炎陽の下吹く恵風

最終話

　今日も文字を教えてもらった。だけど勉強の前に恵風に急に言われた事が頭から離れなくて、殆ど集中出来なかった。お陰で環に何回も注意された。
　結局そんなに教えてもらえないで終わっちまった。

「今日は何やら落ち着かないご様子ですので、また明日に致しましょう!!集中出来ない状態でやっては、覚えられる事も覚えられませんから!!!」

　正直凄まじく不満だが、まぁ確かに今日教わった事殆ど覚えてないし。

「それではお疲れ様でございます!!!」

　環は凄い勢いで頭を下げてから、また凄い勢いで頭を上げた。
　まだ太陽は沈むような時間じゃ無い。だからあたいは一度紫蘭母さんの様子を見に行く事にした。
　紫蘭母さんが居る部屋に行くと、相変わらず眠っていたから、環にあたいは母さんのいる寝床に帰ったって伝える様に言ってから、環の家を出た。

　森に入ってすぐにあたいは恵風に怒った。

（あんたのせいで集中出来なかった。）
「それはごめんね。」
（何だよ急にあんな事言い出して。）

　あたいがそう言うと、恵風は急に上を見始めた。上見たって木の葉と太陽くらいしかないだろ。そんな事考えてたら急に話し掛けて来た。

「ねぇ、炎陽ちゃん、もしも今の森の形が出来た理由が私だとしたら、君は何て言うのかな。」
（何言ってんだあんた。）
「うん、だよね。そう言うよね君は。でももうちょっと驚いたりとかしてほしかったかなぁ。」
（そもそも言ってる意味が分かんないんだよ。もっと簡単に言えよ。）

　恵風は困った顔をしてあたいを見てる。何なんだよこいつは、何がしたいんだよ全く。
　少ししてまた上を見た。

「この森にはね、元々『森の主』は居なかったんだ。あ、『守神』はずっといたけど。そんな今まで無かった物が生まれるきっかけを作っちゃったのが、私なんだ。」

　うん、あっそう。それがあたいの感想だった。ってかそんな事如何でも良いんだよ、あたいが知りたいのは、さっき急に言い出した話の方で、そんな事は如何でも良いんだよ。
　歩きながらそんな事話してたら、何時の間にかあの大きな木の所に着いていた。

「そう言えば、あの子と出会ったのも此処だったなぁ。」









　　　　　　　　　　　　　　　　　　　続　　　　　　「朱夏の日光に栄える森」