クラスメイトに良く当たる占い師を紹介して貰ったら、可愛い彼女が出来ました

若葉結実(わかば ゆいみ)

文字の大きさ
39 / 50

第39話 そういうタイプだね

しおりを挟む
 小鳥のさえずりが聞こえる爽やかな朝。俺は駅の外で星恵ちゃんを待っていた──数分すると、薄茶のハンドバッグを肘にかけ、白のワンピースにデニムのジャケットを羽織った星恵ちゃんが近づいてくるのが目に入る。

 何だろう……久しぶりっていうのもあるのかな? 更に大人の女性になった様に感じる星恵ちゃんをみて、ドキドキが止まらない。

 星恵ちゃんは俺の前で立ち止まると、ニコッと微笑み「久しぶり!」

「久しぶり。今日は爽やかな恰好してるね。そういう服装も似合ってるよ」と、俺は恥ずかしくて目を逸らしたい気持ちを必死に抑えながら返事をした。

「でしょ~。光輝君は……珍しく赤いリュックにしてるんだね! 似合ってるよ!」
「ありがとう。今日のラッキーカラーなんだ」
「へぇー……そうなんだ。良い事あると良いね!」
「う、うん」

 なんか、あっさりしてるな……外れだったのか? 星恵ちゃんの方は、花の形をした可愛いピアスはしてるけど赤じゃなくて白だし、口紅は赤と言えなくもないけど、どちらかというとピンクだ。見る限り赤い物はない。

「行こうか?」
「あ、うん」

 俺達はゆっくり駅の中に向かって歩き出す──だったら、占いのラッキーは褒めて貰えるって事だったのかもしれない。まぁ……嬉しいは嬉しいけど、ちょっぴり物足りなかったかな。

 ※※※

 俺達は電車を降りると、バスに乗って目的地の遊園地に向かった──。

 チケット売り場でチケットを買って、入場すると、星恵ちゃんに向かって「まずは何処から行こうか?」と聞いてみる。

「混んでて入れなかった嫌だし、まずは新しく出来たお化け屋敷へ行きましょ!」
「了解」
「光輝君。パンフレット、リュックにしまってあげる」
「ありがとう」

 俺は立ち止まると、パンフレットを星恵ちゃんに渡す。星恵ちゃんは受け取ると俺の後ろに回って、パンフレットをしまってくれた。

 星恵ちゃんは俺の横に並ぶと「お化け屋敷、メッチャ怖いらしいよ」と、さり気なく手を繋いでくる。

 え? もしかして、手を繋ぎたいからパンフレットをしまってくれたのか!? そうだったらメッチャ可愛くないか、俺の彼女!

「へぇ、そうなんだ。そいつは楽しみだな」と、俺は心の中ではテンションが上がっているのに、冷静に返しながらゆっくり歩き始める。

 星恵ちゃんも合わせて歩き始めた。「怖いからって一人で逃げ出さないでよ?」

「そんな事する訳ないじゃん! 逆に守ってあげるよ!」

 俺がそう言うと、星恵ちゃんは俯き加減で「──ふふ、そうだね。光輝君はそういうタイプだね」と照れくさそうにしながら、笑った。

 俺は照れ臭くて言葉を失い、自分の髪を撫でる事しか出来なかった──そのまま歩き続け、お化け屋敷の前まで来ると俺達は立ち止まる。

 入場する時間が遅かったこともあり、お化け屋敷には既に30分以上待ちそうなぐらい人が並んでいた。

「結構、人いるね。やめておく?」と、俺が質問すると、星恵ちゃんは俺を引っ張りながら「せっかくだから行こうよ」

「分かった。じゃあ並ぼう」
「うん!」

 俺達は列の最後尾に並ぶ──それにしても良く出来てた建物だな……本当に廃校のように見える。

「このお化け屋敷って確か、ホラー映画をもとにして作ってるんだよな?」
「そうそう。私、その映画を観てるんだけど──」
「どうした?」
「うぅん何でもない。どれだけ再現されているか楽しみって思って」
「そう。俺は初めてだから、もうドキドキしているよ」

「ふふ。ところでさ──」と、星恵ちゃんは世間話を始める。星恵ちゃんとの会話は楽しくて、あっという間に、自分たちの順番がやってきた。

 中に入るとヒンヤリ冷たい風が吹いてくる。

「おぉ。演出、凝ってるな」
「ねぇ、建物の中も本当の学校みたい」
「本当。夜の学校を歩いているみたいだ」

 星恵ちゃんと会話をしながら、ゆっくり廊下を歩いていると──突然、背中を何かで刺される!

「わぁ!!」

 驚きながら後ろを振り返ると、ブレザーの学生服を着た男が、押すと引っ込む玩具のナイフを両手で持って、震わせていた。

「お、お前が行けないんだからなッ!!」と学生服を着た男は走り去っていく。俺はポカァーン……と口を開けながら見送った。

「あー……びっくりした。あれは誰?」
「ナイフで刺して、呪いを広めていく役目の男の子」
「へぇー……似てるの?」
「痩せ型で長髪の所が似てるよ」
「そ、そう……」

 俺はそう返事をして、歩き始める。星恵ちゃんは冷静に会話をしていたけど、怖かった様で、俺に引っ付きながら歩いていた──。

 奥に進めば進む程、仕掛けが凝っていて、俺は何度も驚かされる。廊下を歩いていると突然、ガラスが割れる音がして、俺はビクッと体を震わせた。

「おわぁお!! いきなりガラスが割れる音なんて鳴らすなよ!!」

「きゃ~、怖いぃ~……」と、星恵ちゃんは叫び? ながら、俺の腕に体を密着させる。

 それは嬉しい! 嬉しいけど!! さっきから気になることがある──。

「ねぇ、怖いから早く行こうよ」
「あ、うん」

 ──数分程、歩いているとゴールの下駄箱が見えてくる。お化け屋敷の外に出ると俺は「これはヤバいな。高校の時に行ってたら、絶対、夜一人で歩けなくなってた」

「ねぇ。怖かった!」と星恵ちゃんは言っているが、全然、怖そうだったように見えない。それどころか、満足そうに笑顔を浮かべていた。

「──ねぇ、星恵ちゃん」
「なに?」
「もしかしてだけど……お化け屋敷に誘ったのは、引っ付いていたかったからなんじゃ……」

 ここで俺はお化け屋敷の中で気になったことを質問してみる。こちらに顔を向けていた星恵ちゃんは直ぐに顔を逸らし、目を泳がせながら「そ、そんな訳ないじゃん! なに言っちゃってんのさ!」と、動揺している様子を見せた。

 当たりだな。セリフっぽい怖がり方をしていたから、そうだと思った。

「なんだぁ、違ったのか。ごめんごめん」
「まったく……」
「次はどうする?」

 星恵ちゃんは腕時計をみると「そうね……良い時間帯だし、御昼にしましょ!」

「いいね。何食べる?」
「私はピザが良い!」
「ピザかぁ、あるかな?」
「うん。さっき待っている間にパンフレットを確認したんだけど、入り口付近にキッチンカーがあって、そこで売ってるみたい」
「さすが。じゃあ、そこに行ってみようか」
「うん!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

処理中です...