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ナワバリ
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しおりを挟む風が吹いたと思った。その後から血の匂いがした。
「う! こいつ、まだ……!?」
「弱ぇから……仲間と、居るん……だ」
倒れていたはずのミヤツーがクアリクの背中を斬りつけていた。そのままミヤツーは踏ん張りが効かず倒れこんでしまう。
「ミヤツー! お前、生きてたのか!」
「この、死に損ない……!!」
不意打ちを喰らい、さすがに俺を踏みつけていたクアリクの足が緩んだ。そこを突いて俺は足を払い除け、その場から転がって逃れた。
だがクアリクは、背中の傷をものともしないで倒れ込んだミヤツーへと銃口を向ける。
「減らず口叩かないで下さい」
「やめろぉ!!」
俺はクアリクに殴りかかった。それでも構わずに引き金は弾かれた。
パン!
微かにミヤツーの身体が揺れて、持っていた日本刀がカシャン! と音を立てて手から離れた。瞬きをしたら刀は消えていた。
動かなくなったトシキとミヤシゲを見つめて、一瞬涙で景色が波打った。怒りがゾクゾクとこみ上げてくる。
「少し、服が汚れてしまいました。」
「てめえ……殺す」
「……はい? なんですか?」
何もなかったかのように視線を逸らしたまま半笑いを見せる奴に、手がブルブル震えた。その拳に気がついたのかクアリクは銃口をあげる。
「そういえば、トシキは右手ごと吹っ飛ばなくて良かったですね。……まぁ、もう手があっても無くても変わらないですね。死んだ訳ですし」
バシィ!
「ん! これは、靴……?」
クアリクまで5m位の距離があった俺は、咄嗟に靴を飛ばし一瞬でも奴に隙を作った。靴は手で簡単に弾かれたが、視線を戻して引き金を弾く速さより、俺の拳がクアリクの顔面を打ち抜く速さの方が、上を行くだけのハンデを生み出した。
ボコォ!!
「ぐ……!」
右頬を全力でえぐるつもりで打ったパンチはそこそこ効いたようだった。俺の頭の中はクアリクを殴り殺すことだけでいっぱいだった。
「殺す!」
1撃目を受け、倒れるのを回避してクアリクは後方へジャンプしようとしたが、勢いがついた俺の両腕が胸ぐらを掴む方が、また早かった。
「離して、下さい……!」
「離さねぇ! てめぇは許さねぇ!!」
「許さないって……弱いから死ぬのは当たり前じゃないですか。全員で、一気にかかってくればよかったんですよ。群れらしく」
「あいつらがそんな簡単に……死ぬか! 絶対生きてる!」
「胸を切り裂かれて? 銃弾を4発受けて? 無理ですよ」
「そんなもん、なんだってんだぁ!! お前があいつらのなに」
パン!
力が膝から抜ける様な感覚だった。
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