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愛の三兄弟
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ジェラールがニコラスと結ばれた時、コックスヒル邸ではちょっとした騒ぎになった。
まず第一に、あれは誰だ?ということだ。
ジェラールのジャケットをすっぽり被って抱かれた彼は一体誰なのか?
「私の番だよ」
微笑むジェラールはいつものそれに見えるが、父も古株の使用人も、お前も誰だ?と思っていた。
それくらいジェラールの纏う雰囲気が違う。
声をかけようにもかけられず、寝室へ赴いてノックしようものなら凄まじい威圧フェロモンが飛んでくる。
仕方ないので使用人らは替えのリネン類と食事を寝室前に置くのみになった。
しかしこうなってしまって三日、未だ籠りきりの次代の当主に使用人達の不安は募った。
「それで、お父様がいらっしゃったのですね?」
「うん、先触れもなくすまない」
ぺろりと手で顔を舐める父にそんなのいいんですよ、とリュカは言う。
それにしてもまさかお兄様がニコラス様に婚約を打診して断られて、いくらもしないうちに番を連れて帰るなんてとリュカはぬるくなった茶をすすりながら思った。
失恋の辛さを乗り越えられずどこぞから誰かを攫ってきてしまったのだろうか?
お兄様に限ってそんなことは、と思うがリュカも不安が拭えない。
「その、アイザック君は強いだろう?あの威圧に負けないと思うんだ。だから、様子を見に来てもらえないかな?」
「そういうことでしたら、まず僕が行きます」
「そうか?」
こくりと頷いたリュカは、早い方がいいとすぐさまコックスヒル邸に向かった。
しんと静まりかえった勝手知ったる廊下をリュカはジェラールへの寝室に向かって歩く。
「お兄様、リュカです!」
ドンドンとノックをして待つ。
ガタガタと小さな音が聞こえるから、おっつけ出てくるだろうとリュカがのんびりと待っていると、細くその扉が開いた。
「リュカ?」
「お兄様、どなたが中にいらっしゃるのです?お父様もみんなも心配しています」
「心配することなんてないよ」
「では、どこかから攫ってきたわけではないのですね?犯罪ですよ、それは」
「ニコラス君だよ」
「は?お断りされたのでは?」
「・・・ちょっと行き違いがあっただけで同意の上だから」
それじゃ、と閉めようとする扉にリュカは足を突っ込んだ。
「本当に無理強いしてるわけではないのですね?」
「そう言ってるだろ」
「・・・では、その、労わってあげてくださいね?体への負担はΩの方が・・・」
「ニコラス君は鍛えてるからね。リュカみたいに軟弱じゃないから」
なんだそれは!とリュカがぷぅと頬を膨らませたと同時に強引に扉が閉まってしまった。
その扉にリュカは盛大にあっかんべーとして、そしてしょんぼりと肩を落とした。
「そうか・・・それが原因で今日はこんなに甘えっ子なの?」
コックスヒル邸から帰ったリュカは今か今かとアイザックの帰りを待ち侘び、帰ってきたアイザックに抱きついてべしょべしょと泣いた。
「お兄様に、あんな風に拒絶されるなんてっ・・・お兄様はいつもいつも優しくてっ」
「義兄上だってαだったってことだよ。番を持って気が立ってたんだろう」
アイザックはそう言ってリュカを抱きしめた。
それにしても義兄上がニコラスと番うなんてなぁ、と考える。
話を聞くと何もかもをすっ飛ばしている。
婚約も婚姻も、そもそもお付き合いをしていたのだろうか。
知っているジェラールらしからぬ強引さに、やはりαなのだなぁとアイザックは思い至った。
「リュカ?リュカは俺のこと好き?」
「だいすきです」
「幸せ?」
「しあわせです」
「じゃ、義兄上にもそういう相手ができたことを祝福してあげないと」
あい、と顔を上げるリュカの涙を拭いアイザックはキスをした。
こんな風にリュカを泣かせたジェラールに嫉妬のような、羨望のような気持ちがある。
リュカの全てを独り占めしたい。
「リュカ、今度旅行に行こうか」
「旅行?」
「トルーマン領の温泉に行こう」
涙で濡れていた顔がみるみる晴れていく。
この顔が好きなんだ、とアイザックは思う。
「温泉ってあの地面から熱い湯が湧いてるっていう・・・」
「そう、外で景色を見ながら湯に浸かれたりするよ」
「行く!!」
ぱぁっと雨上がりの太陽のように輝いた笑顔を見せたリュカはアイザックに口付け・・・られなかった。
「話は聞かせてもらったぁっ!!」
ドカンと扉が開きナルシュが飛び込んできたのである。
ナルシュは今、侯爵家で世話になっている。
エルドリッジが離さなかったからだ。
「小兄様、ノックしてって」
「リュカー、聞いてくれよぉ」
ナルシュはアイザックに抱きつくリュカに抱きついた。
こめかみがピクピクと動いているアイザックは無視である。
「エルが変態なんだ」
「まぁ、どんな?」
「猫の耳を付けようとしたり、尻が丸見えの下着を履かせようとするんだ」
性に対して積極的なナルシュではあるが、倒錯的なことにはめっぽう弱かった。
無いと思われた羞恥心は全てここに集約されている。
「着ればいいじゃない。喜ぶよ?」
ねぇ?とリュカはアイザックを見た。
やだぁとおいおいと嘘泣きをしていたナルシュは、お前か?とアイザックを睨みつけた。
「エルに変なことを教えるな!」
「知るか」
「だから!」
「だから?」
「俺もその温泉に行く!」
拳を高く掲げて立ち上がったナルシュに、なぜだからなのかわからない。
「じゃ、俺も行く」
戸口にはいつの間にかエルドリッジが佇んでおり、つかつかと歩み寄ってナルシュの首根っこを引っ掴んだ。
「うちのがすまないな」
全くすまなそうでない顔で言ったエルドリッジはそのままずるずるとナルシュを引きずって帰って行った。
ぎゃあぎゃあ、と騒ぐ声が次第に小さくなっていく。
「ほんとについてくるのかな?」
はぁぁと大きく嘆息したアイザックは脱力し、リュカを抱いたままソファにころんと横になった。
波乱万丈の予感にぶるりと震え、腕の中の愛しい人に縋るように抱きしめることしかできない。
その予感が的中するのはまだ少し先の話。
※兄弟編終わりです。
読んでくださりありがとうございます(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”
温泉編は需要ありますか?ありますね?←
引き続きよろしくお願いします!
今のところ、がっつりコメディになってます(* 'ᵕ' )☆
まず第一に、あれは誰だ?ということだ。
ジェラールのジャケットをすっぽり被って抱かれた彼は一体誰なのか?
「私の番だよ」
微笑むジェラールはいつものそれに見えるが、父も古株の使用人も、お前も誰だ?と思っていた。
それくらいジェラールの纏う雰囲気が違う。
声をかけようにもかけられず、寝室へ赴いてノックしようものなら凄まじい威圧フェロモンが飛んでくる。
仕方ないので使用人らは替えのリネン類と食事を寝室前に置くのみになった。
しかしこうなってしまって三日、未だ籠りきりの次代の当主に使用人達の不安は募った。
「それで、お父様がいらっしゃったのですね?」
「うん、先触れもなくすまない」
ぺろりと手で顔を舐める父にそんなのいいんですよ、とリュカは言う。
それにしてもまさかお兄様がニコラス様に婚約を打診して断られて、いくらもしないうちに番を連れて帰るなんてとリュカはぬるくなった茶をすすりながら思った。
失恋の辛さを乗り越えられずどこぞから誰かを攫ってきてしまったのだろうか?
お兄様に限ってそんなことは、と思うがリュカも不安が拭えない。
「その、アイザック君は強いだろう?あの威圧に負けないと思うんだ。だから、様子を見に来てもらえないかな?」
「そういうことでしたら、まず僕が行きます」
「そうか?」
こくりと頷いたリュカは、早い方がいいとすぐさまコックスヒル邸に向かった。
しんと静まりかえった勝手知ったる廊下をリュカはジェラールへの寝室に向かって歩く。
「お兄様、リュカです!」
ドンドンとノックをして待つ。
ガタガタと小さな音が聞こえるから、おっつけ出てくるだろうとリュカがのんびりと待っていると、細くその扉が開いた。
「リュカ?」
「お兄様、どなたが中にいらっしゃるのです?お父様もみんなも心配しています」
「心配することなんてないよ」
「では、どこかから攫ってきたわけではないのですね?犯罪ですよ、それは」
「ニコラス君だよ」
「は?お断りされたのでは?」
「・・・ちょっと行き違いがあっただけで同意の上だから」
それじゃ、と閉めようとする扉にリュカは足を突っ込んだ。
「本当に無理強いしてるわけではないのですね?」
「そう言ってるだろ」
「・・・では、その、労わってあげてくださいね?体への負担はΩの方が・・・」
「ニコラス君は鍛えてるからね。リュカみたいに軟弱じゃないから」
なんだそれは!とリュカがぷぅと頬を膨らませたと同時に強引に扉が閉まってしまった。
その扉にリュカは盛大にあっかんべーとして、そしてしょんぼりと肩を落とした。
「そうか・・・それが原因で今日はこんなに甘えっ子なの?」
コックスヒル邸から帰ったリュカは今か今かとアイザックの帰りを待ち侘び、帰ってきたアイザックに抱きついてべしょべしょと泣いた。
「お兄様に、あんな風に拒絶されるなんてっ・・・お兄様はいつもいつも優しくてっ」
「義兄上だってαだったってことだよ。番を持って気が立ってたんだろう」
アイザックはそう言ってリュカを抱きしめた。
それにしても義兄上がニコラスと番うなんてなぁ、と考える。
話を聞くと何もかもをすっ飛ばしている。
婚約も婚姻も、そもそもお付き合いをしていたのだろうか。
知っているジェラールらしからぬ強引さに、やはりαなのだなぁとアイザックは思い至った。
「リュカ?リュカは俺のこと好き?」
「だいすきです」
「幸せ?」
「しあわせです」
「じゃ、義兄上にもそういう相手ができたことを祝福してあげないと」
あい、と顔を上げるリュカの涙を拭いアイザックはキスをした。
こんな風にリュカを泣かせたジェラールに嫉妬のような、羨望のような気持ちがある。
リュカの全てを独り占めしたい。
「リュカ、今度旅行に行こうか」
「旅行?」
「トルーマン領の温泉に行こう」
涙で濡れていた顔がみるみる晴れていく。
この顔が好きなんだ、とアイザックは思う。
「温泉ってあの地面から熱い湯が湧いてるっていう・・・」
「そう、外で景色を見ながら湯に浸かれたりするよ」
「行く!!」
ぱぁっと雨上がりの太陽のように輝いた笑顔を見せたリュカはアイザックに口付け・・・られなかった。
「話は聞かせてもらったぁっ!!」
ドカンと扉が開きナルシュが飛び込んできたのである。
ナルシュは今、侯爵家で世話になっている。
エルドリッジが離さなかったからだ。
「小兄様、ノックしてって」
「リュカー、聞いてくれよぉ」
ナルシュはアイザックに抱きつくリュカに抱きついた。
こめかみがピクピクと動いているアイザックは無視である。
「エルが変態なんだ」
「まぁ、どんな?」
「猫の耳を付けようとしたり、尻が丸見えの下着を履かせようとするんだ」
性に対して積極的なナルシュではあるが、倒錯的なことにはめっぽう弱かった。
無いと思われた羞恥心は全てここに集約されている。
「着ればいいじゃない。喜ぶよ?」
ねぇ?とリュカはアイザックを見た。
やだぁとおいおいと嘘泣きをしていたナルシュは、お前か?とアイザックを睨みつけた。
「エルに変なことを教えるな!」
「知るか」
「だから!」
「だから?」
「俺もその温泉に行く!」
拳を高く掲げて立ち上がったナルシュに、なぜだからなのかわからない。
「じゃ、俺も行く」
戸口にはいつの間にかエルドリッジが佇んでおり、つかつかと歩み寄ってナルシュの首根っこを引っ掴んだ。
「うちのがすまないな」
全くすまなそうでない顔で言ったエルドリッジはそのままずるずるとナルシュを引きずって帰って行った。
ぎゃあぎゃあ、と騒ぐ声が次第に小さくなっていく。
「ほんとについてくるのかな?」
はぁぁと大きく嘆息したアイザックは脱力し、リュカを抱いたままソファにころんと横になった。
波乱万丈の予感にぶるりと震え、腕の中の愛しい人に縋るように抱きしめることしかできない。
その予感が的中するのはまだ少し先の話。
※兄弟編終わりです。
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