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恋愛と生活

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12月のある日、周平と侑は張り切ってちらし寿司を作っていた。
なぜなら大和の誕生日だから、けれど誕生日当日はお泊まりデートだという。
まぁそうなるわな、と二人は快く送り出し帰ってきた大和を祝うべきちらし寿司を作っていた。

「とんでもない豪華なホテルとか泊まってそう」
「ヘリコプターで夜景見るとかそんなんしてそう」
「百本の薔薇とか」
「ケーキの中から指輪とか」

ぶふっぶふっと笑って最終的にはケラケラと笑いながら二人はちらし寿司を作った。
桶いっぱいに作ったちらし寿司、侑は爺におすそわけすると皿に盛りまたもや塀を乗り越えて行った。
オーブンからはシフォンケーキの焼けるいい匂いがして、あとは大和が帰ってくるのを待つだけだ。
100円ショップで買った2と1の風船を膨らませていると侑が帰ってきた。
手にはかりんとうの袋を持って、なんなら食べていた。

「また物々交換したん?」
「おぉー」

侑はしょっちゅう爺におすそわけを持っていく、爺はいらん!と遠慮するので侑は爺宅にあるお菓子を交換だと言ってもらってくるのだ。
ポリポリ齧りながら焼きあがったシフォンケーキの出来栄えを見て、いいじゃんと侑は言った。

「ペー助、発情期ヒート近いけど、武さんと番うの?」
「んー、うん、多分」
「なんで多分?」
「なんか、やるぞ!って意気込むの恥ずかしいじゃんか」
「そんなもん?」
「なんか、こう、自然に・・・」

ピュウッと侑は口笛を吹いて周平に身を寄せてぐりぐりと肘でつついた。
ロマンチックぅ~と言いながら。


こたつの真ん中にちらし寿司を置き、会社帰りの武尊が買ってきたローストビーフもお土産の漬物も並んでいた。
カラカラと玄関の引き戸が開く音がして、ただいまの声が聞こえたと同時に周平と侑は飛び出した。

「「 おっかえりーっ!! 」」

パンパン!とクラッカーを鳴らしながら飛び出した二人は、大和の顔を見てポロと手に持ったクラッカーを落とした。

「やまち、どうした?」
「なんかあった?」

玄関口に立つ大和の表情は硬い。
バタバタと駆けつけて靴を脱がし、トートバッグを引き取りリビングへと誘導する。

「あ、ちらし寿司だぁ」
「やまち好きだろ?」
「シフォンケーキはあっくんが焼いたんだよ」
「大和くん、お誕生日おめでとう」

当然のように武尊はこたつに座っていて、ローストビーフは僕が用意したよと得意気だった。
で、どうしたの?とちらし寿司をよそいながら周平が聞く。
とりあえず食べよう、とみんなしていただきますをしたところだ。

「あのさ、誕生日プレゼントがさ」
「なに、いらんもんだった?」
「ダサかった?」

そうじゃなくて、と大和はうろうろと視線をさまよわせてから意を決したように言った。

「土地」

「「 もち? 」」

「違う、土地」

「「 とち? 」」

「そう、土地!地面!新築の家!」

大和にしては珍しく大声を出してから、はぁと嘆息して大和はちらし寿司を口にいれた。
混ぜ込んであるとびこがプチプチして、酢漬けの蓮根は花形で美味しいし可愛らしい。

「地面もらったん?」
「いや、正確には卯花さんが土地買ってそこに家を建てるんだって。で、ゆくゆくはそこの名義が僕になるって」
「なんつうか・・・すげぇ話だな」
「スーパー行く途中に更地あったじゃない?」
「あぁ、東雲荘があったとこ・・・え?あそこ?」

コクリと頷いて今度はローストビーフを口にいれ、美味しいと大和は武尊に礼を言う。
どういたしまして、と言う武尊を周平はじっと見つめていた。

「まぁでもくれるっつうなら貰えばいいじゃん」
「あっくん!そんな、そんな、だって」
「プロポーズでもされた?」

カシャンと大和の手から箸が落ちる。
マジで?と侑は目を丸くして、周平も自分で聞いたことだがぽかんと口を開けてしまった。

「上にいけばいくほど独占欲も執着もすごいって習ったけど、目の当たりにするとすげぇんだな」
「でも、なんだってあそこ?」
「ここから近いからって。いつでもペー助達に会えるよって」
「いい奴だな、卯花」

侑はにししと笑うが大和は笑えない。
家だの土地だの結婚だのと言われても、頭がついていかない。
ついこの間、気持ちも体も結ばれたと思っていたのに。
いつまでも待つよ、と卯花は言っていた。
知ってると思うけど執拗いんだ、とも言って笑っていた。

「卯花、嫌いなん?」
「嫌いじゃないよ!ただ・・・」
「ただ?」

あまりに違いすぎるのでは?と思うのだ。
こんな歳下の子どもよりもっと落ち着いた大人の方がいいかもしれない。
生活水準の差も今は気にならなくても、この先はそれがネックになってくるかもしれない。
現に誕生日ディナーと言われて連れていかれたレストランからは東京タワーが見えた。
招かれた自宅は所謂タワマンというやつの上階で、マンションなのに玄関先には小さな庭があった。
シンプルで何もかもがお洒落に感じる部屋、ごちゃごちゃとしている竹田家とは正反対で大和はなんだか落ち着かなかった。

「頭がパンクしそう」

ペタリと天板に頬をつけた大和を、周平と侑はよしよしと頭を撫で続けた。

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