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突撃☆隣の晩ごはん
『この島は本土と違う文化が発展してきました』
マルティナはそう言った。
それは食文化もそうだったのか、とシェリル達は思う。
それにしても目の前でコロッケというものを大口開けて食べているのは貴族令嬢なのだろうか。
「こちらがご飯と味噌汁で、こちらがコロッケです。これは付け合せのキャベツの千切り。これがほうれん草のおひたしで、きんぴらごぼうです」
「はぁ・・・そうですか」
ばあやが食事の説明をしてくれる。
二本の棒は箸というらしい。
白いものがご飯。
この薄茶のスープが味噌汁。
コロッケはよくわからない。
キャベツと言われたがこれはドルスでは?
ほうれん草と呼ばれるものはカナ菜だと思うのだが・・・
きんぴらごぼうに至ってはもうなにかわからない。
「お箸はまだ使えないと思うから使いやすいカトラリーで食べていいわよ」
言いながらマルティナはコロッケに黒いソースをかけている。
「あの、トルーマン公爵様と夫人は?」
屋敷の主がまだ来ていない。
それなのに先に食事をしてもいいのだろうか?
シェリルはソワソワ落ち着かなかった。
「ん?お父様?今日の朝に隣のアフィリアに行ったわよ。お母様が今そっちで遊んでるから」
「あーアレな。マル、ソースくれ」
ダイニングの食卓には当たり前のようにニーサン、ルナ、カーラ、ばあや、スティンが座り皆同じ食事をとっていた。
メイド服姿のルナ達をつい見てしまうシェリル。
「あ、気になる?これ趣味だから」
「本土の使用人可愛かった」
「カーラより可愛いのはいないよ」
隙あらば惚気けてんじゃねぇ、とマルティナが面白くなさそうに言う。
「お嬢様方、冷めてしまいますよ」
「せっかくこちらに来たんですから島のご飯に慣れてくれると嬉しいですよ、ばあやは」
スティンとばあやがシェリル達に優しく声をかけてくれる。
いただきます、とコロッケを小さく切ってそっと口に運ぶ。
「ばあや、コロッケもう無い?」
「残りは明日のお弁当でございます」
「あ、シェリル明日学校行こうね」
「チャリ乗れんの?」
「馬車出すわよ」
「なに着せていく?」
「第一印象大事」
あーでもない、こーでもないと話すマルティナ達。
よくもまぁそんなに話しながら食べれるなぁと目が丸くなるシェリル。
こんなに賑やかな食卓は初めてだ。
公爵家での食事は自室で一人だった。
アンナは傍にいたけれど一緒に食事をとることはなかった。
つい、クスリと笑みがこぼれてしまう。
「あら、そうやって自然に笑った方が可愛いわよ」
「そうだよ」
「シェリル緊張するのよくない」
「カーラの言う通りだ。ここではお前の好きにしろ。泣こうが笑おうが怒ろうが俺らが全部受け止めてやっから」
な、と見回すニーサン。
シェリルが同じように見回すと、マルティナもルナもカーラもばあやもスティンも頷いていた。・・・アンナまで。
島に来てまだ一日。そうまだたった一日。
その一日で、どれだけ驚かされただろう。
ここに来るまでの常識が全部飛んでいってしまった気がする。
たくさん俄には信じられないような話を聞いた。
自分がなぜ収容されないのかもわからない。
ニーサン達が何者なのかもわからない。
明日行く学校のこともわからない。
わからないことだらけだ。
だけど、初めて食べたコロッケはホクホクしていて美味しい。
みんなで同じ食事をとるのは楽しい。
そして、自然と笑ってしまう自分を少しだけ好きになった気がする。
「皆さんは全部説明が足りません!ね、アンナ?」
「はい。説明不足がすぎます」
つい、笑いながらも文句を言ってしまうシェリル。
「たいていのことは図書室のジョバンニが書いた本で解決するからだいじょーぶ」
そういうことじゃねぇ、とニーサンに額をペチンとされるマルティナ。
マルはばかだねぇ、とルナ。
マルちゃんとする、とカーラ。
微笑ましく見ているばあやとスティン。
たった一日、されど一日。
私はきっとここが好きになる。
もう本土には帰りたくない。
シェリルはそう思った。
マルティナはそう言った。
それは食文化もそうだったのか、とシェリル達は思う。
それにしても目の前でコロッケというものを大口開けて食べているのは貴族令嬢なのだろうか。
「こちらがご飯と味噌汁で、こちらがコロッケです。これは付け合せのキャベツの千切り。これがほうれん草のおひたしで、きんぴらごぼうです」
「はぁ・・・そうですか」
ばあやが食事の説明をしてくれる。
二本の棒は箸というらしい。
白いものがご飯。
この薄茶のスープが味噌汁。
コロッケはよくわからない。
キャベツと言われたがこれはドルスでは?
ほうれん草と呼ばれるものはカナ菜だと思うのだが・・・
きんぴらごぼうに至ってはもうなにかわからない。
「お箸はまだ使えないと思うから使いやすいカトラリーで食べていいわよ」
言いながらマルティナはコロッケに黒いソースをかけている。
「あの、トルーマン公爵様と夫人は?」
屋敷の主がまだ来ていない。
それなのに先に食事をしてもいいのだろうか?
シェリルはソワソワ落ち着かなかった。
「ん?お父様?今日の朝に隣のアフィリアに行ったわよ。お母様が今そっちで遊んでるから」
「あーアレな。マル、ソースくれ」
ダイニングの食卓には当たり前のようにニーサン、ルナ、カーラ、ばあや、スティンが座り皆同じ食事をとっていた。
メイド服姿のルナ達をつい見てしまうシェリル。
「あ、気になる?これ趣味だから」
「本土の使用人可愛かった」
「カーラより可愛いのはいないよ」
隙あらば惚気けてんじゃねぇ、とマルティナが面白くなさそうに言う。
「お嬢様方、冷めてしまいますよ」
「せっかくこちらに来たんですから島のご飯に慣れてくれると嬉しいですよ、ばあやは」
スティンとばあやがシェリル達に優しく声をかけてくれる。
いただきます、とコロッケを小さく切ってそっと口に運ぶ。
「ばあや、コロッケもう無い?」
「残りは明日のお弁当でございます」
「あ、シェリル明日学校行こうね」
「チャリ乗れんの?」
「馬車出すわよ」
「なに着せていく?」
「第一印象大事」
あーでもない、こーでもないと話すマルティナ達。
よくもまぁそんなに話しながら食べれるなぁと目が丸くなるシェリル。
こんなに賑やかな食卓は初めてだ。
公爵家での食事は自室で一人だった。
アンナは傍にいたけれど一緒に食事をとることはなかった。
つい、クスリと笑みがこぼれてしまう。
「あら、そうやって自然に笑った方が可愛いわよ」
「そうだよ」
「シェリル緊張するのよくない」
「カーラの言う通りだ。ここではお前の好きにしろ。泣こうが笑おうが怒ろうが俺らが全部受け止めてやっから」
な、と見回すニーサン。
シェリルが同じように見回すと、マルティナもルナもカーラもばあやもスティンも頷いていた。・・・アンナまで。
島に来てまだ一日。そうまだたった一日。
その一日で、どれだけ驚かされただろう。
ここに来るまでの常識が全部飛んでいってしまった気がする。
たくさん俄には信じられないような話を聞いた。
自分がなぜ収容されないのかもわからない。
ニーサン達が何者なのかもわからない。
明日行く学校のこともわからない。
わからないことだらけだ。
だけど、初めて食べたコロッケはホクホクしていて美味しい。
みんなで同じ食事をとるのは楽しい。
そして、自然と笑ってしまう自分を少しだけ好きになった気がする。
「皆さんは全部説明が足りません!ね、アンナ?」
「はい。説明不足がすぎます」
つい、笑いながらも文句を言ってしまうシェリル。
「たいていのことは図書室のジョバンニが書いた本で解決するからだいじょーぶ」
そういうことじゃねぇ、とニーサンに額をペチンとされるマルティナ。
マルはばかだねぇ、とルナ。
マルちゃんとする、とカーラ。
微笑ましく見ているばあやとスティン。
たった一日、されど一日。
私はきっとここが好きになる。
もう本土には帰りたくない。
シェリルはそう思った。
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