黎明の天泣

琴里 美海

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第四話

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 秋も終わりの頃、もう大分寒くなっていて朝御布団から出るのが大変になって来た。
 ちょっと手や足を出しただけでひやりとした冷たい空気が触り、温かい御布団の中に引っ込めてしまう。そんな事を繰り返していると、とうとう出る事すら諦めて、そのままもう一度寝ようと言う考えになってしまった。

「氷柱!!おい氷柱もう起きろ!!」

 部屋の襖の開けられる音と同時に暁光さんのそんな声が聞こえて、更に御布団を引っぺがされてしまった。

「うぅ、寒い。」
「当たり前だ、もう冬は目の前なんだからな。」
「起きるのでせめて包まらせて下さい。」

 私がそう言うと毛布で私を包んで、暁光さんは私を抱えて居間に運んでくれた。
 囲炉裏には既に火が点いていて、私の部屋と比べるととても温かかった。最初からこっちで寝ていれば良かったかもしれない。あ、でもどちらにしても暁光さんが起きてくれるまでは火は点かないから、どっちにしろ寒いのかな。

「飯食うか?」
「あ、はい。」

 私が返事をすると暁光さんは二人前のご飯を乗せたおぼんを持って来て、向かい合う形で置いてくれた。

「ほい、召し上がれ。」
「頂きます。」

 両手を合わせてお決まりの言葉を言ってからお箸を手に取って御飯を食べ始めた。寒かったから暖かい御飯は凄く幸せな気持ちしてくれる。

「おいひぃ。」

 私がそう言うと何故か暁光さんが少し震えていた。私、何か変な事しちゃったのかな。
 少し心配に思っていると暁光さんの震えも止まって、再び御飯を食べ始めた。

「そういや氷柱、最近雀お前の所に来てるか?」
「え、いえ来てません。」
「そうか。じゃあ別に俺の所にだけ来てないって訳じゃないんだな。」

 最後に来てからもう何か月も経っているのに、雀さんは一向に顔を出さない。普段は何かあるとすぐに雀さんに焼き鳥にするぞと言う暁光さんだけど、やっぱり雀さんの事は嫌いと言う訳ではなく、こうして気にしている様だった。
 でも言われてみれば雀さんが何カ月も来ないなんて事無かったのに。はっ、もしかして何か良からぬ事に巻き込まれたんじゃ。
 と、そんな事を考えていると一羽の鳩が家の中に入って来たかと思った瞬間、ポンと音と共に人の姿になった。

「鳩さん。」
「よ、鳩。何か用か?」
「何か用も何も仕事だよ。」

 鳩さんは情報屋。と言う事は何か情報を仕入れたって事ですね。
 暁光さんはお箸を置いて立ち上がった。

「ちょっと話してくるから、席外すな。食い終わったらそのままにしといて良いからな。」
「あ、はい。」

 そう言って暁光さんは鳩さんと一緒にお部屋を出て行った。私は取り合えず御飯を食べ続けた。
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