星河輝く外の空

琴里 美海

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第壱拾弐話

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 さて、一旦は彩雲が神様だと信じてもらえそう。そう思った矢先に、これが一難去ってまた一難かと、私は一人考えていた。
 旦那さんが家を飛び出して、村の人達に彩雲の事を言い回ったら、自分の家も、と何人もの人達が彩雲に押し寄せ、あっちへこっちへ引っ張り凧になってしまった。

「病が感染るといけないから、星河は外で待ってて。」

 と彩雲に言われて、私は村の外で待つ事になってしまった。
 なんでも、妖の振り撒く瘴気によって、何人もの村人が病気になってしまったらしい。
 苦しそうな呼吸音、発熱、咳、その他諸々の症状。彩雲曰く、普通の風邪と相違が無いから、妖を信じない人は何もしないでいて、何日も治らなくて、最終的には死んでしまう事があると言っていた。だけど、私が何よりも引っ掛かったのは、その症状だった。

(お母さん……)

 言われた特徴全てが、お母さんの病気と一致する。本当にお母さんは、妖の瘴気による病気なんだ。
 段々と気持ちが沈んで来た。いけない少し気を紛らわそう。気持ちが沈んでいる時は空を見よう。それにさっき彩雲が夕方の空が何とかって言ってたし。
 私は空を見上げた。

「あ……」

 空は太陽のある方は。薄い赤赤色に染まっていた。

「空が……」
「村じゃ見れなかったでしょ。」

 後ろから聞こえて振り返ると、其処には随分と疲れた様子の彩雲が立っていた。確かに、ずっと紫色の空である村からじゃ、絶対に見れなかったであろう空の色だった。
 空は沢山の色に満ちた、とても綺麗な物だと、私は今日初めて知った。

「そういえば、彩雲大丈夫?」
「何が?」
「疲れてるみたいだから。」

 私がそう言うと、彩雲は嬉しそうに笑って私の事を抱き上げた。この人、私の事を抱き上げるの好きなのかな。そして私の頬擦りしてきた。

「ありがとー!星河は優しいねー!」
「みゅ、みゅー。」

 頬擦りの勢いが凄くて変な言葉が出てしまった。恥ずかしい。でも、これだけ勢いが凄かったら、多分大丈夫かな。
 やっと頬擦りを止めてくれると、私は乱れた髪を直した。

「そういえば、最初に入ったお家の人が、今晩泊めてくれるって。いやー、良い人達で良かったねー。」

 長い袖を振りながら、彩雲はそう言ってきた。結構大切な事を、そんな軽い感じで言って良いのかな。
 何はともあれ、野宿じゃないのは有難いので、お言葉に甘えて、今日はそのお家に泊まらせてもらう事にした。
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