泡沫の如く儚い平和

第弐拾四話

　何時の間にか気を失っていたらしく、気が付いた時坂の下で倒れていて空を見ていた。

「にーちゃ?」
「………………槿花…………」
「にーちゃ!!!」

　槿花はおいらに飛び付くと、多分転げ落ちている時に打ったり擦れたり切ったりしたであろう傷が痛かった。

「いっ!!!」
「にーちゃ!!?大丈夫ずらか!!?」

　心配そうな槿花を少しでも安心させるべく、おいらは無理して笑って槿花の頭を撫でた。

「大丈夫ずらよ。」
「にーちゃ、とーちゃ達は?」
「父さん達は逃げるのが見えたから、多分大丈夫ずら。」

　痛む体に鞭を打って、おいらは立ち上がって槿花の手を掴んで歩き始めた。
　流石にこの体で鳥の姿になっても碌に飛べないだろうし、それに槿花はおいらと比べて飛ぶのが下手だ、二人して上手く飛べない状態で飛んだって、落下して下手したら死ぬだけだ。
　今にも泣き出しそうな槿花は、おいらの手を強く握っている。

　足音が聞こえるとおいらはすぐに走ってその場を逃げた。今人間達に見付かるのは非常厄介だ。友好的な奴ならまだしも、相当頭の可笑しい奴だったら何をされるのか分かったもんじゃない。
　暫く逃げて適当な洞穴に飛び込むと、おいらは寝転がった。

「はぁ…………はぁ…………………………っ、はぁ……………………」
「にーちゃ、大丈夫ずらか?」

　怪我してるのに無理して走ったせいで大丈夫と言う事が出来なかった。
　槿花はおいらに寄り添って寝転がると、おいらは槿花を抱きしめた。今は槿花の温かさに安心出来る。

「にーちゃ、おら怖いずらよ…………………」
「おいらも怖い。」

　これからどうなるのか分からないし、そもそも父さん達がちゃんと逃げ切れたのかもおいら達は何も分からない。だけど、それでも。

「けど、槿花がいるから、大丈夫ずら。」

　一人じゃないから、それだけで安心が出来る。
　おいらの言葉を聞いて槿花は笑ってくれた。その笑顔に安心しておいらは目を瞑って眠った。多分起きた時には傷は治っていると思う。