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第壱拾壱話
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胃の奥から込み上げる物があって、私は咄嗟に口を塞いだ。
彩雲は何も言わずに畜舎の中が見えない場所に私を降ろすと、自分は中へと入って行ってしまった。
彩雲の事は心配だけど、流石にもう中を見たくない私は、唯吐き気と戦いながら、彩雲が戻って来るのを待った。
暫くしてやっと彩雲が出て来ると、何も言わずに私を抱き上げて、家の表へと歩いて行った。
また戸を叩くのかなと思っていた私だったけど、彩雲は乱暴に、家の戸を足で開けた。
「ひっ!」
「さ、彩雲!?」
家の中には夫婦と思われる人達と、その後ろで苦しそうにしながら、布団で眠っている女の人がいた。夫婦は怯えた様子で私達、というより彩雲を見ている。彩雲はそんな二人は御構い無しに、草履を脱いで、無言のまま二人の前まで歩いて行き、私を降ろして自分も座った。
「ねぇ、あの死体何時からあるの?それにアレ、妖の仕業でしょ。何時から起こってるの。」
何だか怖い彩雲に、私は何も言えず、唯彩雲と夫婦を交互に見る事しか出来なかった。
驚き、怯えた様子で何も言えない二人だったけど、やっと旦那さんが口を開いた。
「ま、まずアンタ一体何者なんだ。随分と大きな体だし、それに随分と怪しいぞ。
ごもっとも、と彩雲は呟いてから、少し和らいだ表情で答えた。
「己等は彩雲。これでも神様で、訳あって旅をしてるんだ。」
「か、神様!?」
信じられないと言う様な表情をしている。うん、そうなる予想はしていたけど、逆に私はよくすぐに信じたなと、今改めて思う。
夫婦はひそひそと会話を始めた。そして二人は少し体を引くと、苦しそうにしている女の人の方を見た。
「本当に神様だってんなら、娘を何とかしてくれよ。」
彩雲はゆっくりと立ち上がり、中腰の姿勢で娘さんに近付いた。彩雲の背丈を考えると、確かにその姿勢になるのか。大変そう。
娘さんの前に座って、暫く何も言わずにいたけど、口を開くと同時に奥さんの方を見た。
「この子、何時からこんな状態なの?」
「え、えと、一か月くらい前、怪物騒動が起き始めた辺りから…………」
「怪物、ね。」
彩雲はまた娘さんの方を見ると、今度は優しく微笑んだ。
「ごめんね、今すぐに完治させてあげる事は出来ないけど、少し楽にしてあげる。」
そう言って娘さんに手をかざすと、少しずつ頭に手を近づけ、額を優しく撫でた。そして、彩雲の手から小さな雷が一瞬だけ放たれると、娘さんの呼吸が打って変わって楽そうになった。
それを見た夫婦は大層驚いた様子で彩雲と娘さんを交互に見た。
「はい、取り敢えず今はこんなくらいしか出来ないけど、多少は良くなったでしょ。」
言いながら彩雲は振り開けると、夫婦は泣きながら彩雲に頭を下げていた。
彩雲は何も言わずに畜舎の中が見えない場所に私を降ろすと、自分は中へと入って行ってしまった。
彩雲の事は心配だけど、流石にもう中を見たくない私は、唯吐き気と戦いながら、彩雲が戻って来るのを待った。
暫くしてやっと彩雲が出て来ると、何も言わずに私を抱き上げて、家の表へと歩いて行った。
また戸を叩くのかなと思っていた私だったけど、彩雲は乱暴に、家の戸を足で開けた。
「ひっ!」
「さ、彩雲!?」
家の中には夫婦と思われる人達と、その後ろで苦しそうにしながら、布団で眠っている女の人がいた。夫婦は怯えた様子で私達、というより彩雲を見ている。彩雲はそんな二人は御構い無しに、草履を脱いで、無言のまま二人の前まで歩いて行き、私を降ろして自分も座った。
「ねぇ、あの死体何時からあるの?それにアレ、妖の仕業でしょ。何時から起こってるの。」
何だか怖い彩雲に、私は何も言えず、唯彩雲と夫婦を交互に見る事しか出来なかった。
驚き、怯えた様子で何も言えない二人だったけど、やっと旦那さんが口を開いた。
「ま、まずアンタ一体何者なんだ。随分と大きな体だし、それに随分と怪しいぞ。
ごもっとも、と彩雲は呟いてから、少し和らいだ表情で答えた。
「己等は彩雲。これでも神様で、訳あって旅をしてるんだ。」
「か、神様!?」
信じられないと言う様な表情をしている。うん、そうなる予想はしていたけど、逆に私はよくすぐに信じたなと、今改めて思う。
夫婦はひそひそと会話を始めた。そして二人は少し体を引くと、苦しそうにしている女の人の方を見た。
「本当に神様だってんなら、娘を何とかしてくれよ。」
彩雲はゆっくりと立ち上がり、中腰の姿勢で娘さんに近付いた。彩雲の背丈を考えると、確かにその姿勢になるのか。大変そう。
娘さんの前に座って、暫く何も言わずにいたけど、口を開くと同時に奥さんの方を見た。
「この子、何時からこんな状態なの?」
「え、えと、一か月くらい前、怪物騒動が起き始めた辺りから…………」
「怪物、ね。」
彩雲はまた娘さんの方を見ると、今度は優しく微笑んだ。
「ごめんね、今すぐに完治させてあげる事は出来ないけど、少し楽にしてあげる。」
そう言って娘さんに手をかざすと、少しずつ頭に手を近づけ、額を優しく撫でた。そして、彩雲の手から小さな雷が一瞬だけ放たれると、娘さんの呼吸が打って変わって楽そうになった。
それを見た夫婦は大層驚いた様子で彩雲と娘さんを交互に見た。
「はい、取り敢えず今はこんなくらいしか出来ないけど、多少は良くなったでしょ。」
言いながら彩雲は振り開けると、夫婦は泣きながら彩雲に頭を下げていた。
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