黎明の天泣

琴里 美海

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第弐拾壱話

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「もうヤダ、辛い、氷柱がいない。」

 どれだけ探しても氷柱が一切見つからない。

「氷柱ぁ!!!何処だよ!!!俺悲しくて死ぬぞ!!!死なないけど!!!」

 そう叫びながら家の周りを探したが、結局氷柱は見付からなかった。
 もう正直生きる気力すら湧かない状態で俺は家に帰って来た。くそ、氷柱の「暁光さんおかえりなさい。」が聞こえない。寂しいったらありゃしねぇ。

「氷柱ー、何処行ったんだよー。」

 俺は床に倒れてそのまま突っ伏した。
 糞が、氷柱攫った奴本気で殺してやろうか。

「口に出てる。」

 その声が聞こえて顔を上げると、知らない内に家の中に鳩が入って来ていた。

「鳩、何の用だよ。俺は今見事に傷心してんだよ、空気読め。」

 そう言うと鳩は手を出して来た。

「先日のお代、おいらまだ貰って無いんだけど。」
「……………あ。」

 そう言えばあの時、俺は氷柱の名前を叫んで部屋から飛び出したから、鳩に代金渡して無かった。
 俺は起き上がって懐から巾着を出すと、金を取り出して鳩に渡した。

「まいどあり。にしても何で傷心してんだよ。あ、まさかとうとう氷柱に愛想尽かされて出て行かれたとか。」
「煩ェ多分攫われたんだよ!!!」

 だって氷柱だぞ?あいつ滅茶苦茶良い子だから何が何でも置き手紙残すんだよ!!!あ、でも愛想が尽いたから出て行くとか、そんな手紙あったら俺もう永遠に立ち直れない。

「攫われたって誰に。」
「知るか。」

 知ってたら今俺は此処に居ねぇし、犯人は殺してやってるよ。氷柱次第だけどな。
 あー、氷柱に会いたい。あの鈴の音みたいに透き通った声に、冬の綺麗な青空みたいな目に、恥ずかしそうに笑う顔に、頭撫でた時に少し不満そうに頬膨らます氷柱に会いたい。

「ああああああああああああああ!!!氷柱ぁああああああああああ!!!」
「煩い事この上無い。」
「畜生………………おい鳩!!!仕事の依頼だ!!!氷柱の居場所突き止めて来い!!!」
「はいはい。じゃ、前金。」

 そう言って手を出して来る。あぁもう氷柱の為なら前金だろうが何だろうが、例え高額だろうが全額払ってやる。
 俺は巾着を鳩に叩き付けると、鳩はその中から前金分だけを持って家を出て行った。
 鳩が戻って来るまで大人しく待ってるなんて事が出来る訳が無く、俺はまた氷柱を探しに出掛けた。
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