ブラッシング!!

伝言

1

　あたしは今日、とても刺激的な1日を過ごした。
　いつもの通りに罵維菌族ばいきんぞくと殺菌族さっきんぞくが揉めていた。でも少し違った。そこにはいつも見てるチンピラ同士のイザコザには無い勝負に対する熱ねつを感じた。

　居ても立っても居られなくてつい首を突っ込んだ。怖い思いもしたけど平気だった。あたしは不死身の水組の子だから。

　闘いが終わった。
　勝ったのはなんと罵維菌族だった。あたしは驚いたけど、その思いもよらない展開に鳥肌が立った。

　本当は彼らにくっついて行きたい気持ちもあった。でもあたしは闘いを繰り広げたお頭かしらさんから伝言を託された。だから一緒に行きたいって伝えるのをやめた。

　もしまた彼らに会うことがあって、きっとその時も彼らは戦っているだろう。だからその闘いにまた彼らが勝ったら伝えよう。

　今日のところは、ぶちのめされた金髪ヒットマンに伝言を伝えよう。

　
　「ミズエ、そのバカが起きたら伝えといて欲しいんだ。」
　お腹からダラダラと血を流すもんだから、彼はギューギューにお腹を縛られている最中だった。もちろん縛っているのはユースケさんだ。
　「なんてー？」と気の抜けた返事をした。

　「今度は素手でとことんタイマンしようぜってさ。」
　頭ヘッドしぶいっすわ！　とかトシキ君が言ってたけど無視した。
　「うん、分かった。」
　彼は人差し指をあたしに向けてキめていたけど、「動かんでください！」とユースケさんに叱られてて全然キまってなかった。

　笑っては血が滲む為、ずっとユースケさんは怒っていたけど、子分3人の羨望の眼差しは本物で、彼は本当に慕われているリーダーなんだと思った。

　「次の現場も俺たちのモノにしてやろうぜ。」そう言って彼は、タカマツ君に指示をして自分達の旗をこの廃ビルの入り口に立てさせた。
　真っ黒の生地に赤くドクロのマークが描いてある。とても趣味のいいものではなかったが、これが罵維菌族かれらの誇りなんだろう。