命が進むは早瀬の如く

琴里 美海

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第弐拾六話

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 村に帰ると、村人達が何人も居た。あ、こいつ等目覚ましてたのか。

「ご無事でしたかぁ!!!」
「こ、今回ばかりはいかに森神様と言えどと心配しておりました!!!」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおん!!!」
「流石は森神様ぁああああああああ!!!」
「あんた等落ち着け。」

 あたいはすぐにでも母さん達の所に行きたいってのに、何かもう凄い寄って集ってあぁだこうだ言ってくるから、全然先に進めなかった。
 こいつ等いっそ蹴り倒してやろうか。そう考え始めた頃、母さん達の方からやって来てくれた。

(お帰りなさい炎陽。)
(母さん!!!)

 あたいは恵風から降りると、母さんの所まで走って行った。
 母さんはあたいの周りを回って、怪我が無いか見ていた。まぁ大した怪我はしてないから大丈夫だ。

(良かった、もしも何かったら恵風の喉を噛み千切ろうかと思っていたのだけれど、どうやらその必要は無さそうね。)
「早瀬!!?」

 恵風の慌てた顔が個人的に面白かった。ま、一度恵風に食われたって事は、言わないでおこう。何か喉どころか色々噛みそうだし。
 少しして環が紫蘭母さんを抱えて歩いて来ているのが見えた。

「炎陽殿!!!ご無事でございましたか!!!」

 環が手を振ってきたから、あたいも手を振っておいた。
 環と紫蘭母さんがあたいの所まで来ると、紫蘭母さんはあたいの事を抱き締めてきた。

「良かった、無事で良かった……………」

 紫蘭母さんは何度もそう言ってきた。いや、紫蘭母さんはもっと自分の心配した方が良いと思うけど。
 あたいは恵風の方を見ると、凄く申し訳なさそうな顔しながら母さんと何か話していた。
 話が終わったと思ったら、二人で森の方に向かって歩き始めていた。
 あたいは慌てて紫蘭母さんを環に託して二人の後を追い掛けた。

(まぁ、あれだけ大暴れしていたのだから、そうなる気はしていたわ。)
「ごめん。」
(謝らなくて良いとさっきも言ったでしょう。それに、元々覚悟の上で森の長をやっているのだから。)

 二人の会話が聞こえてくるけど、あたいには意味が分からなかった。
 暫く二人の後ろを付いて行くと、到着した場所は、あの巨木の場所だった。

(…………炎陽、出て来なさい。)
「!!」

 やっぱり気付かれてたか。流石母さん。

「え、炎陽ちゃん。」

 恵風は気付いてなかったみたいだな。

「なぁ、一体何やってんだよ。」

 あたいがそう聞いた瞬間、遠くの方で爆発音が聞こえた。
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