14 / 42
第壱拾四話
しおりを挟む
この村は長閑で良い村だ。昔から人は少し騒がしいところがあるけれど、平和でとても良い村だ。
以前来た時は、果たして何年前だったんだろう。あの頃の亥助はまだとても若かったのに。いやはや、時の流れと言うのは実に早い物だなぁ。もう少しでも目を離したら、亥助も歳で死んでしまいそうだ。
すぐ近くの家の客間に通されると、私は真っ先に炎陽ちゃんを見た。特に怪我とかはしてない様子だから、あの後人喰い妖怪に襲われたりとかは無かった様だ。あぁ良かった。
少しして部屋に亥助と女の子が入って来ると、何故か炎陽ちゃんが警戒した様子で女の子を見た。
「えぇと、君は…………」
「はい!!お初にお目にかかります!!!手前は環と申しまする!!!恵風様のお話は、日頃から曾祖父の亥助より伺っております!!!どうぞ宜しくお願い致しまする!!!」
そう言ってそれはそれは深く頭を下げた。それも凄まじい勢いで。今、この子座っていたら床に頭をぶつけていただろうな。
二人は私達の向かいに座ると、亥助は環ちゃんに話し掛けている。成程、彼女は亥助の通訳か。確かに亥助は今ちゃんと喋る事が出来ないから。
「えぇでは、僭越ながら手前が曾祖父の言葉をお伝え致しますので、何なりとご質問をおっしゃってください!!!」
「そうだなぁ、じゃあまず、君子供がいたんだね。」
「ほっほっほ。」
まぁ最初はこのくらい軽い話の方が良いだろう。何より炎陽ちゃんの環ちゃんに対する警戒が未だに解けない様だし。私が来るまでの間に一体何があったんだろうか。と、そんな事は置いといて、そろそろ本題に入らないと。
「じゃあ質問なのだけど、私が来た時に炎陽ちゃんの事を『森神様』と呼んでいたけど、あれは一体如何言う事なんだい?」
私がそう問い掛けると、亥助は環ちゃんに耳打ちをして、それを環ちゃんは頷きながら聞いている。
一通り聞いたのか、環ちゃんは私達の方を向いた。
「それは至極簡単、その方が森と人間に平穏をもたらす森神様だからでございます!!!」
私は少し炎陽ちゃんを見るが、炎陽ちゃんも何の事だか全く分かっていない様子だった。
「えぇと、申し訳無いけど、一から説明してもらって構わないかな。」
「はい!!一からとなると少々長くなりますが、ご説明致します!!!まずこの村は恵風様が最初に訪れた時よりも昔に、とある理由から二つに分かれました!!!」
それは確か、昔亥助から聞いた事がある。今亥助や環ちゃん達がいるこの村は、あくまでも森や自然、妖怪や妖し達と共に生き、尚且つ人とも暮らしていく事を望む、至極平和な村だ。だけど山を挟んだ向こう側に、この村から出ていたもう一つの勢力の村がある。
「彼等は妖怪や妖し達の力を利用し、森や自然、人間達を支配して自分達が世の頂点に立つ事を目的としています!!!」
「それは知っているよ、だからこそ私はその村の人間達に襲われたのだから。」
それを聞いた瞬間、皆驚いた様子で私を見た。
「それは何と罰当たりな!!!」
(恵風、今の如何言う意味だ?お前まさかあの時空を飛んでた大きな蛇なのか?)
「…………え!!?炎陽ちゃん気付いてなかったの!!?」
(気付くも何も、あたい今の人間の姿の恵風しか見た事無いぞ。)
いや、だとしてもだよ。だとしても龍が居た場所にいたし、何より人間の姿になってもこの背丈だよ?普通分かるでしょ。っていやそうじゃない、それは今は如何でも良い。
「えっと、それでその二つの村と、炎陽ちゃんが森神様と呼ばれている事は、一体如何言う関係が?」
「あぁそれはですね!!」
と、環ちゃんが理由を言おうとした瞬間、背筋に寒気が走った。それはもう今この場にいる全員はが口もきけなくなるくらいの寒い。そしてそれと同時に空が真っ暗になった。
(この妖気!!)
私は知っている、この妖気の持ち主を。いや、強いて言うなら一人しか知らない。
空は未だ暗いまま。
私は唾を思い切り飲み込むと、自身を奮い立たせ、すぐに立ち上がって外へ飛び出した。
空を覆い尽くす黒は、山の頂上へと流れて行った。
以前来た時は、果たして何年前だったんだろう。あの頃の亥助はまだとても若かったのに。いやはや、時の流れと言うのは実に早い物だなぁ。もう少しでも目を離したら、亥助も歳で死んでしまいそうだ。
すぐ近くの家の客間に通されると、私は真っ先に炎陽ちゃんを見た。特に怪我とかはしてない様子だから、あの後人喰い妖怪に襲われたりとかは無かった様だ。あぁ良かった。
少しして部屋に亥助と女の子が入って来ると、何故か炎陽ちゃんが警戒した様子で女の子を見た。
「えぇと、君は…………」
「はい!!お初にお目にかかります!!!手前は環と申しまする!!!恵風様のお話は、日頃から曾祖父の亥助より伺っております!!!どうぞ宜しくお願い致しまする!!!」
そう言ってそれはそれは深く頭を下げた。それも凄まじい勢いで。今、この子座っていたら床に頭をぶつけていただろうな。
二人は私達の向かいに座ると、亥助は環ちゃんに話し掛けている。成程、彼女は亥助の通訳か。確かに亥助は今ちゃんと喋る事が出来ないから。
「えぇでは、僭越ながら手前が曾祖父の言葉をお伝え致しますので、何なりとご質問をおっしゃってください!!!」
「そうだなぁ、じゃあまず、君子供がいたんだね。」
「ほっほっほ。」
まぁ最初はこのくらい軽い話の方が良いだろう。何より炎陽ちゃんの環ちゃんに対する警戒が未だに解けない様だし。私が来るまでの間に一体何があったんだろうか。と、そんな事は置いといて、そろそろ本題に入らないと。
「じゃあ質問なのだけど、私が来た時に炎陽ちゃんの事を『森神様』と呼んでいたけど、あれは一体如何言う事なんだい?」
私がそう問い掛けると、亥助は環ちゃんに耳打ちをして、それを環ちゃんは頷きながら聞いている。
一通り聞いたのか、環ちゃんは私達の方を向いた。
「それは至極簡単、その方が森と人間に平穏をもたらす森神様だからでございます!!!」
私は少し炎陽ちゃんを見るが、炎陽ちゃんも何の事だか全く分かっていない様子だった。
「えぇと、申し訳無いけど、一から説明してもらって構わないかな。」
「はい!!一からとなると少々長くなりますが、ご説明致します!!!まずこの村は恵風様が最初に訪れた時よりも昔に、とある理由から二つに分かれました!!!」
それは確か、昔亥助から聞いた事がある。今亥助や環ちゃん達がいるこの村は、あくまでも森や自然、妖怪や妖し達と共に生き、尚且つ人とも暮らしていく事を望む、至極平和な村だ。だけど山を挟んだ向こう側に、この村から出ていたもう一つの勢力の村がある。
「彼等は妖怪や妖し達の力を利用し、森や自然、人間達を支配して自分達が世の頂点に立つ事を目的としています!!!」
「それは知っているよ、だからこそ私はその村の人間達に襲われたのだから。」
それを聞いた瞬間、皆驚いた様子で私を見た。
「それは何と罰当たりな!!!」
(恵風、今の如何言う意味だ?お前まさかあの時空を飛んでた大きな蛇なのか?)
「…………え!!?炎陽ちゃん気付いてなかったの!!?」
(気付くも何も、あたい今の人間の姿の恵風しか見た事無いぞ。)
いや、だとしてもだよ。だとしても龍が居た場所にいたし、何より人間の姿になってもこの背丈だよ?普通分かるでしょ。っていやそうじゃない、それは今は如何でも良い。
「えっと、それでその二つの村と、炎陽ちゃんが森神様と呼ばれている事は、一体如何言う関係が?」
「あぁそれはですね!!」
と、環ちゃんが理由を言おうとした瞬間、背筋に寒気が走った。それはもう今この場にいる全員はが口もきけなくなるくらいの寒い。そしてそれと同時に空が真っ暗になった。
(この妖気!!)
私は知っている、この妖気の持ち主を。いや、強いて言うなら一人しか知らない。
空は未だ暗いまま。
私は唾を思い切り飲み込むと、自身を奮い立たせ、すぐに立ち上がって外へ飛び出した。
空を覆い尽くす黒は、山の頂上へと流れて行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる