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第二幕
水曜日 ~the line of Fate Destiny~①
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■1■
身も心もクタクタだったにもかかわらず、殆ど眠れないまま俺は次の日の朝を迎えた。
朝飯を胃に流し込むようにして、何とか平らげた後、俺はバスに乗って街に向かった。
病み上がりなのに、と相変わらず、心配している爺ちゃんには「久しぶりにタワーレコードでも冷やかしてくる」と言っておいた。
正直、爺ちゃんに嘘をつくのは胸が痛む。とは言え、本当のことを話したところで、孫の頭がおかしくなったと余計な心労を掛けてしまうだけだ。
何しろ、俺自身、自分が本当に正気なのか、自信がもてないんだから。
と、まあ、そんなわけで――
俺は市役所の裏手にある停留所でバスを降りた。
そこから屋根付きの立体歩道橋をのぼって、市内を縦断する川の対岸へと移動。歩道橋から交差点に降り立ち、横断歩道の先に立つ、大きな石の鳥居を見上げる。その向こうに、大きな商店街の入り口があった。
商店街全体を覆っていると思しきアーケードには、文字看板が踊っていた。
夢ノ宮銀座、と。
「…………」
それを見上げながら、横断歩道を渡り鳥居の下を潜り抜け、商店街に足を踏み入れる。
まだ午前中ということもあってか、買い物客の姿はまばらだった。
重たい足取りで商店街の奥へ奥へと進む。
そんな俺の背中を、萎びたタバコ屋の番をしている、猿の干物のようなバア様がジッと見送っている。
この夢ノ宮銀座は、この辺りでは一番古く規模の大きな商店街らしい。
そのせいか、所謂、怪談話の類が後を絶たない。
曰く――
夜中になると中年女の顔をした猫が飲食店の裏をうろついているとか、血塗れの婆さんがカラッポのベビーカーを押しているとか、人間サイズの蝉だか蜻蛉だか分からない巨大な虫が電柱に張り付いているとか、酔って刃傷沙汰を起こし相打ちで死んだチンピラ二人が幽霊になった今も路地裏で喧嘩を続けているとか……。
要は噴飯ものの与太話だ。
まともな神経の持ち主なら歯牙にもかけまい。
しかし、昨日、あんな目にあったばかりの俺には、それを笑い飛ばすような余裕はない。
第二次世界大戦より以前からそこあり、町の様々な記憶を孕んでいる、その商店街に怪しい者たちが巣食っていてもおかしくはない。そんな気がする。
小さく首を振ると俺は目に止まったパン屋の店先へと近づいていった。
「あの、すいません――」
頭をかきながら俺が声をかけると、
「あ、いらっしゃいませ」
太ったパン屋の主人が、丸く明るい笑顔を向けてくる。
良かった。いい人のようだ。
余談だが、俺は他人に道を尋ねるのが苦手だ。苦手と言うのも変だが、なぜか、気後れしてしまう。そう言うトラウマがあるのか記憶にないが、とにかく苦手だ。だから、こういう感じのいい人が応対してくれるのは実にありがたい。
「ちょっと、お聞きしたいんですけど」
「はいはい。何ですか?」
「夢見館っていう、占い屋さんを探しているんですけど――」
どう歩けばいいですかね、と俺が言い終わるよりも早く、人の良さそうな男の顔が白けたものに変わる。それはもう、コインを裏返したかのように見事な変わり様だった。
何だ、客じゃないのか。そんな心の声が聞こえたような気がした。
「ああ、夢見館ね……」
腕を組みながら天井に向けられたパン屋の瞳の中には苛立ちが揺らいでいた。
「ここから、ずっと、奥まったところにあるよ」
「ええ、まあ。だから、行き方を知りたいんスけど……」
食い下がる俺にパン屋は「ちっ」と小さく舌打ちし、
「あそこに案内板があるから。あれの通りに行けばいいんじゃない?」
と投やりな口調で俺の背後を指差す。
なるほど、そこには大きな商店街の案内板があった。長年、増築に次ぐ増築でアメーバーのように巨大化してきた商店街は、蜘蛛の巣のように路地が広がり、まるで迷路のように入り組んでいた。
「あ、どうも。すいません……」
苦笑を浮かべながら俺が振り返ると、パン屋の主人の姿は既にない。俺が客ではないと判断し、店の奥に引っ込んでしまったらしい。
前言撤回。感じ悪い店だ。パンが食いたくなっても、ここでは買ってやらない。
ムカムカしながら俺は案内板の前へと移動した。
パン屋の主人が言った通り、占いハウス、夢見館は商店街の最奥にあると記されていた。その道順を頭に叩き込み、俺は再び歩き始める。
そこで占い師として働いている目白アカデミーの同期生、金城多恵に会うためだ。
昨日の地下街での出来事……。
新聞やテレビのニュースでは、夢ノ宮駅及び夢ノ宮プラザで事件や事故が起きたという報道はなかったが、あれは断じて白昼夢や幻じゃない。その証拠に、俺の手には怪物の目玉を握りつぶした時の生々しくおぞましい感触がまだ残っている。
そして、あの似顔絵……。数年間、開くこともなかった引き出しの中から出てきた、俺の絵には、作者と思しき人間の名前がサインされていた。
井原千夏――。
小学校六年生の時の同級生と思しき、その女の子のことを俺は今の今まで忘れていた。
おぼろげながら思い出したのは、その子が暗い表情で、いつも一人でいることが多かったということと、よくスケッチブックを持ち歩いていたということだけだ。
似顔絵の裏にメッセージまで寄せてくれているのだから、俺とは仲が良かったのかもしれない。
しかし、俺はどうしても当時のことをそれ以上思い出せなかった。まるで記憶の壜に栓でも締められたかのように。
単に俺が情の薄い、冷たい人間と言うことなのかもしれないが。
そう考えると、実に嫌な気分だった。
「…………?」
ふと俺は足を止めた。
そろそろ、東に折れる道があるはずなのだが……。
目の前には二件の店――八百屋と雑貨屋の隙間に伸びる、一本の路地。
並び立つ店舗の裏側らしいそこは日当たりが悪くジメジメしており、生臭い悪臭を放つポリバケツ、カバーも付けていない剥き出しの室外機が点々と並べられているのが見える。
一応、細い道が敷いてあって、通り抜けることはできるようだった。
こんなところを行かなきゃならないのか?
先程、目にした案内板を思い出してみる。
ここまで殆ど一本道だった。どこかで道を間違えたと言うわけではなさそうだ。だとすると、あの女の店は、この路地を抜け切ったところにある、と言うことになる。
「…………」
暫くの間、彫像のように俺はその場で立ち尽くしていた。
しかし、
「まあ、行くだけ行ってみっか」
ジッとしていても埒があかない。
溜息をつきながら、俺はその路地へと足を踏み入れていた。
背の高いコンクリートの壁に挟まれた、その路地を進むと次第に狭まってゆき、俺は言いようもない圧迫感を覚えていた。
ブォンブォンブォンブォン……
回転する室外機のファンの音が妙に神経に障る。そこから吐き出される生温かい風は湿っていて、行き場もないため重く澱んでおり、呼吸するのもままならない。
やはり、遠回りになっても、明るくて人通りの多いルートを探すべきだったか。
異臭を漂わせる、水溜りを跨ぎながら俺は後悔に苛まれていた。
こんな場所が、街中に、それも商店街の中にあったなんて。
頼むから早く出口についてくれ。
そんな切実な願いを引きずりながら路地を進み続けると、やがて、路地はジグザグと鋭く蛇行し始めた。
いつの間にか、コンクリの壁には人間の内臓じみた赤銅色に腐食した排水管が這い伝い、ゴボゴボと嘔吐するような音を立てて赤味がかった排水を大量に吐き出す。
死んだ魚のように生臭いその匂いに喉を詰まらせた時、路地の向こうに光が差し込むのが見えた。
それは明るい太陽の光だった。
どうやら、そこで路地は終るらしい。
氷を湯で溶かしたように不安が去ってゆき、代わりに小さな安堵感が胸に広がってゆく。
「やれれやれ……」
自分の小心さに苦笑いしながら俺はそちらへと進む。
しかし、その時だった。
壁を沿うようにして置かれていたポリバケツに俺は爪先を引っ掛けてしまった。
「あ、やべ……!」
派手な音を立てて、ポリバケツが横倒しになる。
蓋が滑り落ち、中には言っていたものが汚れた路地に投げ出される。
それを一目見て、思わず俺は息を飲んでいた。
ポリバケツから飛び出して来たのは、赤ん坊の形をした親指ほどのセルロイド人形。
それも一体や二体じゃない。
これで幼稚園ごっこをするとしたら、優に六クラスは作れそうな数だ。
もっとも、こんな気色の悪い物で遊ぼうとする子供なんていないだろうが。
セルロイドの赤ん坊達は一塊に集められ、バーナーの炎でも浴びせられたらしい。ドロドロに熔け崩れて交じり合い、嫌な臭いを放つ奇怪な一つのオブジェと化していた。固まりかけたゲロの中に、セルロイドで出来た小さな手足や顔がポコポコ浮かんでいるかのようだった。
「うげえ……」
昨日、怪物と遭遇した時ほどじゃない。
しかし、そのおぞましい有様に胸が悪くなるのを俺は禁じえなかった。
こんな物は無視して通り過ぎてしまえばいい……。
そう思いたいところだが、ポリバケツをひっくり返してしまったのは俺だ。気は進まないが、やはり、元に戻しておかねばマナー違反だろう。
「ああ、くそ。マジで気持ちワリィ……」
顔をしかめながら、溶け合ったセルロイドの赤ん坊達を指先で拾おうと俺は屈みかけた。
と――、
「待って」
「あひゃっ?」
突然、背骨沿いに細い指先の感触が触れる。電撃のように走った悪寒に身を竦ませながら、俺は背後を振り返っていた。
まるで最初からそこにいたかのように、路地の出口に佇んでいたのは、クレオパトラカットの若い女――金城多恵だった。
無表情のまま、天を指差す人差し指が実に白々しい。
もう、片手に下げたコンビニの袋を揺らしながら、
「それ……」
とセルロイドの人形の塊を指差し言う。
「放っておけば? 肉食だけど、こっちから手出ししない限り、悪さはしないから」
肉食? 悪さ?
不穏な単語に俺の背中に冷や汗を滲ませる。
思わず伸ばしかけた手を引っ込めていた。
「じゃあ、行きましょうか」
そう言って、金城はくるりと踵を返す。
「えっ、ど、どこに……?」
突拍子もない、その言動に俺は戸惑いを禁じえない。
そっと立ち止まり、
「……何かあったんでしょう、あれから」
肩越しに俺を振り返りながら事も無げに金城は続けた。
「おかしな物を見て不安になったから、訪ねて来たんじゃないの?」
あまりにもストレートな、何もかも見透かしたような物言いに俺は息を呑んでいた。
確かに俺は、この女に会うためにここに来た。
だが、しかし――
「じゃ、じゃあ、やっぱり、昨日のアレは、あんたの仕業なのか?」
それはどうしても確かめて置きたいことだった。
「私の仕業?」
俺を見つめる金城の眼差しがすっと細められる。
「どういう意味?」
「とぼけんなよ!」
カッと頭に血が昇り、思わず俺は声を荒らげていた。
相手が、金城が、女でなければ胸倉をつかんでいたかも知れない。
「あんたに話しかけられた直後だったんだ。地下街の出入り口が塞がれていたり、首つり死体とか訳の分かんねぇ怪物がウジャウジャ出てきたり……! お陰で俺は死ぬ思いだったんだぞ!?」
「怪物?」
その時、金城の表情が微かに険しくなったように思えた。
案の定、俺の剣幕に臆した様子は微塵も見せない。
「そんなものまでいたの?」
「ああ、いたさ! 一つ目の、でっかいヤモリみたいなヤツが!」
訝しげに眉をひそめる金城に向かい、俺は両手を広げていた。
「あいつら、夢ノ宮プラザ中にわらわら出てきやがって……」
激しく言い募り――、急速に俺の声は小さくなっていった。
昨日の出来事は、間違いなく現実にあったことだ。
しかし、金城一人では勿論、例え仲間が百人いたところであんな短時間であそこまで大掛かりなことを仕掛けられるわけがない。大体、そんなことをする理由もない。
今頃になって、やっと理性が働き始めたらしい。
気恥ずかしくなり、俺は口をつぐんで俯いていた。
「……落ち着いた?」
食って掛かられたことを気にする様子もなく、やはり淡々とした口調で金城が言う。
「じゃあ、行きましょう」
「あ、ああ。で、でも」
どこまでも超然とした金城の態度に気圧されながらも、俺は足元を見下ろしていた。
「これ、散らかしたままにするのはちょっと……」
俺は最後まで言葉を続けられなかった。
一塊になったセルロイドの赤ん坊たちが、一斉に小さな足を素早く動かし、ポリバケツの中に這い戻ったのだった。それだけではない。タンッと小気味よい音を立てて、バケツが元の位置に跳ね戻る。
まるでビデオの巻き戻しでも見ているかのようだった。
「………………………………!?」
戦慄に打ちのめされ、俺は声も出せずに絶叫をあげた。
「この辺りは古い土地だから」
そんな俺を金城が大した感慨もなさそうな視線で見やり、淡々と言葉を続ける。
「いろんな人の想いがあちこちに漂っているの。強力だけど、眠っている時のように意識は曖昧。感情はあるけれど、それを向けるベクトルが定まらない。――分かり易く言えばそんな感じかしら。でも、安心していいわ。六道君が遭遇した連中とは少し毛色が違うから大丈夫」
分り易くねーよ……!
心の中で、俺は悲鳴をあげていた。
大体、今の光景を見て、どうやって『安心』だとか、『大丈夫』だとか思えるんだ?
そうだ、気のせいだ。グルグルと目が回るのを感じながら俺は思った。そうだ、気のせい気のせい。気のせいと言うことにしておこう。 と言うよりも、気のせいでなきゃ嫌だ。
顔面蒼白になった俺をチラッと一瞥し、金城が転がったバケツの蓋を拾う。
「大人しく寝ていなさい……」
そう言って、金原が蓋を被せた途端――、それは自動的に一回転してカチッと合わせ目に嵌った。しかも、内側から勝手に、だ。
ゾッ、と鳥肌が立つと同時に俺は理解していた。
あいつら――セルロイドの赤ん坊達は、捨てられてそこにいるんじゃない。
あいつらの寝床はこの悪臭にまみれたポリバケツの中なのだ。と言うことは、さっき動いて、バケツの中に入ったのも気のせいじゃない。
不幸のどん底に突き落とされたかのような気分だった。
そんな俺に退屈をもてあましたような表情で金城が言った。
「ねぇ、そろそろ立ち話にも疲れてきたんだけど?」
否応もない。分かった、と俺は頷いていた。
一刻も早くこの路地から、いや、変な物が巣食うポリバケツから離れたかった。
身も心もクタクタだったにもかかわらず、殆ど眠れないまま俺は次の日の朝を迎えた。
朝飯を胃に流し込むようにして、何とか平らげた後、俺はバスに乗って街に向かった。
病み上がりなのに、と相変わらず、心配している爺ちゃんには「久しぶりにタワーレコードでも冷やかしてくる」と言っておいた。
正直、爺ちゃんに嘘をつくのは胸が痛む。とは言え、本当のことを話したところで、孫の頭がおかしくなったと余計な心労を掛けてしまうだけだ。
何しろ、俺自身、自分が本当に正気なのか、自信がもてないんだから。
と、まあ、そんなわけで――
俺は市役所の裏手にある停留所でバスを降りた。
そこから屋根付きの立体歩道橋をのぼって、市内を縦断する川の対岸へと移動。歩道橋から交差点に降り立ち、横断歩道の先に立つ、大きな石の鳥居を見上げる。その向こうに、大きな商店街の入り口があった。
商店街全体を覆っていると思しきアーケードには、文字看板が踊っていた。
夢ノ宮銀座、と。
「…………」
それを見上げながら、横断歩道を渡り鳥居の下を潜り抜け、商店街に足を踏み入れる。
まだ午前中ということもあってか、買い物客の姿はまばらだった。
重たい足取りで商店街の奥へ奥へと進む。
そんな俺の背中を、萎びたタバコ屋の番をしている、猿の干物のようなバア様がジッと見送っている。
この夢ノ宮銀座は、この辺りでは一番古く規模の大きな商店街らしい。
そのせいか、所謂、怪談話の類が後を絶たない。
曰く――
夜中になると中年女の顔をした猫が飲食店の裏をうろついているとか、血塗れの婆さんがカラッポのベビーカーを押しているとか、人間サイズの蝉だか蜻蛉だか分からない巨大な虫が電柱に張り付いているとか、酔って刃傷沙汰を起こし相打ちで死んだチンピラ二人が幽霊になった今も路地裏で喧嘩を続けているとか……。
要は噴飯ものの与太話だ。
まともな神経の持ち主なら歯牙にもかけまい。
しかし、昨日、あんな目にあったばかりの俺には、それを笑い飛ばすような余裕はない。
第二次世界大戦より以前からそこあり、町の様々な記憶を孕んでいる、その商店街に怪しい者たちが巣食っていてもおかしくはない。そんな気がする。
小さく首を振ると俺は目に止まったパン屋の店先へと近づいていった。
「あの、すいません――」
頭をかきながら俺が声をかけると、
「あ、いらっしゃいませ」
太ったパン屋の主人が、丸く明るい笑顔を向けてくる。
良かった。いい人のようだ。
余談だが、俺は他人に道を尋ねるのが苦手だ。苦手と言うのも変だが、なぜか、気後れしてしまう。そう言うトラウマがあるのか記憶にないが、とにかく苦手だ。だから、こういう感じのいい人が応対してくれるのは実にありがたい。
「ちょっと、お聞きしたいんですけど」
「はいはい。何ですか?」
「夢見館っていう、占い屋さんを探しているんですけど――」
どう歩けばいいですかね、と俺が言い終わるよりも早く、人の良さそうな男の顔が白けたものに変わる。それはもう、コインを裏返したかのように見事な変わり様だった。
何だ、客じゃないのか。そんな心の声が聞こえたような気がした。
「ああ、夢見館ね……」
腕を組みながら天井に向けられたパン屋の瞳の中には苛立ちが揺らいでいた。
「ここから、ずっと、奥まったところにあるよ」
「ええ、まあ。だから、行き方を知りたいんスけど……」
食い下がる俺にパン屋は「ちっ」と小さく舌打ちし、
「あそこに案内板があるから。あれの通りに行けばいいんじゃない?」
と投やりな口調で俺の背後を指差す。
なるほど、そこには大きな商店街の案内板があった。長年、増築に次ぐ増築でアメーバーのように巨大化してきた商店街は、蜘蛛の巣のように路地が広がり、まるで迷路のように入り組んでいた。
「あ、どうも。すいません……」
苦笑を浮かべながら俺が振り返ると、パン屋の主人の姿は既にない。俺が客ではないと判断し、店の奥に引っ込んでしまったらしい。
前言撤回。感じ悪い店だ。パンが食いたくなっても、ここでは買ってやらない。
ムカムカしながら俺は案内板の前へと移動した。
パン屋の主人が言った通り、占いハウス、夢見館は商店街の最奥にあると記されていた。その道順を頭に叩き込み、俺は再び歩き始める。
そこで占い師として働いている目白アカデミーの同期生、金城多恵に会うためだ。
昨日の地下街での出来事……。
新聞やテレビのニュースでは、夢ノ宮駅及び夢ノ宮プラザで事件や事故が起きたという報道はなかったが、あれは断じて白昼夢や幻じゃない。その証拠に、俺の手には怪物の目玉を握りつぶした時の生々しくおぞましい感触がまだ残っている。
そして、あの似顔絵……。数年間、開くこともなかった引き出しの中から出てきた、俺の絵には、作者と思しき人間の名前がサインされていた。
井原千夏――。
小学校六年生の時の同級生と思しき、その女の子のことを俺は今の今まで忘れていた。
おぼろげながら思い出したのは、その子が暗い表情で、いつも一人でいることが多かったということと、よくスケッチブックを持ち歩いていたということだけだ。
似顔絵の裏にメッセージまで寄せてくれているのだから、俺とは仲が良かったのかもしれない。
しかし、俺はどうしても当時のことをそれ以上思い出せなかった。まるで記憶の壜に栓でも締められたかのように。
単に俺が情の薄い、冷たい人間と言うことなのかもしれないが。
そう考えると、実に嫌な気分だった。
「…………?」
ふと俺は足を止めた。
そろそろ、東に折れる道があるはずなのだが……。
目の前には二件の店――八百屋と雑貨屋の隙間に伸びる、一本の路地。
並び立つ店舗の裏側らしいそこは日当たりが悪くジメジメしており、生臭い悪臭を放つポリバケツ、カバーも付けていない剥き出しの室外機が点々と並べられているのが見える。
一応、細い道が敷いてあって、通り抜けることはできるようだった。
こんなところを行かなきゃならないのか?
先程、目にした案内板を思い出してみる。
ここまで殆ど一本道だった。どこかで道を間違えたと言うわけではなさそうだ。だとすると、あの女の店は、この路地を抜け切ったところにある、と言うことになる。
「…………」
暫くの間、彫像のように俺はその場で立ち尽くしていた。
しかし、
「まあ、行くだけ行ってみっか」
ジッとしていても埒があかない。
溜息をつきながら、俺はその路地へと足を踏み入れていた。
背の高いコンクリートの壁に挟まれた、その路地を進むと次第に狭まってゆき、俺は言いようもない圧迫感を覚えていた。
ブォンブォンブォンブォン……
回転する室外機のファンの音が妙に神経に障る。そこから吐き出される生温かい風は湿っていて、行き場もないため重く澱んでおり、呼吸するのもままならない。
やはり、遠回りになっても、明るくて人通りの多いルートを探すべきだったか。
異臭を漂わせる、水溜りを跨ぎながら俺は後悔に苛まれていた。
こんな場所が、街中に、それも商店街の中にあったなんて。
頼むから早く出口についてくれ。
そんな切実な願いを引きずりながら路地を進み続けると、やがて、路地はジグザグと鋭く蛇行し始めた。
いつの間にか、コンクリの壁には人間の内臓じみた赤銅色に腐食した排水管が這い伝い、ゴボゴボと嘔吐するような音を立てて赤味がかった排水を大量に吐き出す。
死んだ魚のように生臭いその匂いに喉を詰まらせた時、路地の向こうに光が差し込むのが見えた。
それは明るい太陽の光だった。
どうやら、そこで路地は終るらしい。
氷を湯で溶かしたように不安が去ってゆき、代わりに小さな安堵感が胸に広がってゆく。
「やれれやれ……」
自分の小心さに苦笑いしながら俺はそちらへと進む。
しかし、その時だった。
壁を沿うようにして置かれていたポリバケツに俺は爪先を引っ掛けてしまった。
「あ、やべ……!」
派手な音を立てて、ポリバケツが横倒しになる。
蓋が滑り落ち、中には言っていたものが汚れた路地に投げ出される。
それを一目見て、思わず俺は息を飲んでいた。
ポリバケツから飛び出して来たのは、赤ん坊の形をした親指ほどのセルロイド人形。
それも一体や二体じゃない。
これで幼稚園ごっこをするとしたら、優に六クラスは作れそうな数だ。
もっとも、こんな気色の悪い物で遊ぼうとする子供なんていないだろうが。
セルロイドの赤ん坊達は一塊に集められ、バーナーの炎でも浴びせられたらしい。ドロドロに熔け崩れて交じり合い、嫌な臭いを放つ奇怪な一つのオブジェと化していた。固まりかけたゲロの中に、セルロイドで出来た小さな手足や顔がポコポコ浮かんでいるかのようだった。
「うげえ……」
昨日、怪物と遭遇した時ほどじゃない。
しかし、そのおぞましい有様に胸が悪くなるのを俺は禁じえなかった。
こんな物は無視して通り過ぎてしまえばいい……。
そう思いたいところだが、ポリバケツをひっくり返してしまったのは俺だ。気は進まないが、やはり、元に戻しておかねばマナー違反だろう。
「ああ、くそ。マジで気持ちワリィ……」
顔をしかめながら、溶け合ったセルロイドの赤ん坊達を指先で拾おうと俺は屈みかけた。
と――、
「待って」
「あひゃっ?」
突然、背骨沿いに細い指先の感触が触れる。電撃のように走った悪寒に身を竦ませながら、俺は背後を振り返っていた。
まるで最初からそこにいたかのように、路地の出口に佇んでいたのは、クレオパトラカットの若い女――金城多恵だった。
無表情のまま、天を指差す人差し指が実に白々しい。
もう、片手に下げたコンビニの袋を揺らしながら、
「それ……」
とセルロイドの人形の塊を指差し言う。
「放っておけば? 肉食だけど、こっちから手出ししない限り、悪さはしないから」
肉食? 悪さ?
不穏な単語に俺の背中に冷や汗を滲ませる。
思わず伸ばしかけた手を引っ込めていた。
「じゃあ、行きましょうか」
そう言って、金城はくるりと踵を返す。
「えっ、ど、どこに……?」
突拍子もない、その言動に俺は戸惑いを禁じえない。
そっと立ち止まり、
「……何かあったんでしょう、あれから」
肩越しに俺を振り返りながら事も無げに金城は続けた。
「おかしな物を見て不安になったから、訪ねて来たんじゃないの?」
あまりにもストレートな、何もかも見透かしたような物言いに俺は息を呑んでいた。
確かに俺は、この女に会うためにここに来た。
だが、しかし――
「じゃ、じゃあ、やっぱり、昨日のアレは、あんたの仕業なのか?」
それはどうしても確かめて置きたいことだった。
「私の仕業?」
俺を見つめる金城の眼差しがすっと細められる。
「どういう意味?」
「とぼけんなよ!」
カッと頭に血が昇り、思わず俺は声を荒らげていた。
相手が、金城が、女でなければ胸倉をつかんでいたかも知れない。
「あんたに話しかけられた直後だったんだ。地下街の出入り口が塞がれていたり、首つり死体とか訳の分かんねぇ怪物がウジャウジャ出てきたり……! お陰で俺は死ぬ思いだったんだぞ!?」
「怪物?」
その時、金城の表情が微かに険しくなったように思えた。
案の定、俺の剣幕に臆した様子は微塵も見せない。
「そんなものまでいたの?」
「ああ、いたさ! 一つ目の、でっかいヤモリみたいなヤツが!」
訝しげに眉をひそめる金城に向かい、俺は両手を広げていた。
「あいつら、夢ノ宮プラザ中にわらわら出てきやがって……」
激しく言い募り――、急速に俺の声は小さくなっていった。
昨日の出来事は、間違いなく現実にあったことだ。
しかし、金城一人では勿論、例え仲間が百人いたところであんな短時間であそこまで大掛かりなことを仕掛けられるわけがない。大体、そんなことをする理由もない。
今頃になって、やっと理性が働き始めたらしい。
気恥ずかしくなり、俺は口をつぐんで俯いていた。
「……落ち着いた?」
食って掛かられたことを気にする様子もなく、やはり淡々とした口調で金城が言う。
「じゃあ、行きましょう」
「あ、ああ。で、でも」
どこまでも超然とした金城の態度に気圧されながらも、俺は足元を見下ろしていた。
「これ、散らかしたままにするのはちょっと……」
俺は最後まで言葉を続けられなかった。
一塊になったセルロイドの赤ん坊たちが、一斉に小さな足を素早く動かし、ポリバケツの中に這い戻ったのだった。それだけではない。タンッと小気味よい音を立てて、バケツが元の位置に跳ね戻る。
まるでビデオの巻き戻しでも見ているかのようだった。
「………………………………!?」
戦慄に打ちのめされ、俺は声も出せずに絶叫をあげた。
「この辺りは古い土地だから」
そんな俺を金城が大した感慨もなさそうな視線で見やり、淡々と言葉を続ける。
「いろんな人の想いがあちこちに漂っているの。強力だけど、眠っている時のように意識は曖昧。感情はあるけれど、それを向けるベクトルが定まらない。――分かり易く言えばそんな感じかしら。でも、安心していいわ。六道君が遭遇した連中とは少し毛色が違うから大丈夫」
分り易くねーよ……!
心の中で、俺は悲鳴をあげていた。
大体、今の光景を見て、どうやって『安心』だとか、『大丈夫』だとか思えるんだ?
そうだ、気のせいだ。グルグルと目が回るのを感じながら俺は思った。そうだ、気のせい気のせい。気のせいと言うことにしておこう。 と言うよりも、気のせいでなきゃ嫌だ。
顔面蒼白になった俺をチラッと一瞥し、金城が転がったバケツの蓋を拾う。
「大人しく寝ていなさい……」
そう言って、金原が蓋を被せた途端――、それは自動的に一回転してカチッと合わせ目に嵌った。しかも、内側から勝手に、だ。
ゾッ、と鳥肌が立つと同時に俺は理解していた。
あいつら――セルロイドの赤ん坊達は、捨てられてそこにいるんじゃない。
あいつらの寝床はこの悪臭にまみれたポリバケツの中なのだ。と言うことは、さっき動いて、バケツの中に入ったのも気のせいじゃない。
不幸のどん底に突き落とされたかのような気分だった。
そんな俺に退屈をもてあましたような表情で金城が言った。
「ねぇ、そろそろ立ち話にも疲れてきたんだけど?」
否応もない。分かった、と俺は頷いていた。
一刻も早くこの路地から、いや、変な物が巣食うポリバケツから離れたかった。
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戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
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