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何事もタイミング
んっ・・・
シェリルは目が覚めるとぼやけた視界がはっきりするまで動けなかった。
何か衝撃的なことを聞いたような気がする。
さて、それはなんだったか。
なにが?全部が?
自分は何に衝撃を受けたのだろうか。
この天井を見るのは2回目になるような・・・
ふと、隣を見るとアンナが寝息をたてていて・・・
それで、こちら側にはサイドテーブルが・・・
「起きた?」
「ヒィイイィィイィッッ・・・」
「え?酷くない?」
アンナと逆方向を向いたシェリルの目に入ったのはニヤリと笑うマルティナだった。
しかもこの悪魔、自分も同じようにベットに入りシェリルにぴったり寄り添っている。
鼻息のかかる距離で見つめられて悲鳴を上げない令嬢がいるだろうか。
もう一度気絶しなかったシェリルを褒めてやりたい。
「おい、こら、離れろ、ばかマル!」
男の低い声が聞こえたと思うと、マルティナの頭を大きな手が掴みそのまま持ち上げていった。
その持ち上がった先にそろそろと視線を移すシェリル。
そこには茶髪茶目の青年がマルティナの頭を持ち上げ今にも頭突きする所であった。
ゴドン、という鈍い音と目の前で曲りなりにも女が男に暴力を振るわれたことに対してシェリルはまたしても倒れこんだ。
んっ・・・
シェリルは目を覚ました。
この天井はもう知ってる。
アンナを見るとまだ寝息をたてている。
そして恐る恐る反対側を見る。
誰もいない。ホッとしたシェリルはふと足元が重いことに気づいた。
ゆっくり目線を下げると悪魔がうつ伏せになっている。
「・・・っ!死っ」
「死んでねーから」
少し聞き覚えのあるような、と思いながらシェリルが声のする方を向くとそこには頭突き青年が立っていた。
「は、犯」
「だから死んでねーから」
「ごごごごごめんな、、さい」
「おう」
頭突き青年はくるりと背中を向けてソファセットに向かう。
そちらに目をやると新たな女が二人座っていた。
女二人は二人とも濃紺のワンピースに白いエプロン。
メイドのようだが、なぜ座ってお菓子(っぽいなにか)を食べているのだろう、シェリルは疑問に思う。
紹介するな、と頭突き青年が言う。
「これがルナ」
「よっ、よろひふら」
と向かって右側の漆黒の髪を耳の下で切りそろえた女が口をもぐもぐさせながら手を振った。
「んで、こっちがカーラ。俺の女」
「ども、俺の女のカーラです」
と向かって左側の巨乳の女がぺこりと頭を下げた。
「で、俺がニーサン。よろしくシェリル」
と、頭突き青年改めニーサンが白い歯を出して笑う。
「シェ、シェリルです。よ、よろしくお願いします」
知ってる、と頷いてニーサンは伏しているマルティナに向かう。
「起きてんだろ、ばかマル」
ピクリとマルティナが反応する。
「シェリルに言ったのか?明日から学校の先生やってもらうって」
動かないマルティナ。
「言ってねーんだな。お前今日何してたんだよ」
バシッとマルティナの尻を叩くニーサン。
動かないマルティナの尻を二度三度と叩く。
それでもマルティナは動かない。
あのなシェリル、と頭をガシガシかきながらニーサンが振り向く。
シェリルは微笑んでニーサンを見ている。
「明日から、そこのアンナと一緒に学校で先生やってほしいンだわ。本土で教育受けてたろ?マナーとかそんなんを教えてやってほしいの」
シェリルは微笑んでいる。
「・・・聞いてる?」
「ニーサン、それ意識飛ばしてんじゃない?」
「は?いつ?」
「貴族のお嬢様にスパンキングは刺激強い」
マジかー、と座り込み顔を覆うニーサン。
ジョバンニの言ってた通りだね、とお茶をゴクゴク飲みながら笑うルナであった。
※『貴族の女はやたら倒れる、なんで?』
ジョバンニ語録第一巻16頁収録
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