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第弐拾五話
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外からの足音でおいらは目を覚ました。足音の重さからして何か重たい物を持っている。逃げる為の物か、それとも戦で使う武器か、流石に其処まではおいらには分からない。
腕や足を確認すると、負っていた傷は治っている。こう言う時本当に人間じゃなくて良かったと思う。
起こさない様に槿花を抱き上げ、洞穴の奥へ移動すると、おいらは息を殺して様子を伺った。
「本当にこの辺に子供なんていたのか?」
「さっき見たんだって、珍しい髪の色した子供をさ。」
「へー、じゃあ見世物小屋とかに置いたら相当売れそうだな。」
(糞ッ。)
こいつ等おいら達を捕まえて売るつもりだ。おいらだけならまだしも、槿花にそんな事させるか。
「けど遠くから見ただけなんだろ?」
おいら達が何処に行ったのかは流石に分からないらしく、洞穴の周辺でうろうろしているだけだった。もうそのまま何処かへ行け。そう思った時だった。
「なぁおい、これ足跡じゃないか?」
(!!!)
そうだ、おいら達は飛べないから地面を歩いていたけど、それが見事に仇になった。外にある足跡に人間達が気が付いた。
おいらは大きく深呼吸をしてから槿花をそっと降ろし、少しだけ足音を立てて洞穴の入口まで歩いて行った。
「ぅお!!」
「ほら言っただろ!?」
外にいた人間は二人だけで、おいらは少しだけ安心した。大人数だったら何かあった時に勝てない可能性があるからだ。二人だったら、一人くらいは何とかなるかもしれない。
人間達はおいらの髪の色に関してあれこれ言ってくるけど、別に不快に思ったりはしない。
「と言うか如何する?」
「そりゃまぁ連れて帰るに決まってるだろ。女子供は連れて来いって。」
こいつ等、盗賊か何かか?
そんな事を考えているとおいらの腕を掴んで来た。おいらは咄嗟に腕を払うと、その場から逃げようとした。
「あ、おい待て!!」
そうだこっちに来い。おいらがいない間に槿花が目を覚まして泣く光景が目に浮かぶ。だけどそれで良い、それで槿花が無事ならおいらだって本望だ。だけど世の中思った様には事は進まない。
「にーちゃ?」
「!!!」
おいらは慌てて止まって振り返ると、他の人間二人も足を止めて洞穴の方を見ていた。其処には目を覚まして心配そうな顔をしている槿花が立っていた。
「チッ!!!」
おいらは人間二人の横を全速力で走って槿花の手を掴むと、その場からすぐに逃げた。
「逃がすな!!!」
「ありゃ妹は特に高く売れるぞ!!!」
だからおいらは良いけど槿花にはそんな事させない。
「槿花!!鳥の姿になれるか!?」
「え、うん。」
槿花が鳥の姿になると、おいらはさっきよりもずっと速く走った。流石に子供が此処までの速さで走れるとは思っていなかったのか、人間達の驚く声が聞こえる。
このまま逃げ切れる。そう思っていると突然背中に痛みが走ってその場に倒れていた。
「は?」
「にーちゃ!!!」
槿花は人の姿になると、おいらはすぐに自分の背中を見た。矢が二本背中に刺さっていて、地面に血が流れていた。
腕や足を確認すると、負っていた傷は治っている。こう言う時本当に人間じゃなくて良かったと思う。
起こさない様に槿花を抱き上げ、洞穴の奥へ移動すると、おいらは息を殺して様子を伺った。
「本当にこの辺に子供なんていたのか?」
「さっき見たんだって、珍しい髪の色した子供をさ。」
「へー、じゃあ見世物小屋とかに置いたら相当売れそうだな。」
(糞ッ。)
こいつ等おいら達を捕まえて売るつもりだ。おいらだけならまだしも、槿花にそんな事させるか。
「けど遠くから見ただけなんだろ?」
おいら達が何処に行ったのかは流石に分からないらしく、洞穴の周辺でうろうろしているだけだった。もうそのまま何処かへ行け。そう思った時だった。
「なぁおい、これ足跡じゃないか?」
(!!!)
そうだ、おいら達は飛べないから地面を歩いていたけど、それが見事に仇になった。外にある足跡に人間達が気が付いた。
おいらは大きく深呼吸をしてから槿花をそっと降ろし、少しだけ足音を立てて洞穴の入口まで歩いて行った。
「ぅお!!」
「ほら言っただろ!?」
外にいた人間は二人だけで、おいらは少しだけ安心した。大人数だったら何かあった時に勝てない可能性があるからだ。二人だったら、一人くらいは何とかなるかもしれない。
人間達はおいらの髪の色に関してあれこれ言ってくるけど、別に不快に思ったりはしない。
「と言うか如何する?」
「そりゃまぁ連れて帰るに決まってるだろ。女子供は連れて来いって。」
こいつ等、盗賊か何かか?
そんな事を考えているとおいらの腕を掴んで来た。おいらは咄嗟に腕を払うと、その場から逃げようとした。
「あ、おい待て!!」
そうだこっちに来い。おいらがいない間に槿花が目を覚まして泣く光景が目に浮かぶ。だけどそれで良い、それで槿花が無事ならおいらだって本望だ。だけど世の中思った様には事は進まない。
「にーちゃ?」
「!!!」
おいらは慌てて止まって振り返ると、他の人間二人も足を止めて洞穴の方を見ていた。其処には目を覚まして心配そうな顔をしている槿花が立っていた。
「チッ!!!」
おいらは人間二人の横を全速力で走って槿花の手を掴むと、その場からすぐに逃げた。
「逃がすな!!!」
「ありゃ妹は特に高く売れるぞ!!!」
だからおいらは良いけど槿花にはそんな事させない。
「槿花!!鳥の姿になれるか!?」
「え、うん。」
槿花が鳥の姿になると、おいらはさっきよりもずっと速く走った。流石に子供が此処までの速さで走れるとは思っていなかったのか、人間達の驚く声が聞こえる。
このまま逃げ切れる。そう思っていると突然背中に痛みが走ってその場に倒れていた。
「は?」
「にーちゃ!!!」
槿花は人の姿になると、おいらはすぐに自分の背中を見た。矢が二本背中に刺さっていて、地面に血が流れていた。
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