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さらに孫たちの学生時代編
卒業式が終わっても陽向が現れない!? 穂月が裏庭で目撃した驚愕の現場
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これまでに2度ほど経験してきてはいるが、やはり仲の良い友人が学校を旅立つ儀式を見るのは、嬉しさよりも寂しさを覚えてしまう。
自分の席に座り、穂月はジッと壇上を眺める。小学校の頃などと違い、生徒人数が多いので卒業証書はそれぞれクラスの代表に手渡される。
視線を卒業生の列に移せば、目立つ茶髪のポニーテールをすぐに発見する。普通なら教師に注意されそうなものだが、中学校の教師が彼女の場合は地毛であると事前に伝えていてくれたらしく、そこまで問題にはならなかったそうだ。
「まーたんも卒業してしまうの……」
出席番号順に並んで座っているため、穂月のすぐ前には悠里がいた。
「ゆーちゃんも寂しいの?」
「当然なの。虐めて遊ぶ相手がいなくなってしまうの」
「あはは」
顔つきが凛々しい陽向は、外見だけなら立派な不良だ。男言葉で話し、態度はぶっきらぼう。付き合ってみれば面倒見の良い姐さんタイプだとわかるが、そうと知らない一般生徒には恐怖の対象だったようで、ソフトボール部員以外と接する機会はさほど多くなかったらしい。
これも卒業前に皆で遊んだ際、陽向本人から聞いた話である。
「またあーちゃんもまーたんもいなくなっちゃったね」
新しい学校に進んでも寂しくなかったり、不安でなかったりしたのは、きっと年上の友人たちが先に進学してくれていたからなのだろう。考えれば考えるほど、穂月は自分が恵まれているのを実感した。
「そういえばまーたんは進学するんだよねー?」
「本人はかなり迷ってたみたいだけど、最終的には奨学金を貰うのと卒業後はムーンリーフで働くということで県大学に入るそうなの」
インターハイ制覇したチームの主将で、秋の国体にも県の代表選手に選出され、レギュラーとして活躍した。そんな地元の逸材を県大学が放っておくはずもなかった。
「ソフトボール部に入るのを条件に援助もでるから、助かったってまーたんが言ってたの」
「おー」
そういえばそんな話を聞いた気もする穂月である。あまり覚えていないということは、恐らくソフトボール部で演劇を楽しんでいる時にでもしていたのだろう。
*
「まーたん、こないねー」
卒業式といえば花束。
花束といえば校庭で手渡すのが穂月たちのお約束である。
周囲には他にも卒業生を待つ在校生がちらほらと見える。
「きっと教室での話が盛り上がってるんです」
組んだ掌に肘を乗せる沙耶が、その光景を想像したように微笑んだ。
「ですが他の卒業生はちらほら出てきてますわよ。まーたん先輩は中学でもほとんど先頭で中庭に来ていたかと思うのですが」
貴族らしい態度を実践中なのか、凛が頬に手を添えてため息をついた。悠里あたりがすれば似合ったのかもしれないが、生憎と彼女は可愛いよりも恰好いいタイプの女性である。しかもどこか芝居じみているので少し――いや、かなり浮いた感じになってしまった。
普段ならあれこれとからかう悠里がそっと凛から目を逸らしつつ、改めて昇降口の様子を確認する。
「人も増えてきたけど、やっぱりまーたんは見当たらないの」
「……きっと保健室で寝てる……迎えに行こう……」
「おー」
「騙されては駄目よ。のぞちゃんが保健室で眠りたいだけなんだから」
「ふおおっ!?」
盛大に驚く穂月。舌打ちする希。苦笑する友人たち。
そしてそんな面々を温かい目で見守る朱華。
「……って、あーちゃん!?」
さらに目を見開く穂月に、パンツスーツでビシッと決めた朱華が軽く右手を挙げた。
「最近は大学が忙しくて会えてなかったから久しぶりね」
朱華といえば昨年の修学旅行が思い出される。その時の服装も地元にいた頃より大人びていたが、こうしてスーツ姿を見るとキャリアウーマンにしか見えない。
「まーたんの卒業式を見に来たのー?」
穂月の確認に、朱華が肩を竦めた。
「そうよ。毎日LINEで見に来い、見に来いってしつこいのよ。来たら来たで、本当に来たのかとか言うくせにね」
「わかります。しかも嬉しそうなんですよね。本人はバレてないと思っているみたいですが」
沙耶が応じると、朱華は笑みを濃くした。
「皆の中で一番わかりやすいのに、誰よりポーカーフェイスを気取るのよね。
……で、その張本人はまだなの?」
朱華は小さな花束も持って準備万端なのだが、肝心の主役がなかなか姿を現さない。ちらほらと校門を出る卒業生もいるのにだ。
「さすがに遅いわね。そもそも本当ならほっちゃんたちとワイワイやってる間にそっと近寄って驚かせるつもりだったのに」
またしても肩を竦めたあと、朱華はそうだと言って、にっこり笑った。
「あーちゃん、なんか悪い顔してるー」
「きっと何か企んでるの。清楚そうに見えて腹黒なのは相変わらずなの」
「ゆーちゃんほどではないわよ」
悠里の額を人差し指で軽く押したあと、朱華は穂月の顔を見て提案する。
「せっかくだから迎えに行きましょう」
*
校舎に入る前に、陽向と同じクラスだったソフトボール部員に朱華が話を聞いたところ、先に1人で教室から出たらしかった。
「ますますどこに行ったのか謎だねー」
呟きながら、穂月は皆の先頭でグラウンド隅をとことこ歩く。校内にいないのなら、青春を捧げたソフトボール部関連の場所にいるのではと思ったのだ。
「こっちにもいないの。こうなると残るは1つしかないの」
「ゆーちゃん、まーたんがいる場所に心当たりあるのー?」
「ズバリ裏庭なの」
「裏庭?」
不思議そうに首を斜めにする穂月に、可愛らしい少女はしたり顔で説明する。
「ヤンキーの卒業式といえばお礼参りが定番なの。きっと裏庭で影の番長だったとかいう奴にボコボコにされてるの」
「ふおおっ!? そういえば穂月も聞いたことがあるよ!」
「漫画とかアニメとかで、でしょ。ゆーちゃんの情報元は置いといて、この学校にそんなくだらない真似をする生徒はいないわよ」
ため息をついた朱華に頭をグリグリされ、悠里が悲鳴を上げる。
「そう言いながらあーちゃんも心配そうなの。きっと可能性があると――」
「――あら、まだ言うの? 部活に励んでるだけあって、ゆーちゃんもだいぶ防御力がついてきたわね」
「ひいいっ! そんな目的で部活をしてるわけじゃないのっ」
なんやかんやで仲の良さそうな2人を横目で見つつ、他に当てもないので穂月は裏庭に足を向けた。
*
種類はわからないが、とりあえず背の高い木が茂る裏庭は日中でも少し薄暗い。その影響で夏は涼しいので、穂月はランニング中の休憩場所にしていたりする。ついでにいうと希もよく部活中に、校舎の壁を背もたれにして昼寝サボリをしている。
そんな裏庭に複数の人の気配がした。まさかと穂月は顔を強張らせる。散々煽っていた悠里も瞳を輝かせるのではなく、臨戦態勢をとってしっかりと体格の良い凛を盾にしていた。小声で文句を言われているが、毒舌小柄少女はまったく聞く耳を持っていなかった。
「まーたんがいたよ。
でもゆーちゃんが言ってたのとは違うっぽいよ」
人1人分程度の間隔を開けて対峙する両者とも真剣な顔つきだが、剣呑な空気にはなっていない。緊張感は漂っているが。
「す、好きです、付き合ってください」
掌に爪を食い込ませた男子が、勢いよく頭を下げた。恥ずかしくて陽向の顔を見られないのだろう。
一方で意図せず覗き見する形になった穂月たちは、歓声を上げるのに必死だった。
「……悪いけど、それは無理だ」
顔を上げた男子はショックを隠すように笑い、
「好きな人がいるの?」
「そういうんじゃねえよ。けど……そうだな、気になってる奴ならいるかな。ダチには絶対からかわれるから言えねえけど」
「そうか……でも告白できて良かったよ、ありがとう」
少しでも恰好いいところを印象付けておきたいのか、黒髪を真ん中分けにしていた男子はそれだけ言って立ち去った。
「やれやれ、俺なんかのどこがいいんだろうな」
陽向は右手で首を揉みほぐしながら、どこか疲れたようにそう漏らした。
「それにしても3人ってどういうことだよ。あーちゃんも来てるかもしんねえのに、いつまで経っても中庭に行けねえじゃ――」
「――ありえませんわ!」
太い木の幹に揃って身を隠していた穂月たちの中から、独り言を聞き流せなかった凛が大きな声を上げながら飛び出した。
「りんりんっ!? 何でこんなとこにいるんだよ!」
「そんなことはどうでもいいですわ! それよりも! 見栄を! 見栄を張らなくていいのですわ! わたくしたちはお友達ではありませんか!」
「いきなり現れて何を言ってやがる! ええい、手を離せ!」
掴まれた肩を揺さぶられ、陽向は懸命に抵抗するが、腕力だけなら部内トップの凛が相手ではなかなか上手く振り解けない。
「どうせほっちゃんたちもそこらにいるんだろ!? りんりんを止めてくれ!」
*
なんとか凛を宥めて話を聞くと、どうやら本当に3人の男子に告白されていたみたいだった。断って中庭の方へ行こうとしては陽向を探していた他の男子に掴まり、また裏庭まで連れ戻されて告白という流れを繰り返していたらしい。
卒業式で告白されたこと皆無な凛が、裏庭の隅で「納得いきませんわ」と沈んでいるが、そちらは慰め役の沙耶に任せきりである。悠里も傍にいるので、きっとすぐに元気を取り戻すだろう。怒りの可能性も多分にあるが。
一方でうりうりと陽向をからかっているのは朱華だ。穂月はにこにこしながら2人のやり取りを見ていた。興味なさそうにぐでっとする希を背中に感じながら。
「私たちに教えたらからかわれるっていう気になる男の子は誰かな? 誰なのかな?」
「だああ、うぜえ! 言わねえって言ってんだろ!」
いつになく執拗にまとわりつく朱華を振り解きながら、陽向は逃げるように裏庭に背を向ける。
そんな彼女を追いかけ、中庭で穂月はおめでとうの言葉と一緒にずっと持っていた花束を手渡した。
自分の席に座り、穂月はジッと壇上を眺める。小学校の頃などと違い、生徒人数が多いので卒業証書はそれぞれクラスの代表に手渡される。
視線を卒業生の列に移せば、目立つ茶髪のポニーテールをすぐに発見する。普通なら教師に注意されそうなものだが、中学校の教師が彼女の場合は地毛であると事前に伝えていてくれたらしく、そこまで問題にはならなかったそうだ。
「まーたんも卒業してしまうの……」
出席番号順に並んで座っているため、穂月のすぐ前には悠里がいた。
「ゆーちゃんも寂しいの?」
「当然なの。虐めて遊ぶ相手がいなくなってしまうの」
「あはは」
顔つきが凛々しい陽向は、外見だけなら立派な不良だ。男言葉で話し、態度はぶっきらぼう。付き合ってみれば面倒見の良い姐さんタイプだとわかるが、そうと知らない一般生徒には恐怖の対象だったようで、ソフトボール部員以外と接する機会はさほど多くなかったらしい。
これも卒業前に皆で遊んだ際、陽向本人から聞いた話である。
「またあーちゃんもまーたんもいなくなっちゃったね」
新しい学校に進んでも寂しくなかったり、不安でなかったりしたのは、きっと年上の友人たちが先に進学してくれていたからなのだろう。考えれば考えるほど、穂月は自分が恵まれているのを実感した。
「そういえばまーたんは進学するんだよねー?」
「本人はかなり迷ってたみたいだけど、最終的には奨学金を貰うのと卒業後はムーンリーフで働くということで県大学に入るそうなの」
インターハイ制覇したチームの主将で、秋の国体にも県の代表選手に選出され、レギュラーとして活躍した。そんな地元の逸材を県大学が放っておくはずもなかった。
「ソフトボール部に入るのを条件に援助もでるから、助かったってまーたんが言ってたの」
「おー」
そういえばそんな話を聞いた気もする穂月である。あまり覚えていないということは、恐らくソフトボール部で演劇を楽しんでいる時にでもしていたのだろう。
*
「まーたん、こないねー」
卒業式といえば花束。
花束といえば校庭で手渡すのが穂月たちのお約束である。
周囲には他にも卒業生を待つ在校生がちらほらと見える。
「きっと教室での話が盛り上がってるんです」
組んだ掌に肘を乗せる沙耶が、その光景を想像したように微笑んだ。
「ですが他の卒業生はちらほら出てきてますわよ。まーたん先輩は中学でもほとんど先頭で中庭に来ていたかと思うのですが」
貴族らしい態度を実践中なのか、凛が頬に手を添えてため息をついた。悠里あたりがすれば似合ったのかもしれないが、生憎と彼女は可愛いよりも恰好いいタイプの女性である。しかもどこか芝居じみているので少し――いや、かなり浮いた感じになってしまった。
普段ならあれこれとからかう悠里がそっと凛から目を逸らしつつ、改めて昇降口の様子を確認する。
「人も増えてきたけど、やっぱりまーたんは見当たらないの」
「……きっと保健室で寝てる……迎えに行こう……」
「おー」
「騙されては駄目よ。のぞちゃんが保健室で眠りたいだけなんだから」
「ふおおっ!?」
盛大に驚く穂月。舌打ちする希。苦笑する友人たち。
そしてそんな面々を温かい目で見守る朱華。
「……って、あーちゃん!?」
さらに目を見開く穂月に、パンツスーツでビシッと決めた朱華が軽く右手を挙げた。
「最近は大学が忙しくて会えてなかったから久しぶりね」
朱華といえば昨年の修学旅行が思い出される。その時の服装も地元にいた頃より大人びていたが、こうしてスーツ姿を見るとキャリアウーマンにしか見えない。
「まーたんの卒業式を見に来たのー?」
穂月の確認に、朱華が肩を竦めた。
「そうよ。毎日LINEで見に来い、見に来いってしつこいのよ。来たら来たで、本当に来たのかとか言うくせにね」
「わかります。しかも嬉しそうなんですよね。本人はバレてないと思っているみたいですが」
沙耶が応じると、朱華は笑みを濃くした。
「皆の中で一番わかりやすいのに、誰よりポーカーフェイスを気取るのよね。
……で、その張本人はまだなの?」
朱華は小さな花束も持って準備万端なのだが、肝心の主役がなかなか姿を現さない。ちらほらと校門を出る卒業生もいるのにだ。
「さすがに遅いわね。そもそも本当ならほっちゃんたちとワイワイやってる間にそっと近寄って驚かせるつもりだったのに」
またしても肩を竦めたあと、朱華はそうだと言って、にっこり笑った。
「あーちゃん、なんか悪い顔してるー」
「きっと何か企んでるの。清楚そうに見えて腹黒なのは相変わらずなの」
「ゆーちゃんほどではないわよ」
悠里の額を人差し指で軽く押したあと、朱華は穂月の顔を見て提案する。
「せっかくだから迎えに行きましょう」
*
校舎に入る前に、陽向と同じクラスだったソフトボール部員に朱華が話を聞いたところ、先に1人で教室から出たらしかった。
「ますますどこに行ったのか謎だねー」
呟きながら、穂月は皆の先頭でグラウンド隅をとことこ歩く。校内にいないのなら、青春を捧げたソフトボール部関連の場所にいるのではと思ったのだ。
「こっちにもいないの。こうなると残るは1つしかないの」
「ゆーちゃん、まーたんがいる場所に心当たりあるのー?」
「ズバリ裏庭なの」
「裏庭?」
不思議そうに首を斜めにする穂月に、可愛らしい少女はしたり顔で説明する。
「ヤンキーの卒業式といえばお礼参りが定番なの。きっと裏庭で影の番長だったとかいう奴にボコボコにされてるの」
「ふおおっ!? そういえば穂月も聞いたことがあるよ!」
「漫画とかアニメとかで、でしょ。ゆーちゃんの情報元は置いといて、この学校にそんなくだらない真似をする生徒はいないわよ」
ため息をついた朱華に頭をグリグリされ、悠里が悲鳴を上げる。
「そう言いながらあーちゃんも心配そうなの。きっと可能性があると――」
「――あら、まだ言うの? 部活に励んでるだけあって、ゆーちゃんもだいぶ防御力がついてきたわね」
「ひいいっ! そんな目的で部活をしてるわけじゃないのっ」
なんやかんやで仲の良さそうな2人を横目で見つつ、他に当てもないので穂月は裏庭に足を向けた。
*
種類はわからないが、とりあえず背の高い木が茂る裏庭は日中でも少し薄暗い。その影響で夏は涼しいので、穂月はランニング中の休憩場所にしていたりする。ついでにいうと希もよく部活中に、校舎の壁を背もたれにして昼寝サボリをしている。
そんな裏庭に複数の人の気配がした。まさかと穂月は顔を強張らせる。散々煽っていた悠里も瞳を輝かせるのではなく、臨戦態勢をとってしっかりと体格の良い凛を盾にしていた。小声で文句を言われているが、毒舌小柄少女はまったく聞く耳を持っていなかった。
「まーたんがいたよ。
でもゆーちゃんが言ってたのとは違うっぽいよ」
人1人分程度の間隔を開けて対峙する両者とも真剣な顔つきだが、剣呑な空気にはなっていない。緊張感は漂っているが。
「す、好きです、付き合ってください」
掌に爪を食い込ませた男子が、勢いよく頭を下げた。恥ずかしくて陽向の顔を見られないのだろう。
一方で意図せず覗き見する形になった穂月たちは、歓声を上げるのに必死だった。
「……悪いけど、それは無理だ」
顔を上げた男子はショックを隠すように笑い、
「好きな人がいるの?」
「そういうんじゃねえよ。けど……そうだな、気になってる奴ならいるかな。ダチには絶対からかわれるから言えねえけど」
「そうか……でも告白できて良かったよ、ありがとう」
少しでも恰好いいところを印象付けておきたいのか、黒髪を真ん中分けにしていた男子はそれだけ言って立ち去った。
「やれやれ、俺なんかのどこがいいんだろうな」
陽向は右手で首を揉みほぐしながら、どこか疲れたようにそう漏らした。
「それにしても3人ってどういうことだよ。あーちゃんも来てるかもしんねえのに、いつまで経っても中庭に行けねえじゃ――」
「――ありえませんわ!」
太い木の幹に揃って身を隠していた穂月たちの中から、独り言を聞き流せなかった凛が大きな声を上げながら飛び出した。
「りんりんっ!? 何でこんなとこにいるんだよ!」
「そんなことはどうでもいいですわ! それよりも! 見栄を! 見栄を張らなくていいのですわ! わたくしたちはお友達ではありませんか!」
「いきなり現れて何を言ってやがる! ええい、手を離せ!」
掴まれた肩を揺さぶられ、陽向は懸命に抵抗するが、腕力だけなら部内トップの凛が相手ではなかなか上手く振り解けない。
「どうせほっちゃんたちもそこらにいるんだろ!? りんりんを止めてくれ!」
*
なんとか凛を宥めて話を聞くと、どうやら本当に3人の男子に告白されていたみたいだった。断って中庭の方へ行こうとしては陽向を探していた他の男子に掴まり、また裏庭まで連れ戻されて告白という流れを繰り返していたらしい。
卒業式で告白されたこと皆無な凛が、裏庭の隅で「納得いきませんわ」と沈んでいるが、そちらは慰め役の沙耶に任せきりである。悠里も傍にいるので、きっとすぐに元気を取り戻すだろう。怒りの可能性も多分にあるが。
一方でうりうりと陽向をからかっているのは朱華だ。穂月はにこにこしながら2人のやり取りを見ていた。興味なさそうにぐでっとする希を背中に感じながら。
「私たちに教えたらからかわれるっていう気になる男の子は誰かな? 誰なのかな?」
「だああ、うぜえ! 言わねえって言ってんだろ!」
いつになく執拗にまとわりつく朱華を振り解きながら、陽向は逃げるように裏庭に背を向ける。
そんな彼女を追いかけ、中庭で穂月はおめでとうの言葉と一緒にずっと持っていた花束を手渡した。
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