ようこそ!追放令嬢様!

谷絵 ちぐり

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都合の良い夢

シェリルは湯に浸かっていた。
それもアンナと一緒に。

「お嬢様気持ちいいですねぇ。これは薬草ですかね?独特の匂いがします」
「ほんと変わった匂いね」

ふぅー、と気持ちのいい吐息を吐き出して・・・・ここは一体どこなんだろう。


時は少しだけ遡る──

歓迎すると言って抱きついて来た女にあれよあれよという間に幌馬車に乗せられた。
今度こそ牢に収監されるのだ、シェリルはそう思った。
なんとかアンナだけでも助けてほしい。
なんと言えばいいのだろう、考えていると。

「マルティナ・トルーマンよ。よろしくね」

パチリとウインクして、シェリルとあなたはだあれ?と首を傾げた。

「侍女のアンナと申します」

アンナは、よろしくお願い致しますと深々と頭を下げた。
こちらこそ、とマルティナは微笑んだ。

「そんな顔しなくても大丈夫よ。誰も取って食いやしないわ」

と、手をヒラヒラしながらマルティナは笑った。

「あなた達、不安で不思議でわけがわからないでしょう?」

シェリルとアンナは大きく頷く。
んっふふ、とマルティナは不気味に笑った。

「まだ教えてあげなーい」

足を組み膝の上に腕を立て手のひらを皿にして顎を乗せるマルティナ。
観察するように見つめられるシェリル達。
射抜くように見つめられ、怖いのに目が離せない。
音もなく滑るように馬車が止まった。
着いた先は大きなお屋敷。

「二名様ご案内ー!」

ほら降りて降りて、と追い立てられ屋敷に入り軽食を食べさせられ湯殿に放り込まれた。
そして、冒頭に戻る。

湯を出ると、ふかふかのタオルと肌触りの柔らかい寝衣が置いてあった。
見渡してもそれしかなく、それを着る二人。
湯殿を出ると今度はまた有無を言わせずに、客室というような部屋に通される。
大きな寝台に二人並べて寝かされる。

「今日は疲れたでしょう?お腹が満たされて湯につかって、そしたらあとはもう寝るだけよ。ゆっくりお休みなさいな」

じゃあね、とマルティナは部屋を出ていく。
部屋には香が焚いてあるようで香りに体が勝手に寝台に沈んでいく。

「・・・アンナ」
「お嬢様・・・」

瞼が重い。
自分達の乗ってきた船はどこかで座礁してしまったのかもしれない。
そして、海に投げ出され死んでしまったのだ。
本当なら今は魚の餌になってるのよ。
だから、これは夢。
都合の良い夢。
だってこんなにも落ち着いたのは久しぶりだもの。


寄り添って眠るシェリルとアンナ。
お互いを確かめあうように手を握りあって。

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