泡沫の如く儚い平和

第参拾壱話

　暫く歩いているとまだ火の手が回っていない村の近くに来ると、鳩さんは足を止めた。
　私は鳩さんの肩越しに顔を出すと、村の中に人の姿があった。だけど皆何処かしらに血が付いていた。

「此処だ。」
「え?」
「此処から暁光の気配がする。」

　じゃあ暁光さんは此処にいるんだ。だけど何だろう、何だか嫌な予感がする。
　気が付くと私の体が宙に浮いていて、次の瞬間には地面に倒れていた。

「うっ!!」

　腰を打っちゃって痛い。
　私はすぐに顔を上げると、目の前に鳩さんが立っている。だけど鳩さんの体を伝って血が流れている。

「!!鳩さん!!?」

　鳩さんはグラリと体が揺れると、地面に倒れた。鳩さんの体には何本もの矢が刺さっていた。

「ッ!!!」

　私は口を押さえた。

「鳩さん………………鳩さん…………………」

　目の前で起きている事が理解出来ず、私は唯その場で何も出来ずに鳩さんを見ていた。

「妖かしか………………」
「あの大男の仲間か。」
「え?」

　村人さんが私に近付くと、腰が抜けた私は動く事が出来ず、腕や髪を掴まれて引き摺られた。

「この地獄はお前達のせいか。」
「殺さねば、殺さねば…………………」
「嫌ッ!!!離してください!!!ヤダ!!!」

　暁光さん!!!

　その時凄い寒気がした。それは私だけじゃなくて村人さん達も感じたらしく、皆動きを止めて、その寒気がする原因を見た。その原因は鳩さんだった。
　鳩さんから突然、何か恐ろしい気配を感じた。

「何だ。」
「殺し損ねていたか。」

　村人さんの一人が鳩さんに近付くと、鳩さんは凄い勢いで起き上がって村人さんの頭を掴んで地面に叩き付けてしまった。