炎陽の下吹く恵風

琴里 美海

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第壱拾話

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 あの後毛とか洗ってくれたし、湯に浸かって体に何時まで付いて中々取れなかった血を落とした。
 暫く浸かってたら、何か段々と眠くなっていったけど、途中で小っこい奴に起こされた。
 風呂から出て布で毛とか体とかを拭いた。その後見事に綺麗に血が取れてる服を着ると、小っこい奴はあたいが初めて見る道具を手に持って来た。それは小さな、全部同じ長さと太さの木の枝みたいなのが、半分に欠けた月みたいな形したやつにくっ付いてるもんだったら。
 取り敢えずそれを指差すと、小っこい奴は一回それを見てからあたいを見た。

「これは櫛だよ。」

 やっぱり初めて聞く名前の道具だった。

「ちょっとこっち来て。」

 手をくいくい動かされて、あたいは小っこい奴に近付くと、小っこい奴はあたいに腰掛けを差し出してきた。
 取り敢えずそれに座ると、小っこい奴はあたいの毛に触ってきた。それから持っている道具を、あたいの髪に近付けた。小っこい奴曰く、櫛ってのはどうやら毛並みを整えるもんらしい。あたいの毛は母さん達のとはちょっと違うらしく、普通の毛繕いじゃ整えられないらしい。

「ほい出来た。」

 そう言ってあたいの前に何か出してきた。其処には何か真っ黒い奴と、その後ろに小っこい奴と同じ見た目の奴がいた。
 驚いて小っこい奴の後ろに行くと、驚いた顔をしてから持ってるもんを見た。それで何故か笑った。

「ごめんごめん、まさか鏡すら知らないとは思ってなかった。」

 そう言って今手に持ってる物をあたいに見せてきた。其処にはやっぱり、さっき見た奴がいた。

「これね、鏡って言って、そうだなぁ何て言おう。見ている人の姿を映す道具なんだ。詰まり、今映っているのは炎陽ちゃんの姿なの。」

 じゃあ、この黒いのがあたい?これ、こんなの…………

「え、炎陽ちゃん?あ!!何処行くの!!?」

 あたいは見てしまったこの事が事実なのか、それとも嘘なのか分からず、唯気が付いた時には走り出していた。
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