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第六話
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牢の奥から、明るい男性の声が聞こえて来た。
まさか誰かいるなんて思ってもみなかった私は驚き、咄嗟に立ち上がって声のする声を見た。
「あーごめんね、驚かせるつもりはなかったんだ。だけど初めて聞く言葉が聞こえたもので。」
牢の奥は暗くて見えないけど、向こうからは私の姿が見えている様子だった。
如何しよう、白装束の人を呼ぶべきなのかな。でも別に危害を加えて来る様子は無いし。
次に自分の取るべき行動が分からない。何も出来ない。
「ねぇ君、名前は何て言うの?」
「……え?」
「名前だよ。己等は彩雲って言うんだ。彩る雲で彩雲。君の名前は?」
私は一つ、小さく深呼吸をしてから、恐る恐る、彩雲と名乗った人の方へ向かって歩いた。
牢の壁にもたれる様に座るその人は、暗い中でも分かるくらい背が高くて、不思議な髪の色をしていた。顔の右半分が隠れる長い黄色い髪に、所々に赤や青、白に黒の毛束があった。そして両手首には手かせが嵌められていた。
「あ!来てくれたんだ!へー、今年の贄は、随分と幼い子なんだね。それに…………」
それに、何だろう。そこから先はよく聞こえなかった。
「ま、良いや。それより名前教えてよー。己等こんな所に一人だから話し相手が欲しいんだよ。」
何だろうこの人、やけに明るく親しく話し掛けて来る。
取り敢えず敵意とかはなさそうだし、向こうも名乗ったのに、私は名乗らないのは失礼と思い、一応名乗る事にした。
「せ、星河です。星の河で星河。」
「星河かー、随分と綺麗な名前だね。」
確かに綺麗だとは思うけど、書けるかと問われたら、私は間違いなく首を横に振ると思う。
それにしても、この人は一体何者なんだろう。悪い人、なのかな。枷を嵌めていて、牢に居るって事は、何かしたんだとは思うけど。でも何だろう、少し安心できる雰囲気があると言うか。
其処まで考えて私は気が付いた。空気が普通に吸えていた事に。吸いやすいとかじゃなくて、気付かない内に、普通に体に入って来ていた。
「如何したの?そんな驚いた顔して。」
「え、や、えっと……空気が簡単に吸えたから。」
私がそう言うと、彩雲は何を言っているのか分からないと言う様な顔をした後、納得した様子で、あー、と呟いた。
「そうだったね!君達にとっては、空気は澱んでて体に悪いのが常識だったっけ!」
その言葉に、今度は私が意味が分からなくて首を傾げた。澱んでるって何?この村の空気の呼び方でそんなの初めて聞いた。
彩雲は一人で何度も頷いてから、真っ直ぐ私を見てきた。
「そうだねー、己等から言える事は一つ。この村は可笑しいって事だよ。」
その一言に、私はまた首を傾げた。
まさか誰かいるなんて思ってもみなかった私は驚き、咄嗟に立ち上がって声のする声を見た。
「あーごめんね、驚かせるつもりはなかったんだ。だけど初めて聞く言葉が聞こえたもので。」
牢の奥は暗くて見えないけど、向こうからは私の姿が見えている様子だった。
如何しよう、白装束の人を呼ぶべきなのかな。でも別に危害を加えて来る様子は無いし。
次に自分の取るべき行動が分からない。何も出来ない。
「ねぇ君、名前は何て言うの?」
「……え?」
「名前だよ。己等は彩雲って言うんだ。彩る雲で彩雲。君の名前は?」
私は一つ、小さく深呼吸をしてから、恐る恐る、彩雲と名乗った人の方へ向かって歩いた。
牢の壁にもたれる様に座るその人は、暗い中でも分かるくらい背が高くて、不思議な髪の色をしていた。顔の右半分が隠れる長い黄色い髪に、所々に赤や青、白に黒の毛束があった。そして両手首には手かせが嵌められていた。
「あ!来てくれたんだ!へー、今年の贄は、随分と幼い子なんだね。それに…………」
それに、何だろう。そこから先はよく聞こえなかった。
「ま、良いや。それより名前教えてよー。己等こんな所に一人だから話し相手が欲しいんだよ。」
何だろうこの人、やけに明るく親しく話し掛けて来る。
取り敢えず敵意とかはなさそうだし、向こうも名乗ったのに、私は名乗らないのは失礼と思い、一応名乗る事にした。
「せ、星河です。星の河で星河。」
「星河かー、随分と綺麗な名前だね。」
確かに綺麗だとは思うけど、書けるかと問われたら、私は間違いなく首を横に振ると思う。
それにしても、この人は一体何者なんだろう。悪い人、なのかな。枷を嵌めていて、牢に居るって事は、何かしたんだとは思うけど。でも何だろう、少し安心できる雰囲気があると言うか。
其処まで考えて私は気が付いた。空気が普通に吸えていた事に。吸いやすいとかじゃなくて、気付かない内に、普通に体に入って来ていた。
「如何したの?そんな驚いた顔して。」
「え、や、えっと……空気が簡単に吸えたから。」
私がそう言うと、彩雲は何を言っているのか分からないと言う様な顔をした後、納得した様子で、あー、と呟いた。
「そうだったね!君達にとっては、空気は澱んでて体に悪いのが常識だったっけ!」
その言葉に、今度は私が意味が分からなくて首を傾げた。澱んでるって何?この村の空気の呼び方でそんなの初めて聞いた。
彩雲は一人で何度も頷いてから、真っ直ぐ私を見てきた。
「そうだねー、己等から言える事は一つ。この村は可笑しいって事だよ。」
その一言に、私はまた首を傾げた。
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