泡沫の如く儚い平和

琴里 美海

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第弐拾九話

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 体力やらが回復して、気晴らしに外に出掛けた。だけどおいらは山からは絶対に出なかった。
 あの一件以降、おいらは人間が嫌いになった。とは言っても大人だけで、子供とかはある程度は平気だ。子供は子供で、槿花を思い出すから嫌だけど。

「おい、えっと泡沫だっけ?」

 暁光に声を掛けられて振り返ると、暁光の腕には大量の果物があった。量が思っていたよりも多かったから、おいらは驚いてしまった。すると暁光は少し楽しそうに笑った。

「食うか?」

 おいらが何か言うよりも前に暁光は持っている果物をおいらに渡してきた。まぁ有り難く頂くけど。
 果物を食べていると、暁光が少し悲しそうな顔をしておいらを見ていた。

「何?」
「あいや、ちょっとこれは言うべきか否かって考えてて。」
「は?」

 いや其処まで言うなら言えよ。
 そう思いながら暁光を見ていると、それが伝わったのか、暁光は小さく溜め息を突いてから話し始めた。

「ちょっと前にな、雀が来て、それで前にお前が何か頼んだんだろ?その結果って言うかが届いてさ。」

 それにおいらはすぐに食い付いた。

「何だって!!?槿花は、妹は見付かったのか!!?」

 思い切り言ったせいでおいらは息を切らした。
 暁光は暫く何も言わずにおいらを見ていたが、視線を逸らして首を横に振った。

「ッ!!!」

 見付からなかった。
 途端、おいらは一体何をしているのかと思った。槿花が何処かで苦しんでるかもしれないのに、おいらはこんな所で何をしているんだ。
 おいらはすぐに鳥の姿になろうとすると、暁光はおいらの腕を掴んで来た。

「離せよ!!!」
「いやお前何処行く気だよ!!!」
「妹を探しに行くに決まってるだろ!!!」

 槿花は今苦しんでるかもしれない、泣いてるかもしれない。なのに兄のおいらが槿花を探しに行かない訳にいかない。
 暁光は暫く何かを考えてから何か思い付いたのか頷いた。

「じゃあよ、お前情報屋に成るか?」
「は?」
「周りの情報屋が情報を得るのを待つよりも、お前が自分で探した方が速いだろ。」

 確かにそうだ。だけどおいらは人間の世界に行くのは嫌だ。だけど、今はそんな事言ってる場合じゃない。

「如何したら良い?如何したら情報屋に成れる?」
「まぁいろんな所に行って、いろんな情報を得て、そんで取引してりゃ自然と情報屋扱いになってくるだろうよ。」

 そうなれば善は急げ。

 その日からはおいらは情報屋を始め、兎に角いろんな奴と契約をして槿花の居場所を探り続けた。
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