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穂月の小学校編
学校は社会の縮図といいますが、子供だからこその問題解決方法もあるんです
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3年生の秋にもなると、小学校生活にも大分慣れてくる。同時に仲の良い友人もでき、集まってグループが形成される。
穂月は1年生の頃から希や悠里、沙耶と一緒に行動してきたのであまり気にしていなかったが、中にはグループを出入りする児童もいた。
「何だよ、お前」
「お前こそ、何なんだよ」
3時間目が終わり、あと1時間頑張れば給食だと少しだけ高揚していた穂月の耳に荒ぶる声が飛び込んできた。
黒板近くの席で2人の男児が正面から睨み合っている。今にも取っ組み合いが始まりそうな雰囲気に周囲が息を呑む。
「またですか……」
今学期も仲良し4人組で窓際席を確保していたので、穂月には溜息交じりの沙耶の呟きがはっきり聞こえた。
「また?」
穂月が首を傾げると、沙耶は眼鏡を直しながら俯き加減だった眉間に皺を作る。
「あの2人は仲が悪いみたいで、事あるごとに対立してるんです。何度か仲裁もしてるんですが、少し経つとあの有様なんです」
それでも委員長だから放置はできないと、沙耶は席を立つ。
「今度は何ですか」
「委員長には関係ないだろ」
「そうだ、あっちに行ってろよ!」
「きゃっ!」
興奮する2人の男児に突き飛ばされた沙耶が、床に叩きつけられるようになったお尻を痛そうに摩る。
「いい加減にしろと言ってるんです!」
泣くのではなく、怒りを膨らませた沙耶も声を荒げる。
これまでは怒鳴られれば怯えを見せた男児たちだが、3年生も後半に差し掛かって女子相手にビビるのは恥ずかしいという風潮ができつつあった。
そのせいで退けなくなった男児が、揃って矛先をか弱い仲裁者に向ける。
「だからお前には関係ないって言ってんだろ!」
「怪我したくなかったらどいてろよ! 女だからって手加減しねえぞ」
2人に詰め寄られ、沙耶が一歩後退りする。しかし彼女は怖いはずなのに、ここで逃げたら負けとばかりに踏みとどまった。
「殴りたければ好きにすればいいです! でも先生には言いますから!」
「うわ、出たよ、このチクリ魔」
「本当、ウザいよな。だからブスなんだよ」
「なっ――! そんなの関係ないです!」
「関係あるから、顔も性格もブス委員長」
「聞いたことあるぜ。お前、幼稚園の時、友達いなかったんだろ」
「――っ!」
突然の暴露に沙耶が硬直する。
自分たちが優位に立ったと思ったのか、ここぞとばかりに男児たちの口撃が過熱する。次第に沙耶が泣きそうになり、自分の席から見守っていた悠里の瞳にも涙が溜まる。
「はわわ、さっちゃんが大変なの」
「おー」
人間関係に恵まれていた穂月は、もっと小さい頃から虐めとはほとんど縁がなかった。それでも母親や他の大人たちは虐めだけは絶対に駄目と言われていたので、良くないことだとは理解していた。
「やーい、ウザブス委員長」
「あんまり調子に乗ってると、また1人になるぞ」
「うぐっ……」
「そんなことないよ?」
背後から沙耶の肩に両手を置き、穂月はひょっこり顔を出す。
援軍の登場に窮地だった少女は安堵し、男児たちはつまらなさそうな顔をする。
「幼稚園の頃がどうでも、今は穂月たちが友達だもん」
「うわ、こいつまでマジになってるぞ」
「ダセえし、ウゼえし、最悪だな」
「どうして?」
「そういうとこがお前はウザいんだよ!」
「クラスにだって嫌ってる連中は多いからな!」
「ふーん」
本気で疑問に思った問いかけの答えを聞いても、穂月の口からはそんな言葉しか出てこなかった。
予想した反応と違ったのか、男児たちが一瞬だけ毒気を抜かれたようになる。
しかし注目している他の生徒に強い姿でも見せたいのか、すぐにからかうような顔と口調で穂月を口撃する。
「嘘じゃないからな。皆と協力して仲間外れにしてやろうか」
「それ、いいな。高木もウザブス委員長と一緒に1人ぼっちになれよ」
「ならないよ?」
憤る沙耶の背後で、穂月は男児たちの言葉を不思議にしか思わなかった。
「穂月はさっちゃんと一緒だし、のぞちゃんとゆーちゃんもいるから1人にならないもん」
「ちっ、こいつと話してると頭がおかしくなりそうだ。行こうぜ」
「待てよ。高木の奴、調子に乗ってて前から気に入らなかったんだ」
男児の一人が拳を握ってずいっと前に出る。
「何をするつもりですか! ほっちゃんに手を出すというなら容赦しないです!」
両手を広げて穂月を守ろうとする沙耶だが、その手も腕も恐怖で震えていた。
だから穂月は彼女を後ろに下げて、代わりに自分が前に出る。
「一緒に遊ぶの?」
「いいぜ、ボコボコにしてやる!」
男児が振り上げた拳を下ろす。
周りの児童が次に訪れる瞬間を想像して目を逸らした。
穂月は男児の拳をじっと見つめ、それからひょいと避けた。
「叩いたら痛いし、危ないよー?」
「ぷっ、女に躱されてんの。マジ、ダセえ」
「うるせえ、今のは手を抜いたんだ。今度こそ!」
目を血走らせた男児に掴みかかられそうになるも、服が破けたら怒られるのですべて躱し尽くす。
「お前、本気で調子に乗り過ぎだ」
バカにされたと感じたのか、顔を真っ赤にした男児が近くの椅子を掴んだ。
「……それはやり過ぎ」
いつの間に近づいていたのか、希がその男児の手首を握っていた。
「いだっ、いだだだだ、やめっ、やめてっ」
「……なら手を離して」
「わ、わかった、わかったって、いだい、いだあああ」
希が手を離す頃には男児はボロボロと涙を零し、掴まれていた手首を押さえながら床に膝をついた。
「真っ赤になってるじゃん。ふざけんなよ。先生とか親に言うからな!」
「……ダサ」
希が吐き捨てると、教室のそこかしこからクスクスと笑う声が聞こえた。
*
「さっきは本当に助かりました。お礼です」
沙耶が給食のプリンを差し出して来た。献立表で見かけた時から穂月が楽しみにしていたのを知っていたので気を遣ったのだろう。
一瞬だけ誘惑にかられたが、すぐに穂月は首を左右に振る。
「さっちゃんもプリン好きでしょ。皆で食べた方が美味しいよー。
それに……お礼って何?」
穂月が本気で不思議がってるのを見て、沙耶が噴き出す。
「ほっちゃんは本当にブレないですね。でも、そこが魅力だと私は思うんです。だからあの男の子たちが言ったことは気にしないでほしいです」
「……何か言われたっけ?」
「ならいいんです。ただこれだけは覚えておいてほしいです。ほっちゃんに何かあっても、私は絶対に味方です。絶対です」
絶対を何度も繰り返し、最後に頬を赤く染めて「友達ですから」と沙耶は消え入りそうな声で言った。
「ゆーちゃんもなのっ。さっきは怖くて何もできなかったけど、でも、でもっ、ほっちゃんたちとずっと一緒にいるのっ」
悠里の両手で右手を包まれ、穂月は「おー」と少しだけ慌てる。照れたのではなく、持っているスプーンから黄金の一片が零れそうになったからだ。
「……1人になったら寝てればいい」
「その方法はのぞちゃんしかできないような気がするの」
*
人間関係というのは些細な出来事で変わる。それは穂月たち小学生であっても例外ではない。
5時間目が始まる前から普段とは異なる変な空気が教室を支配していた。それが露わになったのは放課後になってからだった。
今日も真っ直ぐにムーンリーフへ帰ろうとしていた穂月が目にしたのは、1人でポツンと座る男児。3時間目の休み時間に穂月を叩こうとした生徒だった。
何度か近くの男子に話しかけるも完全無視をされ、伸ばした手も空ぶる。俯き、グッと噛んだ唇が震えている。
「女に本気になったヤバい奴と男子の間で言われ、仲間外れになってしまったみたいです」
穂月が気にしているのを見た沙耶が事情を説明する。
「運動会とかで活躍するほっちゃんは彼が言うほど嫌われてないですし、女子の評価も下げてしまったんです」
「さっちゃんとほっちゃんに意地悪するからなのっ」
自業自得とばかりに悠里はぷんすか怒っているが、穂月は昼休みにも言った通り、そこまで気にしていなかった。
「おいってば」
「話しかけんなよ、お前と遊ぶ奴なんてもう誰もいないし」
よく喧嘩をしていたという男児にもけんもほろろに扱われ、いよいよ居場所がなくなりそうだという時に穂月はその少年に近づいた。
「なら穂月が遊んであげるー」
「何だよ、仕返しでもしようってのかよ」
「仕返しじゃなくて劇をするのっ」
「劇? 何言ってんだ?」
3年生になって初めて同じクラスになったその男児は、穂月が主導して過去2年間、文化祭で劇をしていたのを知らなかったみたいだった。
「ほっちゃん?」
「王子様はのぞちゃんかさっちゃんだから……魔王?」
「何でだよ! 王子様なら男がやるべきだろ!」
「おー」
「大体、何の劇をやるつもりなんだよ」
「シンデレラ」
「魔王、出てこないよな!?」
穂月と男児がギャイギャイ騒いでいるうちに、1人また1人とクラスメートが近寄ってくる。
最初はどこか警戒しながら、それでも次第に普通に話すようになり、放課後の時間を使って強引に台本もない劇の開催を穂月が宣言する頃には、クラスの中で仲間外れは誰もいなくなっていた。
「ほっちゃんはやっぱり凄いです」
「ゆーちゃんもそう思うのっ」
「おー?」
「……ほっちゃんはずっとそのままでいいってこと」
友人2人に尊敬の眼差しを向けられ、希には頭をなでなでされ、意味も理由もわからなかったが、皆が嬉しそうなのでまあいいかと穂月は納得する。
「あいだほっ!」
元気な返事をすれば頭の中はもう、皆で劇をすることで一杯だった。
穂月は1年生の頃から希や悠里、沙耶と一緒に行動してきたのであまり気にしていなかったが、中にはグループを出入りする児童もいた。
「何だよ、お前」
「お前こそ、何なんだよ」
3時間目が終わり、あと1時間頑張れば給食だと少しだけ高揚していた穂月の耳に荒ぶる声が飛び込んできた。
黒板近くの席で2人の男児が正面から睨み合っている。今にも取っ組み合いが始まりそうな雰囲気に周囲が息を呑む。
「またですか……」
今学期も仲良し4人組で窓際席を確保していたので、穂月には溜息交じりの沙耶の呟きがはっきり聞こえた。
「また?」
穂月が首を傾げると、沙耶は眼鏡を直しながら俯き加減だった眉間に皺を作る。
「あの2人は仲が悪いみたいで、事あるごとに対立してるんです。何度か仲裁もしてるんですが、少し経つとあの有様なんです」
それでも委員長だから放置はできないと、沙耶は席を立つ。
「今度は何ですか」
「委員長には関係ないだろ」
「そうだ、あっちに行ってろよ!」
「きゃっ!」
興奮する2人の男児に突き飛ばされた沙耶が、床に叩きつけられるようになったお尻を痛そうに摩る。
「いい加減にしろと言ってるんです!」
泣くのではなく、怒りを膨らませた沙耶も声を荒げる。
これまでは怒鳴られれば怯えを見せた男児たちだが、3年生も後半に差し掛かって女子相手にビビるのは恥ずかしいという風潮ができつつあった。
そのせいで退けなくなった男児が、揃って矛先をか弱い仲裁者に向ける。
「だからお前には関係ないって言ってんだろ!」
「怪我したくなかったらどいてろよ! 女だからって手加減しねえぞ」
2人に詰め寄られ、沙耶が一歩後退りする。しかし彼女は怖いはずなのに、ここで逃げたら負けとばかりに踏みとどまった。
「殴りたければ好きにすればいいです! でも先生には言いますから!」
「うわ、出たよ、このチクリ魔」
「本当、ウザいよな。だからブスなんだよ」
「なっ――! そんなの関係ないです!」
「関係あるから、顔も性格もブス委員長」
「聞いたことあるぜ。お前、幼稚園の時、友達いなかったんだろ」
「――っ!」
突然の暴露に沙耶が硬直する。
自分たちが優位に立ったと思ったのか、ここぞとばかりに男児たちの口撃が過熱する。次第に沙耶が泣きそうになり、自分の席から見守っていた悠里の瞳にも涙が溜まる。
「はわわ、さっちゃんが大変なの」
「おー」
人間関係に恵まれていた穂月は、もっと小さい頃から虐めとはほとんど縁がなかった。それでも母親や他の大人たちは虐めだけは絶対に駄目と言われていたので、良くないことだとは理解していた。
「やーい、ウザブス委員長」
「あんまり調子に乗ってると、また1人になるぞ」
「うぐっ……」
「そんなことないよ?」
背後から沙耶の肩に両手を置き、穂月はひょっこり顔を出す。
援軍の登場に窮地だった少女は安堵し、男児たちはつまらなさそうな顔をする。
「幼稚園の頃がどうでも、今は穂月たちが友達だもん」
「うわ、こいつまでマジになってるぞ」
「ダセえし、ウゼえし、最悪だな」
「どうして?」
「そういうとこがお前はウザいんだよ!」
「クラスにだって嫌ってる連中は多いからな!」
「ふーん」
本気で疑問に思った問いかけの答えを聞いても、穂月の口からはそんな言葉しか出てこなかった。
予想した反応と違ったのか、男児たちが一瞬だけ毒気を抜かれたようになる。
しかし注目している他の生徒に強い姿でも見せたいのか、すぐにからかうような顔と口調で穂月を口撃する。
「嘘じゃないからな。皆と協力して仲間外れにしてやろうか」
「それ、いいな。高木もウザブス委員長と一緒に1人ぼっちになれよ」
「ならないよ?」
憤る沙耶の背後で、穂月は男児たちの言葉を不思議にしか思わなかった。
「穂月はさっちゃんと一緒だし、のぞちゃんとゆーちゃんもいるから1人にならないもん」
「ちっ、こいつと話してると頭がおかしくなりそうだ。行こうぜ」
「待てよ。高木の奴、調子に乗ってて前から気に入らなかったんだ」
男児の一人が拳を握ってずいっと前に出る。
「何をするつもりですか! ほっちゃんに手を出すというなら容赦しないです!」
両手を広げて穂月を守ろうとする沙耶だが、その手も腕も恐怖で震えていた。
だから穂月は彼女を後ろに下げて、代わりに自分が前に出る。
「一緒に遊ぶの?」
「いいぜ、ボコボコにしてやる!」
男児が振り上げた拳を下ろす。
周りの児童が次に訪れる瞬間を想像して目を逸らした。
穂月は男児の拳をじっと見つめ、それからひょいと避けた。
「叩いたら痛いし、危ないよー?」
「ぷっ、女に躱されてんの。マジ、ダセえ」
「うるせえ、今のは手を抜いたんだ。今度こそ!」
目を血走らせた男児に掴みかかられそうになるも、服が破けたら怒られるのですべて躱し尽くす。
「お前、本気で調子に乗り過ぎだ」
バカにされたと感じたのか、顔を真っ赤にした男児が近くの椅子を掴んだ。
「……それはやり過ぎ」
いつの間に近づいていたのか、希がその男児の手首を握っていた。
「いだっ、いだだだだ、やめっ、やめてっ」
「……なら手を離して」
「わ、わかった、わかったって、いだい、いだあああ」
希が手を離す頃には男児はボロボロと涙を零し、掴まれていた手首を押さえながら床に膝をついた。
「真っ赤になってるじゃん。ふざけんなよ。先生とか親に言うからな!」
「……ダサ」
希が吐き捨てると、教室のそこかしこからクスクスと笑う声が聞こえた。
*
「さっきは本当に助かりました。お礼です」
沙耶が給食のプリンを差し出して来た。献立表で見かけた時から穂月が楽しみにしていたのを知っていたので気を遣ったのだろう。
一瞬だけ誘惑にかられたが、すぐに穂月は首を左右に振る。
「さっちゃんもプリン好きでしょ。皆で食べた方が美味しいよー。
それに……お礼って何?」
穂月が本気で不思議がってるのを見て、沙耶が噴き出す。
「ほっちゃんは本当にブレないですね。でも、そこが魅力だと私は思うんです。だからあの男の子たちが言ったことは気にしないでほしいです」
「……何か言われたっけ?」
「ならいいんです。ただこれだけは覚えておいてほしいです。ほっちゃんに何かあっても、私は絶対に味方です。絶対です」
絶対を何度も繰り返し、最後に頬を赤く染めて「友達ですから」と沙耶は消え入りそうな声で言った。
「ゆーちゃんもなのっ。さっきは怖くて何もできなかったけど、でも、でもっ、ほっちゃんたちとずっと一緒にいるのっ」
悠里の両手で右手を包まれ、穂月は「おー」と少しだけ慌てる。照れたのではなく、持っているスプーンから黄金の一片が零れそうになったからだ。
「……1人になったら寝てればいい」
「その方法はのぞちゃんしかできないような気がするの」
*
人間関係というのは些細な出来事で変わる。それは穂月たち小学生であっても例外ではない。
5時間目が始まる前から普段とは異なる変な空気が教室を支配していた。それが露わになったのは放課後になってからだった。
今日も真っ直ぐにムーンリーフへ帰ろうとしていた穂月が目にしたのは、1人でポツンと座る男児。3時間目の休み時間に穂月を叩こうとした生徒だった。
何度か近くの男子に話しかけるも完全無視をされ、伸ばした手も空ぶる。俯き、グッと噛んだ唇が震えている。
「女に本気になったヤバい奴と男子の間で言われ、仲間外れになってしまったみたいです」
穂月が気にしているのを見た沙耶が事情を説明する。
「運動会とかで活躍するほっちゃんは彼が言うほど嫌われてないですし、女子の評価も下げてしまったんです」
「さっちゃんとほっちゃんに意地悪するからなのっ」
自業自得とばかりに悠里はぷんすか怒っているが、穂月は昼休みにも言った通り、そこまで気にしていなかった。
「おいってば」
「話しかけんなよ、お前と遊ぶ奴なんてもう誰もいないし」
よく喧嘩をしていたという男児にもけんもほろろに扱われ、いよいよ居場所がなくなりそうだという時に穂月はその少年に近づいた。
「なら穂月が遊んであげるー」
「何だよ、仕返しでもしようってのかよ」
「仕返しじゃなくて劇をするのっ」
「劇? 何言ってんだ?」
3年生になって初めて同じクラスになったその男児は、穂月が主導して過去2年間、文化祭で劇をしていたのを知らなかったみたいだった。
「ほっちゃん?」
「王子様はのぞちゃんかさっちゃんだから……魔王?」
「何でだよ! 王子様なら男がやるべきだろ!」
「おー」
「大体、何の劇をやるつもりなんだよ」
「シンデレラ」
「魔王、出てこないよな!?」
穂月と男児がギャイギャイ騒いでいるうちに、1人また1人とクラスメートが近寄ってくる。
最初はどこか警戒しながら、それでも次第に普通に話すようになり、放課後の時間を使って強引に台本もない劇の開催を穂月が宣言する頃には、クラスの中で仲間外れは誰もいなくなっていた。
「ほっちゃんはやっぱり凄いです」
「ゆーちゃんもそう思うのっ」
「おー?」
「……ほっちゃんはずっとそのままでいいってこと」
友人2人に尊敬の眼差しを向けられ、希には頭をなでなでされ、意味も理由もわからなかったが、皆が嬉しそうなのでまあいいかと穂月は納得する。
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