしないわよ」
確かにバレる事はない──ないけど、俺は──。
クッションから立ち、飯田さんの方に体を向けると「絶対にしない! それを望んでいるなら、ここから出て行ってくれ!!」と、キッパリ断った。
飯田さんは立ち上がると「あ、そう……分かったわよッ!」と逆切れすると、ハンドバッグを手に取り──アパートから出て行った。
俺は彼氏の浮気で悲しむ圭子の姿を見ている。だから不誠実な事は絶対にしたくないと思ってる。それに──どんな誘惑されても、星恵ちゃんの魅力には敵わない。俺はそれを知っているんだ。
※※※
それから必要最低限のこと以外、飯田さんが俺に関わることは無くなった。だからといって、どうということはない。むしろ距離を置いて貰った方が、気持ちが楽だ。
一体、飯田さんは何がしたかったんだろ? 一人でいる男子生徒に話しかけたりしているのをみると、もしかしたらチヤホヤしてくれる男性を探していたのかもしれない。
俺はグループワークで一緒になった友達を大切にする様にし、大学生活を楽しんでいた。そんなある日──。
大学の廊下を歩いていると、携帯の着信音が鳴る。俺はズボンから携帯を取り出すと、着信画面で星恵ちゃんだと確認してから電話に出た。
「はい」
「あ、光輝君。いま大丈夫?」
俺は廊下の端に寄り、壁に背中を預けると「大丈夫だよ」
「今度の長期連休だけどさ、こっち戻ってくるの?」
「うん、そのつもり」
「じゃあさ、遊園地に行こうよ。新しいアトラクションが増えたみたいだよ」
「マジで!? 行く行く」
「じゃあ後で行けそうな日、連絡くれる?」
「了解!」
「楽しみにしてるね!」
「おう!」
星恵ちゃんは俺の返事を聞くと、通話を切る。俺も通話を切って、携帯をズボンにしまった。
飯田さんがアパートに来た日。飯田さんが帰った後、俺は直ぐに電話を入れて、事情を話した。
その甲斐あってか、星恵ちゃんは信じてくれた様で、何も起きていない。だけどあれから会っていないから、ちょっと心配だな。何も起きずに楽しめれば良いけど……。
※※※
長期連休に入り、俺は実家に帰っていた。明日はいよいよ星恵ちゃんとデートの日だけど、天気は大丈夫かな? 気になった俺は机に置いてあった携帯を手に取り、調べてみる。
「午前中は大丈夫そうだけど、午後は怪しいな」
どうするかな……現地で買う事も出来そうだけど、念のために傘を持っていくか。俺はそう決めると、机に携帯を置き、クローゼットに向かう。
クローゼットを開けると、折り畳み傘を取り出した。この傘をみると、星恵ちゃんと一緒に相合傘をしたことを思い出すな──。
「あ……そういえば今日は星子さんからメールが届かないけど、大丈夫かな?」
俺がそう呟くとタイミングよく携帯の着信音が鳴る。俺は折り畳み傘を黒のリュックにしまうと、携帯を手に取った。
良かった。星子さんからメールだ。直ぐにメールを開くとそこには『明日のラッキーカラーは、ズバリ赤です!』と書かれていた。
なんか珍しい書き方だな。本当の占いみたいに抽象的で、どうしたら良いのか分からない。
「ん~……困ったぞ?」
赤、赤ねぇ……とりあえず黒のリュックを赤にしてみるか! 俺は荷物を一旦だして、すべて赤色のリュックに移し替えた──。
これが当たりかどうか分からないけど……準備は済んだし、明日に備えてもう寝よう!
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる