【完結】悪役令嬢の猫かぶり

谷絵 ちぐり

文字の大きさ
30 / 52

夢は見るもんじゃねぇ叶えるもんだ

しおりを挟む
「アーリンが可愛すぎる!!!」

説明しよう、アーリンとはアリスのことである。※オリビア命名
記念すべき第一回のランチタイムよりこっち、第二回第三回第四回・・・と学園がある日は必ず昼食を共にしているイザベル達であった。
当初は遠慮がちであったアリスも回を重ねる事に打ち解け愛称呼びにまで至ったのである。
そして、控えめだが芯があり救国というクソデカ任務に対しても前向きに向きあい日々精進する超絶美少女にオチない輩はいるのであろうか、いやいない。
悪役令嬢達はすっかりヒロインに攻略されていた。
あれ?ゲームの趣旨変わってない?なんて疑問は遥か彼方。
今日も今日とて、楽しいランチタイムである。

「ベル!そろそろ僕らも昼食を共にしてもいいじゃないか!」
「殿下、これは女子会です」
「女子会に参加したいってや~らし~」
オリビアの攻撃!
「ぐっ・・・そんな、そんなやらしい気持ちなんてない!」
嘘である。やらしい気持ちでいっぱいである。
「ほら、これあげますからその辺で食べてなさい」
犬かな?
「あ、あの、私はかまいませんので皆で一緒にたべませんか?」
「あぁ、アーリンなんて優しいの。気にしなくていいのよ」
ヴィオレッタとエリーゼがアリスを挟んで抱きしめる。
茶番である。
この茶番コントは毎回おこなわれている。

「殿下、そろそろ行きましょう」
声をかけたのはレオナルド・グランデ。
東の辺境伯グランデ家の嫡男で、結界修復メンバーの一人でもある。
辺境で剣の腕は鍛えているので、魔術科を専攻しアリスを支えているのだ。
入学式で拉致られたイザベル達を見送るアリスの傍に控えていたのがこの男である。
隙あらば盗み聞きをしようとするアルフレッド達を引っ張り、姿は見えども声は聞こえずの絶妙な位置で食事をさせる、なかなか出来た男なのである。

「あの、毎回思うんですが視線が痛いです・・・」
「アーリン、気にしちゃ駄目よ。じゃがいもやかぼちゃだと思えばいいから」
一国の王子をじゃがいも扱いするオリビアは今日も絶好調である。
「でも、その、言いづらいんですが・・・学園終わってからの鍛錬場ですごいライバル視されてるというか・・・なんの話をしてるのか?とかよく聞かれてて・・・あ!言ってませんから!」
「馬鹿ねぇ。私達がアーリンを好きな気持ちと、アル達を好きな気持ちは全然違うのに」
イザベルの言葉に頷くヴィオレッタ達。
この時、彼らが読唇術を会得していれば狂喜乱舞しただろう。悲しいかな、彼らにそんなスキルはない。ただただじっと見つめるだけである。

「アーリンは誰か気になる人いないの?」
「オンちゃん、ぶっ込んできたねー」
「恋バナしたっていいじゃない。乙女だもの」
「おりをかよ」
正ヒロインアリスの前では猫も裸足で逃げ出すのですっかり素で話す4人である。
ちなみに猫が逃げ出したのは第二回ランチである。早い。
「レオナルド様は?」
「ん?いい人ですよ?」
「レオナルド様、かっこいいよね?」
「そうですねぇ、でもそれより・・・」
「誰かいるのね?」
「オンちゃん、目を光らすな」
頬を赤らめ、モジモジするアリス。
満面の笑みのイザベル達。
「・・・あの、魔術師団にいるジャンさんって人がシムにちょっと似てて・・・」
「「「「ほーん?」」」」
「どんな人?」
「話したことはないの。最初に少し挨拶しただけで。でも、鍛錬場で見かけたりとか、あと鍛錬場で転びそうになった時に助けてもらって『気をつけてね』って・・・」
キャー恥ずかしい、と両手を頬にあて首をふるふると振るアリスは可愛さが限界突破していた。
「魔術師団のジャンね」
「エリちゃん、ハルちんから情報収集!」
「任せとけ!」

「合コンじゃーーーーっ!!!」

立ち上がり、拳を握りしめ天を仰ぎ叫ぶオリビア。
ここが学園だということをすっかり忘れていらっしゃる。


そんなこんなで夏の合コン祭り開幕です☆





蛇足であるが、レオナルド・グランデは隠し攻略対象者である。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件

ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。 スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。 しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。 一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。 「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。 これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

婚約破棄の、その後は

冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。 身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが… 全九話。 「小説家になろう」にも掲載しています。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。 ※初めての悪役令嬢物です。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

乙女ゲームっぽい世界に転生したけど何もかもうろ覚え!~たぶん悪役令嬢だと思うけど自信が無い~

天木奏音
恋愛
雨の日に滑って転んで頭を打った私は、気付いたら公爵令嬢ヴィオレッタに転生していた。 どうやらここは前世親しんだ乙女ゲームかラノベの世界っぽいけど、疲れ切ったアラフォーのうろんな記憶力では何の作品の世界か特定できない。 鑑で見た感じ、どう見ても悪役令嬢顔なヴィオレッタ。このままだと破滅一直線!?ヒロインっぽい子を探して仲良くなって、この世界では平穏無事に長生きしてみせます! ※他サイトにも掲載しています

お城のお針子~キラふわな仕事だと思ってたのになんか違った!~

おきょう
恋愛
突然の婚約破棄をされてから一年半。元婚約者はもう結婚し、子供まで出来たというのに、エリーはまだ立ち直れずにモヤモヤとした日々を過ごしていた。 そんなエリーの元に降ってきたのは、城からの針子としての就職案内。この鬱々とした毎日から離れられるならと行くことに決めたが、待っていたのは兵が破いた訓練着の修繕の仕事だった。 「可愛いドレスが作りたかったのに!」とがっかりしつつ、エリーは汗臭く泥臭い訓練着を一心不乱に縫いまくる。 いつかキラキラふわふわなドレスを作れることを夢見つつ。 ※他サイトに掲載していたものの改稿版になります。

処理中です...