ブラッシング!!

コトハナリユキ

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ナワバリ

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 会議室を出て、廊下を曲がったすぐ向こうでミヤツーは誰かにキレているようだ。2人で覗いてみると、綺麗な金髪を色の白い右手で弄りながら、愛想笑いしている男が立っていた。
 ミヤツーはこちらに背を向けながら、こんなところで何してやがったんだ!? と大声をあげて威嚇している。

 「誰や? あのヒョロヒョロ」
 「さぁ? よく見え……」
 俺がトシキへの問いかけの返答を言い終わる直前だった。パン! と、何かが破裂するような音がした。ーーそうだ運動会のかけっこの時に鳴らすピストルの音だよく似てるよく似ーー

 「ミヤシゲぇっ!!」
 気付いたらミヤシゲが脇腹から血を流して倒れていた。俺は我に返った。そうだ、ここは敵地なんだ! 殺菌族がいつ現れたって、銃で撃って来たっておかしくないのに、俺たちは何を呑気に「やり合わなくて済む」だよ!?

 金髪野郎へ物凄い速さでトシキが飛びかかろうと飛び出して行く。俺もそれに続く。遠くてよく見えていなかった色白の顔がしっかり見えてくると同時に、頭の中で”ある男”の情報と、目の前のヒョロヒョロ野郎との情報が合致してくる。血の気が引くような感覚の中で、記憶が交錯し混ざり合う。……あ。

 「トシキ、飛ぶな! 下がれぇ!!」
 俺はトシキの5歩後ろで叫んだ。
 「なんでやタカマツ!? こいつ……! 」
 また1発、パン! と弾ける音がした。だが弾けたのは俺の後ろの壁だった。ふぅ、と少し胸を撫で下ろし、俺は金髪野郎を睨みつけた。

 「お前、クアリクだろ!」
 「はぁ!?  こいつがあの殺し屋ヒットマンなんか」
 トシキは倒れたミヤシゲを守るように前に立ち、俺はしゃがんでミヤシゲの肩を抱えた。大丈夫。撃たれたショックで気を失ってるけど生きてる。よかった。……あ、そうか気を失ったタイミングでミヤツーからミヤシゲに戻ってるのか、どうりで肩が華奢な訳だ。

 「へぇ、よくご存知で」
 少しだけ長い前髪を左手で流した瞬間。真っ赤な右目がこちらを熱無く見つめた。

 「お前、よぉ俺らぁのツレやってくれたのぉ。……ぶっ潰すで。」
 普段のカラっとした雰囲気から一転して、ドスの効いた低い声を響かせるトシキ。
 俺は”金髪で右目だけ赤いヒットマンが殺菌族に飼われてる”という情報を知っていたから驚かなかったけど、トシキはそもそも目が赤かろうが何だろうが関係ないらしい。

 「ピストルがなんや、こっちはステゴロで何度も修羅場くぐって来とるんじゃ! 怖かないわぁ!」
 「銃相手に素手で何かできるんですか? 凄いですね」
 クアリクは鼻で笑い銃口をこちらへ向けた。

 パン!
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