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巣ごもりプラン B

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ピカピカの鍋にフライパン、炊飯器に二人分の食器、極めつけはミキサーまであった。
どこに?武尊のなーんにもなかったキッチンに、だ。
周平の発情期ヒートに備えて二人は、武尊のマンションに来ていた。

「すごい、全部用意したの?」
「うん、だから任せて!」

笑った顔はペカリと輝いていて、周平の胸がきゅうと締め付けられた。
侑や大和に尻を叩かれ、嫌々やっていると思っていたがなかなかどうしてやる気満々な顔をしている。
空っぽに近かった冷蔵庫に作り置きおかずのタッパーを詰めて、果物やゼリーなどを詰めていく。
米や小麦粉、調味料なども揃っていてこのままここで住めそうだなぁと思う。

「この間、こっちに帰ってきてたのってこのため?」
「そうだよ。シーツも新しくしたし替えもたくさん用意した」
「ちょ、そういうのは恥ずかしい」

身を捩ってみるがバックハグされた状態から抜けでるのは難しい。
予定では早ければ明日、予定通りなら明後日から発情期ヒートだ。
管理しているアプリからもそう通知が入っている。
果たして自分は上手く発情できるのだろうか。
いけるいける!と踊りだしそうなくらい楽観的な自分と、もし上手く出来なかったらと埋まるための穴を掘っている自分がいる。

「・・・シュウ?」
「武さん、上手くできるかな・・・」
「取扱説明書、読み込んだから大丈夫だよ?」
「家事じゃないよ」

はぁーと大きく息を吐いて、座ろうと周平は腹にまわる腕をぽんぽんと叩いた。
新品のケトルで湯を沸かしコーヒーを淹れるのは武尊だ。
砂糖もミルクもたっぷり入れた周平仕様のコーヒー。

「俺さ、フェロモン欠乏症って言ったじゃん?」
「うん?」
「いっぱい準備したけど、上手く発情できるかな・・・」
「上手い下手とかあるの?」

んー、とマグカップを抱えたまま背中にぐたりともたれかかる。
初めての発情期ヒートはなんともあっさりとしたものだった。
それ故にフェロモン欠乏症と診断されたのだ。
元々欠乏してるのに抑制剤を飲むのはよろしくないと飲んだことはない。
武尊はいい匂いがすると、いつもふんふんと嗅いでくるが自覚はない。
相性の良いアルファがいれば、と医者に言われた。
それが武尊ならいいのに、と思う。

「なにしたら上手いの?」
「こう、なんか、誘惑したり?」

預けた胸が小刻みに揺れているので笑ってるのが丸わかりだ。
こっちは真剣なのに、とむむむと周平は眉根を寄せる。

「・・・笑うなよ」
「ごめん、あんまり可愛いこと言うもんだから」

くっくっと笑うのに呆れて周平は甘いコーヒーをずずずと啜った。
真剣なのに、ともう一度言えばごめんとまた笑われる。

「あっくんはさぁ、すんごい可愛くなんの。やまちはなんか色気がすごい」
「うん、シュウは?」
「なんか、普通」
「全然普通じゃないけどなぁ」

腹の手がごそごそとトレーナーの裾から入り込んできた。
臍の周りをくるくると撫でて、脇腹をさわさわと触り薄い胸に辿り着く。
擽ったくてマグカップのコーヒーが揺れる。
それがわかっているのに項に何度もキスを落とし、耳朶を食んできて尻には硬いモノが当たっていた。

「ほら、ちょっと触るだけでこうなる」

キュッと乳首を摘まれれば、あっと吐息が漏れた。
武尊に触れられてすっかり感じてしまうようになったそこは、ピリピリと痺れて硬くなっていくのが自分でもわかる。

「もう抱いてもいい?」
「・・・ダメ」
「なんで?」
「ご飯食べたいし、お風呂にも入りたい」

えー、とごねる武尊を置いて武尊は立ち上がりキッチンに向かった。
一通りのキッチン道具が揃っている、発情期がくる前に武尊に美味しいものを食べさせてあげたい。
水を入れた鍋を火にかけて、中華にしようかなぁと周平は米を洗った。


その頃、大和はとある喫茶店でふかふかのパンケーキを食べていた。
夕食でもどうか、と誘われて出てきたがトラブルがあって遅刻するそうだ。
窓際の席からは道を挟んだ向こう側の卯花出版の高い立派なビルが見える。
すごい人なんだよなぁ、と改めて思いながら大和はパンケーキにたっぷりシロップをかけた。

「あっくん、一人で大丈夫かな・・・」

周平が武尊のマンションに行ってしまい、大和はこの誘いを断ろうと思ったが他ならぬ侑が行ってこいよと背中を押した。
どんな顔をして会えばいいのかな、しゅわしゅわと口の中で溶けていくパンケーキを食べながら通りを見るとなしに見ていると知った顔があった。
モデルのHIROが満面の笑みで背の高い男と腕を組んでビルから出てきた。
そのまま待ち構えていたピカピカの車に乗り込んでいった。

「・・・そうなんだぁ」

やっぱりいろいろとすごい人なんだなぁと大和は甘いカフェオレを飲んで人心地ついた。



※別のことしてて予約忘れてました。
本当に申し訳ありません。
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