炎陽の下吹く恵風

第九話

「はい、此処がお風呂!!!」

　元々の目的の風呂にこうして連れて来られたんだけど、何か凄い白い煙みたいなのが沢山飛んでる。
　取り敢えず入りゃ良いんだろ。

「あああああああああああああああああああああ!!!」

　入ろうとした瞬間に真後ろで凄い煩い声出された。
　すぐに振り返って睨み付けると、小っこい奴は何か凄い顔しながら震えてた。

「お風呂に入る時は服を脱ぐんだよ!!!」

　そう言って飛び掛かってくると、あたいから無理矢理着てるもんを剥ぎ取ろうとしてきた。そう簡単に負けてたまるかと応戦すると、遠くから恵風の声が聞こえてきた。

「炎陽ちゃん、取り敢えず色葉ちゃんの言う事聞いて。」

　恵風がそう言うと、あたいと小っこい奴は一回止まった。まぁ恵風がそう言うなら仕方ない、一旦言う事聞いてやるか。
　あたいは服を脱ぐと、取り敢えずその辺に投げ捨てた。
　風呂って何なのか全く分からないまま、白い煙みたいなのが凄い部屋にはいると、何故か小っこい奴も付いて来た。

「色々と分からないだろうから教えてあげる!!!」
（要らん!!!）
「そんな嫌そうな顔しないで!!!」

　結局どれだけ嫌だって顔で伝えても、小っこい奴は一歩も引かなかった。けどまぁ実際、
風呂で如何したら良いか分からないから良いか。
　風呂ってのは何か、どうやら水の暖かいやつ、お湯って言うのを、大きな器みたいなのに溜めて池みたいにして、それに浸かったり、体を洗ったりする物らしい。正直、水浴びと何が如何違うのか、あたいには分からん。
　小っこい奴は木で出来た腰掛けを持ってくると、あたいはそれに座った。

「じゃあ頭にお湯かけるから、目瞑っててね。」

　そう言って今あたいが座ってる腰掛けと似た様な、木で出来た器ですぐ近くにある池みたいな所から水を救って、それであたいの頭にかけて来た。
　驚いてあたいが飛び上がると、小っこい奴も驚いたのか声を上げた。

「だ、大丈夫!?熱かった!?」

　熱く、はなかった。でも本当に驚いた。これがお湯、これが暖かい水。そういや飛吉も家族と温泉って言う風呂に似たやつに入るって言ってたけど、あぁ、これは確かに良いもんかもしれない。
　あたいはまた腰掛けに座ると、小っこい奴は安心した様な顔をしてから、また湯を掬ってあたいの頭にかけてくれた。